ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  ISOは役に立っているか?  − 混迷の実態  <62-01-02>
 
   昨年末に日本のISOの元締め、日本工業標準調査会がISO導入の1000社に対するアンケート調査結果(1)を発表した。ヤフーの掲示板(2)では7/26以来「ISO9001は本当に役に立つのか?」の議論が活発に行なわれている。前者は経営者、管理者層、後者は実務層のISOへの見方を反映したものと思われるが、取引条件に登録取得が課される傾向の拡大や登録取得件数の伸びが脚光を浴びるISOの表面的隆盛と裏腹の歪んだ現実を浮かび上がらせている。


   即ち、アンケート調査では「ISO導入の目的が達成されたかどうか」に対する肯定意見はISO9001で55%、14001で58%であり(図2)、ISO9001の2000年版登録取得の便益とコストの関係でも肯定意見は59%に過ぎない。掲示板では本論の「役に立つのか」に対しては、70%が否定的な見解を寄せ、肯定意見は「使い方次第で役立つ」との条件付を含めても30%とわずかである(図1)。 アンケート調査は公式のもので回答は経営者、管理責任者の意向を反映したものであるから、どちらかというと肯定的意見の方に偏っていると推察される。一方。掲示板は 8/21までに328件の投稿があり、この内、設問(No.1)に対する直接の回答 78件を取り上げたが、日頃から問題意識をもった実務層が参加者の中心と思われ、どちらかというと否定的意見に偏ると推察できる。しかし、これらの事情を割り引いて考えるても、ISO導入組織の半数までもの経営者が登録取得の目的を達成できず、コストに見合う便益を得ていないと認め、システム運用を支える人々の過半数がISOの効用を否定しているというのが、日本のISOの現状ということである。
   
図1. ISO9001は役に立つのか
(掲示板)
図2.  登録取得の目的の達成度(アンケート調査)


   掲示板の意見は更に辛辣で深刻である。第一に、否定的意見を表明した人の1/3は、二重帳簿となったり、審査前に書類を整えるといったシステム運用の形骸化した実態を指摘している(図3)。肯定意見も半数は「システムの内容または使い方次第では役立つ」であるから(図4)、これらの人々も形骸化したISO取組みが拡がっている事実を認めているとも受けとれる。次に、否定的意見の15%が、審査員の言動を含む審査に対する問題意識に基づいている(図3)。 そして、ISOに係わる何らかの懸念、不満、問題点を挙げた41件についてみると、その46%が審査、審査員及び認証制度に対する不満、不信である(図5)。これらには風評や誤解が影響している感もあるが、自身が形骸化していると認めるシステムでありながらも認証登録されている事実からくる実務担当者の率直な疑問に根ざすとも考えることができる。更にこのような実態にもかかわらずISOを維持する経営者、管理者に不信を綴る人も少なくない(図5)。 掲示板によると、ISOの実務が形骸化し、審査や認証制度も機能せず、職場に混乱さえ引起こしていることになる。


図3. 役立たないと思う理由 図4. 役立つと思う理由 図5.ISOに係わる懸念、不満、問題点
   目的達成度が 55ないし58%に留まる事実についてアンケート報告書の記述は「・・である」と危機感がなく、掲示板の否定的意見の約1/2は「不要」「元々役に立たない」と冷めている。ISOの提供側も導入側もISOは本来このようなものだと見做しているかの如くである。しかし、果たしてこれがISOの本質なのだろうか。組織は、大金を投じながら効用がないシステムを今後も維持し続けられるのだろうか。ISO導入は顧客や社会の組織への期待に応えるのが動機であったはずなのに、意味のないシステム運用を放置して顧客や社会を裏切ることにならないのだろうか。

   日本では筆者が"審査の視点"と名付けた、審査合格優先の、形を重視する規格解釈、システム構築が主流である。経営目的達成の処方を説く規格の論理を顧慮せず組立てたシステムが、目的達成に非力であり、目的達成に与からない業務を含むことになるのは当然の成り行きであり、システムの運用は目的追求ではなく定期審査への合格が狙いとなる。この状況が正に日本で生じているのであるから、責めを負うべきはISO規格ではなく"審査の視点"のISO取組みである。規格の意図する「体系的で透明性のある」業務取組みは基本的に目に見える業務量を増やすのであるが、そのような仕事の仕方を通じて経営者は目的の達成を図ることができる。ISOは経営の道具であるからその効用は実務者には認識し難く、経営者が経営目的達成に「役立てる」ものなのである。現状は改善できる性格のものであり、改めるべきはISOへの取組みの考えと方法であると考える。


(1) 日本工業標準調査会:JISC第3回管理システム規格適合性評価専門委員会,資料No2.2.2改,H14.12.11
(2) Yahoo! Japan 掲示板:ISO9001は本当に役に立つのか?,2003/7/26/6:37〜(8.21までの意見を参照)。
H15.8.31 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所