ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO9001:2000の実施
−米国の規格使用者の体験に関する調査−

 [概要和訳]
Implementing ISO 9001:2000
- US survey of user experiences
<ISO Management Systems; Nov-Dec.,2002>
55-02-01
<http://standardsgroup.asq.org/news/psi/IMS06-2002E-Implementing_ISO_9001-BD.pdf>
<調査方法>
◆ 調査はTC176米国国内対策委員会により昨年発足の「製品支援活動(Product Support initiative)」が実施。
◆ 227の組織からの回答。これは先の調査(2000年4月 Quality Progressに報告)より44組織多い。この内の17%は94年版の経験がない組織だった。
◆ 結果の解析は、独立品質コンサルタント S. Liebesman氏

<差異分析(gap analysis)>
◆ 差異分析は、適合化の4段階で実施できる。
1.初期差異分析
2.内部監査
3.予備審査
4.認証審査

◆ 各段階で適合を図るのに差異の大きかった項目を13項目から選んでもらった結果が表1。顧客満足データ/評価が認証審査を除くどの段階の差異分析でも1位だった。
適用除外、文書化、記録管理、顧客満足データ/評価、プロセスの効果的管理、継続的改善プロセス、
測定可能な品質目標    品質方針と整合した品質目標、データの収集と分析、力量、
 トップマネジメントのコミットメントと責任、アウトソウスしたプロセスの運営管理、 その他重要項目
差異の大きかった項目 初期差異分析
での差異
内部監査と
予備審査
での差異
適合化のため
最も多くの是正
を行った項目
認証審査
での不適合
顧客満足のデータと評価 56 % (1) 39 % (1) 36 % (1) 7 % (5,6)
文書化 47 % (2) 34 % (2) 29 % (3) 23 % (1)
継続的改善プロセス 43 % (3) 28 % (3) 30 % (2) 9 % (4)
データの収集と分析 32 % (4) 22 % (5) 22 % (5) 6 % (7,8)
測定可能な品質目標 31 % (5) 25 % (4) 19 % (7) 10 % (2,3)
トップマネジメントのコミットメントと責任 28 % (6) 20 % (6,7) 21 % (6) 10 % (2,3)
力量 22 % (8) 13 % (8,9) 11 % (9) 4 % (9)
記録の管理 24 % (7) 20 % (6,7) 17 % (8) 6 % (7,8)
プロセスの効果的な管理 21 % (9) 13 % (8,9) 23 % (4) 7 % (5,6)
(註釈1) 数字%は、回答した組織の割合
(註釈2)
(括弧)の数字は、順位 
<差異を埋めるのが困難な要求事項>
◆ ISO9001:2000の51の条項で、プロセスの開発、文書化、実施の観点で最も難しかった条項を挙げてもらった結果を、表2にまとめた。
◆ 最も難しかった条項は。8.2.1 顧客満足
◆ 文書化(4.2)は、4.2.1, 4.2.2, 4.2.3 共に 難しかった条項には入っていない。
◆ 継続的改善(8.5.1)は、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する「改善ループ」をつくることを必要としている。文書化することは5番目に難しかったとされるが、適合化を図ること及び実施は「困難」に挙げられていない。
8.5.1項では明確に記されていないが、8.5.1項はトップマネジメントの責任である。
◆ 力量は差異分析で6〜8位だったが、6.2.2項は難しかった条項の2位である。とられた処置の有効性を評価しなければならないという要求事項が主な問題だったと考えられる。

最も困難だった条項:
回答組織の割合%
(順位)
対応する
差異の大きかった項目
8.2.1 顧客満足          30 % (1); 21 % (1); 25 % (1) 顧客満足のデータと評価
6.2.2 力量、認識及び教育・訓練  24 % (2); 15 % (4); 21 % (2) 力量
8.4  データ分析         20 % (3)17 % (2); 18 % (3,4) データの収集と分析
8.5.3  予防処置         17 % (5); 16 % (3); 18 % (3,4) 継続的改善プロセス
5.4.1 品質目標          13 % ;      6 % ;    15 % (5) 測定可能な品質目標
8.5.1 継続的改善        11 % ;     12 % (5);  9 % 継続的改善プロセス
7.3.1 設計・開発の計画  18 % (4)11 % ;    14 % その他
 (註釈) 数字%、(順位) とも、左から、適合プロセスの開発が困難、文書化が困難、実施が困難
<システムの構築>
★ 差異分析
◆ 差異分析と差異を埋める作業が、どのようなマネジメントシステムを構築するにも重要な第一歩である。

◆ この差異分析をどのように実施したかについては次の通り。
  @ 組織が自身で差異分析を実施した             ー 68 %
  A コンサルタントが差異分析を実施した         ー 23 %
  B 審査登録機関による予備審査を差異分析とした ー 27 %
  C その他の方法で差異分析を実施               ー 13 %
★ 予想外の利益、達成できなかった利益 ★
◆ 差異分析の結果を埋める作業を通じて、各組織は次のような予想外の利益を得たと回答している。
  @ 1/3の組織は、規格の要求事項にはない品質マネジメントシステムの改善を果たした。
  A 1/4の組織は、規格が推奨するプロセスアプローチの考え方でいくつかのプロセスをなくしたか、結合した。
◆ 一方、2000年版で期待した利益である、文書の削減については、あまり達成できなかったと回答している。
  @ 文書量を削減できた  ー 22 %
  A ほぼ同じ文書量      ー 44 %
  B 文書量が増えた      ー 34 %
★ 構築に際して利用した手段 ★
◆ 81% の組織が、ISO/TC176による4指針文書を活用しなかった。
◆ 組織が利用した他の手段
  @ 品質マニュアルや文書の見本        ー 58 %
  A 解説書(Handbooks)                 ー 55 % 
  B 雑誌記事、書籍(Books)、研修講座、講演会  ー 24 %
  C コンピューターソフト              ー 18 %
★ 教育訓練 ★
◆ 組織は、2000年版の実施のために重要な次の点に関して従業員を教育した。
  @ 2000年版変更点     ー 76 %
  A 品質マネジメントの原則   ー 52 %
  B 顧客満足           ー 41 %
 C データ収集と分析   ー 33 %
  D 顧客との接触       ー 16 %
◆ これから、次の2点が注目される。
 @ 差異分析の結果で差異の大きかった点、つまり、顧客満足とデータ収集、分析について教育が行われている。
  A 多くの組織が品質マネジメントの原則について教育を実施した。 
<システムのコストと利益>
◆ 組織は94年版から2000年版への移行の利益を、金銭上の利益や投資回収、改善を基礎にして判断することが必要である。
★ 費用 ★
◆ 73% の組織は、94年版から2000年版に際して、余分な審査登録費用はかからなかったと答えた。
◆ 移行と通常の更新に際して必要となるコスト(教育費用を除く、適合を図るため、ま
たは、維持するために必要な関係者の労働負荷)は、次の通りで、更新コストの方が一般に移行コストより少ない。
スタッフの負荷 移行の場合 通常の更新の場合
  1  人・月 以下    7 %   14 %
  1〜6  人・月  32 % 49 %
6〜12 人・月 32 % 25 %
12〜24 人・月 19 %  6 %
24〜48 人・月  7 %  6 %
 48 人・月 以上  4 %  1 %
(註釈)数字 % は、回答した組織の割合 
★ 利益 ★
◆ 金銭上の利益を議論するのは少し早いかもしれないが、21% の組織は利益があったと報告しており、この内 82% は少なくとも移行とシステム構築の費用は金銭的利益で回収したと答えた。
◆ 本調査は統計的推計が成り立つほどの規模ではないが、回答のあった次のような利益は、調査を実施した製品支援活動(PSI)チームを喜ばせた。
  @ 事業運営管理活動にデータが使用されるようになった  ー 56 %
  A マネジメントへのコミットメントが強固になった  ー 56 %
  B 顧客満足が向上した   ー 54 %
  C マネジメントレビューが効果的になった   ー 51 %
  D 顧客とのコミュニケーションが強化された  ー 41 %
◆ 調査では、94年版から2000年版への移行、ないし、新たに規格を適用し認証登録を得たことで、規格の意図する6つの本質的改善(bottom line improvement)を達成したかどうかについて質問した。  次表は、これら各改善に関して「はい」と答えた組織の割合を表している。「わからない」との回答は、合計に含めていない。

改 善  回答数 「はい」
と答えた組織
の割合
はい いいえ わからない
顧客満足 64 32 73 67 %
製品/サービスの品質 55 42 68 57 %
生産性 52 34 79 60 %
顧客の維持(売上げ確保) 38 37 89 51 %
会計上の利益 35 38 91 48 %
市場占有率 26 45 92 37 %
H15.4.27 

ASQ(米国品質学会)ホームページに公開された報告書から、読者の便宜のために、編集者の判断(実務の視点)で興味ある箇所を抜き出し、原文に沿って意訳しました。読者の本ページ使用の結果に関して編集者は如何なる責任も負いません。

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