ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
簡易版EMSは中小企業のために必要か、そして、利益になるか  <62-01-01>
    最近、いわゆる簡易版EMSが話題となっており、ISO14001の普及への懸念材料と見做す考えも出ている。 これら簡易版EMSの主張はいずれも、ISO14001の審査登録が費用、人的資源の面で、また、内容が高度なために中小企業には困難であるので、より容易に取り組めるシステムを提供するということになっている。
   
   簡易版EMSには、特定の環境影響の改善に取り組む活動という実質的に マネジメントシステム ではないものもあるが、多くは、ISO14001の要求事項の適用を緩和することを「簡易」の意味とし、取組みの容易さとしている。これらは要求事項の適用や解釈を当初は緩和して、段階的にISO14001並みのマネジメントシステムに到達する仕組みであり、中には、更にISO14001以上のシステムにまで進歩させる数段階を設けている。そしてそれぞれの段階で認証登録をする仕組みをとっている。
   
   ISO14001の要求事項は、組織が環境改善の実績を効果的、効率的に挙げるために必要な体系的な業務取組みの方法を示している。要求事項は全体として意味があるのであって、どれかを適用をしなければシステム全体が機能不全となる。この故に、認証審査はすべての要求事項への適合を合格の条件とするのである。要求事項の適用を緩和した簡易ISO14001システムは基本的に、目的達成能力がないという点でその意義に疑義を生じる。また、一挙にISO14001要求事項を満たす作業に比較して、段階的な作業の方がその手間や費用、そして段階的審査の費用という点で組織が不利益を蒙ることにならないのかという疑問が生ずる。


  さらに、組織が認証審査を受けるのは、組織が継続的改善の果実が得られるような業務取組みをしていることを確認することである。そのような状況にあるから登録証を得たのであり、定期審査、更新審査によって引き続きそのような業務取組みを行なっていることの保証を得ている。システム運用の期間が長くなっても改善の実績が目に見えるようになって来ない場合には審査には合格しないはずである。 それに、改善の実績は他ならぬ組織自体が最もよく把握できる訳であるから、改善実績の程度を"システムの成熟度"とするならば、それを第三者に評価してもらう必要は乏しい。成熟度の審査という概念は組織に利益をもたらすものであろうか。
   
   ISO14001は、中小企業及び開発途上国が採用できるという観点で検討され、必要な要件が採り入れられたということはよく知られた事実である。規格は序文で「この規格は、あらゆる種類・規模の組織に適用でき、しかも様々な地理的、文化的及び社会的条件に適応するように作成した」と明記している。同付属書でも「システムの詳細さと複雑さの水準、文書化の範囲、(中略)資源は、組織の規模と活動の性質に依存する。これは特に中小企業についていえる」(A.1)と明確に説明されている。簡易版EMSの拠り所となる主張は、ISO14001の本質に照らして正しくない。
 
   しかしながら、規模の大小にかかわらず日本の多くの組織でISO14001への適合化の難しさを嘆く声のあるのも事実である。この大きな理由に、筆者が"審査の視点"と見做す日本独特の要求事項解釈の問題がある。例えば、ほとんどの解説書は、「環境側面は漏れなく抽出しなければならない」とし、計算式を用いた厳格な環境影響評価を求めている。しかし規格は、初期環境影響評価の詳しさについては「かかる費用、時間を考慮して」「製品別に評価しなくてよい」(A.3.1)などと説明しており、決して一律の詳細な調査をしなければならないとは言っていないのである。また、ある簡易版EMSは「初期段階では目的・目標の設定は"各階層"でなくともよい」と要求事項を緩和したことを特徴としている。しかし、"すべての階層"は元々ISO14001の要求事項ではない。これらは、規格の狙いと論理に基づかない、条文の文言を重視した要求事項解釈が、要求事項への適合の条件を規格の意図しない高度な内容としてしまっている例である。
   
  本来中小企業も導入できるように作成されたISO14001にもかかわらず、日本で中小企業の取組みを困難にしているとすれば、上の例のように規格の理解と要求事項の解釈における審査合格優先の風潮とそれに基づくシステム構築における形式重視、つまり、"審査の視点"に目が向けられるべきであろう。
 
H15.7.31(改H15.12.14, H16.1.20) 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所