ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  ISO14001導入は中小企業には重荷か  <62-01-04>
    ISO14001の認証取得が中小規模事業者には経済的・人的負担が過大であることを理由とする新たな環境保護認証制度がまたひとつ発足した。トラック輸送事業者に対する、経産省主導の「グリーン経営」制度である。そもそも、ISO14001の導入は中小企業にとってそれほどに重荷なのであろうか。 答えは実は明白であり、否である。  なぜならISO14001は資源の乏しい中小企業や発展途上国でも適用できることを意図して作成されているからである。例えば規格は序文(0.2)で、「この規格は、あらゆる種類・規模の組織に適用でき(中略)るように作成した」と宣言している。
   
  中小企業への適用を意図した規格作成の経緯は、TC207が発表した文書<1>に詳しく述べられている。 これによると、幾多の議論の後、「小企業によいものは大企業にもよいはず」という考えで、「TC207は中小企業と途上国に特有の必要事項をEMSの中核文書の中に織り込んだ」とされている。 そして、それら必要事項とは、「明確さ、適用性、実用性」であった。 ここに、「明確さ」はすべての規格使用者に理解されるということであり、「実用性」とは環境改善がそのための努力と投入資源に見合う事業業績をもたらし得るということである。 そして、「適用性」は規格が資源に乏しい組織にも適用できるということであり、そのために規格の枠組みを各組織が「そのEMSを組織に特有の資源と必要性に合わせることを許容」する「柔軟な」ものとしたと説明されている。
   
   この規格の枠組みの柔軟性の最も基本的な点が、「環境マネジメントシステムは、継続的改善を達成するための体系化されたプロセスを提供」するものであるが、「その継続的改善の度合いと範囲は、経済的及びその他の状況に照らして、組織によって決められる」(付属書A.1項(一般要求事項))ということである。組織の決定は、b)継続的改善及び汚染の予防と c)環境法規制の遵守に関する経営公約(コミットメント)として環境方針に明確にすることが必要である(4.2項)が、 規格はこの公約が「組織の活動、製品又はサービスの性質、規模、環境影響に適切」(4.2 a)項)であることしか求めていない。 そして、適切かどうかは、「費用効果に充分の配慮」をして「経済的に実行可能なところで最良利用可能技術を適用」(0.2項)をしているかどうかも考慮してよい。
   
    しかもこの「公約」の意味については、別のTC207文書<2>には、EUの製造業への法規制であるEMASとISO14001の違いのひとつとして、EMASでは関連法規制への適合に必要な手段をとることが必要であるが、ISO14001では「関連法規制への適合に対するコミットメントを環境方針に含む」ことで登録証を受けることができると説明している。  ISO14001では法規制違反自体も不適合ではなく、違反状態が出現した場合に速やかに是正するなど公約実現に向けての努力が必要なだけなのである。
   
    中小企業や途上国への規格の適用を可能とするため、この他にも規格は システムの構築、運用に次のような柔軟性を許容している。
◆ 環境マネジメントシステムの詳細さと複雑さの水準、文書化の範囲、及びそれに向けられる資源は、組織の規模と活動の性質に依存する。これは特に中小企業にあてはまる。(A.1項)
◆ 要求事項の多くは同時に着手されてもよいし、いつ再検討されてもよいことに留意するとよい。(0.2項)
◆ 組織は、環境目的を設定する際に、(抽出した)これら著しい環境に関連する側面を確実に配慮しなければならない(筆者註:著しい環境側面のすべてを目的、目標に取上げる必要はない)。(4.3.1項)
   
    ISO14001はすべての組織に一律の環境改善努力を求めているのではなく、組織はマネジメント戦略として必要で重要な環境影響の低減のためそれぞれに持てる力で可能な努力をすればよいのである。 然るに日本ではほとんどの解説書が著しい環境側面とは関係ない部門も含めた全員参加の改善運動や、それが完了すればシステム構築の山場を越したと見做すほどの詳細な初期環境影響評価を必要としており、法規制の存在する環境影響はすべてを"著しい"に分類し、すべての著しい環境影響の改善を品質方針に掲げることを推奨している。 また、ISO9001と同様に審査合格を意識した多くの実務的でない業務の実行と文書や記録の作成が行なわれている。 一方で、継続的改善の対象はシステムであって環境パフォーマンスではないとの要求事項解釈が優先されて、「この規格の全体的な目的は(中略)環境保全及び汚染の予防を支えることである」(0.2項)が忘れられている。 環境パフォーマンスを改善しない環境マネジメントシステムは組織はもとより、一体だれに利益をもたらすというのであろうか。
   
   中小企業でも適用できるように、また、環境投資が事業上の利益となって返ってくるように作成されたISO14001が、日本では負担できないほどの重荷になっているとすれば、それは、規格が意識して織込んだシステムの柔軟性をよそに、審査合格を優先する取組み(筆者が呼ぶ"審査の視点")がすべての組織に詳細な一律の形式を持ち込んだ結果であると考えられる。
   
   
<1> 「環境ー特別な配慮がISO14000シリーズの適用を拡げ強化する」(1995.11)
<2> 「 ISO14001とEMASとの橋渡し」(1996.10)
H15.11.30 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所