ISO9001/14001 コンサルティング・研修 <
[全文和訳]  環境マネジメントシステム  − 事業上の価値を提供しているか? 55-04-05
Environmental Management Systems
Do they provide real business value ?
Richard MacLean:  Management Notebook,February 2004,p.12-14,
<http://www.environmental-center.com/articles/article1418/article1418.htm>
   "監査円卓会議"の冬期会合は環境監査員に対する目ざまし電話のようであった。 基調講演者は単刀直入にも「ISO14001のような適合性認定ベースの環境マネジメントシステムは本質的に欠陥がある」と語った。 価値をもたらさない監査システムのポイントは何なのか? もし認証取得が経営者の市場参入のためのチェックリストに存在しないなら、なぜこれらのシステムは必要なのか? そして、誰がこのような監査員を必要とするのだろうか?
   
   筆者は、環境専門家達が持続性ある成長に向かって物事がかつてない速度で良くなり拡がっていると息を切らして報告するのを聞き飽きていた。 だから、この会合で環境監査員が自分自身について公正な監査を行なうのを聞いて、生き返った気分になった。 監査円卓会議会長 Karen Coyne氏はその講演で、環境マネジメントシステムとパフォーマンスとの間にはほとんど相関関係がみられないと報告した。 彼女はこの結論を最近の6つの研究結果によって裏付けた。
   
   多くの参加者にとってこれは衝撃であったが、他の人々にとっては"部屋の中の巨象[明確な存在だが触れたくないやっかいものの意(訳者註釈]"(何人かの参加者がこう呼んだ)を公に議論する良い機会であった。 意味するところは監査員達には明確である。 この10年ほど大半の経験ある監査員、特に本社の上級監査員は次第に遵法性監査からマネジメントシステム監査の分野に重心を移してきた。遵法性監査のためのハードウェア、ソフトウェアが改善されたため、定常的監査はより技量の落ちる事業所の監査員に移管できるようになってきたからである。 加えて、コンサルタント達がこれら環境マネジメントシステム(EMS)の構築と認証にその収入源を求めて一斉に参入してきた。
   
   もし経営者達がそのEMSから大した利益還元がないことに気づいたとしたらどうなるであろうか? この懸念にはもちろんもっと広い意味がある。 それはすべての環境専門家に影響を及ぼすからである。 今何が起きているのだろうか?
   
   
適合性評価システムの出現
   1990年代半ばから、ISO14001及びEMAS(欧州連合エコマネジメントと監査制度)が国際市場で企業の環境責任を主張する道具として流行している。 もはや法規制強化に期待できない成熟市場における次の事業機会として、多くのコンサルタント達がISOとEMASの分野に飛びついた。 この結果、EMSはISO14001及びEMASのような適合性評価ベースのマネジメントシステムと同義語となった。
   
   実際の業務においては、ISO14001及びEMASの実行チームは書類作成作業に始まり、しばしばそれに埋没してしまっている。 "プロセス主義(to go through process)"の規格要求事項は、プロセスの詳細にこだわらずに、明確な環境戦略をもったEMSを構築することを難しくしがちである。 規格は企業に環境パフォーマンスの改善目標を確立することを求めておらず、改善を促進するプロセスを創造することしか求めていない。 EMSは手順の規格であって、目標達成の規格ではない。
   
   もし企業の第一目標が認証取得であるならば、ISO14001及びEMASは必要かもしれない。疑問はこれらEMSが基本的な遵法性(適合性)をさえ、強いるのかどうかである。 必ずしもそうではないのである。 これは世界の新聞の見出しとなった適合性違反問題(2)から明らかである。
   どのような事業活動の手順化も戦略的思考を希薄にする傾向がある。ISO14001及びEMASは、いろんな点で環境マネジメントの最悪の例証である。 それらは、経営者達にプロセスが確立しているのですべて良しという錯覚を与える。 そして経営者の関心は、パフォーマンスの改善ではなく、手順通りに業務が行なわれ、確認欄にチェックがあることに向けられる。 環境問題への関心は「我々は認証登録を取得しているのか、取得していなのか」の二者択一的な質問に矮小化される。
   
   この偏狭な問題取り組みは "システムゲーム" を招いてしまった。 企業によっては、最も安価に確認欄を満たすことを考え、合格の確実性を基準に外部監査の監査員を選ぶ。 このような問題は"監査円卓会議"でも話題になっていたが、何年もかけて先の会合でやっと真剣に採り上げられることとなった(システムゲームもまた"部屋の中の巨象"である)。 例えば米国環境庁はISO14001の第三者監査に関して懸念を抱き、これが連邦行政学会による「登録制度に関する2001年報告書」(3)となった。(関連情報)
   
   2頭の巨象は会合で討議されたが、これらの問題がお腹にいて生まれるまでには永い時間を要した(自然界で最も永い象の妊娠期間の22ケ月以上も必要だった)。 昔は今日のような広範囲な人々の認識にならなかった。 企業やコンサルティング会社はこれら適合性認定システムに巨額の投資をしてきたので、当時この問題を採り上げることは多くの人々の激怒を招きかねなかった。 1997年発行の「失われた持続性のある産業発展の機会(4)」の共著者である Riva Krut氏は「ISOをけなしたと徹底的に非難にされた」と筆者に話したことがある。
   
   Rice大学のMarc Epstein教授もまた、1997年の時点で状況を、「役に立ち、価値ある環境マネジメントシステムは有益ではあるが、ISO14001の適用だけでは企業に最大の利益をもたらすということにはならない(5)」とまとめている。 この他にも随分以前から"監査円卓会議"で赤旗を掲げていた人々がいる。 筆者も4年前からこの問題を書き、話し、メディアのインタビューを受けてきた(6)。
 
 
救援に現れたコンサルタント
    この "基本的に欠陥のあるマネジメントシステム"(これは発表者が使った言葉であって筆者のものではない)を5年間にわたり認証審査しているある会社のCEOが立ち上がって、この欠陥をどのように直すことができるかを明らかにした時が、この会合でもっともおもしろい場面であった。 何とも皮肉なことには、コンサルティング会社であるその会社 −実際はその親会社であると推測されるが− は、この問題をうまく解決して、新しいコンサルティング商品として販売しているとのことであった。 よろしい。 それなら、今日のように環境、安全衛生専門家達が赤面する事態に発展するより何年も前に、潜在する問題点を他の人々が詳しく描いて見せていた時、あなたはどうしていたというのかを問いたい。
   
   彼の名誉のために付け加えるなら、彼は主要な問題点の幾つかを正しく指摘した。 ISO14001及びEMASのアプローチは経営者がパフォーマンスを向上させる方法と合致していない。 優れたマネジメントシステムというのは監査用の書類作成作業ではなく、人々の業務姿勢の変更を促すものである。 ISO14001及びEMASは、確認のレ点の他はほとんどパフォーマンスの向上をもたらさない資源消費型活動に堕し得る。 ある専門家の推測によると、この文書ベースの努力で何らかの事業価値を生んでいるのは最大でも10%に過ぎない。
   
   これに続く講演者であるBill Blackburn氏は、筆者の同僚であり、その名誉のために言うがシステムの話になると積年の現実主義者であるが、監査の次6つの重要問題(7)で本質に切り込んだ。
   
◆ EMS認証取得の目的の誤り
◆ 文書に重点を置き過ぎ、現場インタビューを軽視すること
◆ システムの過去の成果を厳格に評価しないで、システムがもたらしそうなものを推測すること
◆ パフォーマンスの絶対レベル対到達目標という訳ではない継続的改善に焦点をあてること
◆ 監査員のシステムのパフォーマンスを判断するための技量と知識の不足
◆ 不明瞭なパフォーマンスの包括的な根本原因を突き止め、指摘することに失敗していること
 
   これらのポイントは高収益な事業を運営するための戦略と直接重なる。 例えば、会社がパフォーマンスを継続的に改善したために、同一事業分野の他のすべての会社が劇的な業績改善をすれば、その会社は重大なトラブル(例えば、金融或いは株主価値の向上において)に陥ることともなる。 継続的改善は、ISO14001及びEMASのようなシステムの構成要素ではあるが、現実の事業ではあり得ない概念である。
 
   筆者は、ISO14001を認証取得したが、痛ましいまでに非効率で、機能障害的行動の多い、また、リーダーシップがなく、どうやって付加価値をつけることができるかの考えもない、幾つかの会社に所属していた。 それは書類があるかないかの問題ではなく、優れたマネジメントかどうかの問題である。 書類の監査も重要であるが、監査の真の価値は行動を変革し、パフォーマンスを改善する戦略を提供することで生まれる。 これは、監査とコンサルティングの混同の危険という監査員にとって興味深いジレンマである。
   
   公正な監査対解決策の提案という問題は、会計監査の分野で大問題となった。 そして陪審員は2つの機能は分離すべきとの評決を下した。 環境監査の専門家の間ではなお議論は続くだろう。 "監査円卓会議"の会合のような諸会合が議論の場を提供する重要な役割を果たすことになる。
 
   
結  論
   システムのみでは成功はもたらされない。Enron社はシステム過多症で、Andersen コンサルタント事務所は問題を隠す方法として会計システムの抜け穴を探す専門家となった。 会計処理という職業は民間標準(一般に受け入れられている原則またはGAAP)を基礎としている。 そして、環境規格に比べるとはるかに成文化され成熟している。 適合性ベースのシステムは開始点であって、終着点でもなく、戦略的環境思考や厳格な管理を代替するものではない。
   
   この論文の副題の疑問に応えるなら、イエスであり、EMSは大きな現実的な事業上の価値を提供することができる。 しかしそのためには、EMSは事業活動の重要部分に焦点をあてることが必要である。 来月号の本誌"Managers' Notebook"では、既存のシステムが価値を生んでいるかどうかを評価する方法、また、そうでなければその根本原因を決定する方法について検討する。
 
引用文献は省略
H16.3.31 
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