ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
  役に立たない ISOマネジメントシステム の行く末  <62-01-06>
    日本ではISO9001、ISO14001のいずれのマネジメントシステムも登録証を得たものの、システムが機能していると実感している組織は少ない。どのアンケート調査でも、要する費用や手間に比較して、顧客や地域社会からのクレームが減ったというような実益には乏しいという回答が主体である。しかし、当の組織も審査登録に係わる関係者も解説書も、この状況についての問題意識は希薄である。「登録証を取得して取引機会を維持或いは獲得出来たからシステム構築の利益があった」というのが言い分である。また、大多数の組織が親会社や顧客組織からの要求で認証取得をしたことがこの結果を生んでいるという指摘が多い。しかし、 組織が顧客の要求によってISOマネジメントシステムを構築すること自体には何ら問題ない。両規格とも第三者認証登録制度と合わせて、顧客が供給者を管理するための道具として制定された面が強いからである。
   
   仕様が国際的に統一され海外の製品が使用できることはわかっても、品質に関する不安が見知らぬ企業との取引に二の足を踏ませるのは普通である。ISO9001への適合性を示す登録証は、このような顧客に購入しようとする製品の品質への信頼感をもたらす。また例えば、外注加工や部品購入が自己の製品製造の一部となっている組織は、それら購買品の不良或いはそれらを原因とする顧客での不良の発生の防止に、種々の管理の施策を講じている。管理を厳しくすれば組織にとっての負担が重くなり、しかもどこまでやっても目は行き届かない。ISO9001の登録証を有する供給者の製品には、組織の製品に品質不良を引き起こさないという信頼感をもつことが出来、組織の管理の負担も軽減する。
   
   一方ISO14001は、産業活動がもたらす環境汚染が地域的公害から地球規模の環境破壊に拡大し、法規制の強化、社会や消費者の環境意識の高まりなど、環境への対応が組織の存続を支配する状況下で発意され制定された。ISO14001の登録証は、組織が社会や顧客など利害関係者のニーズと期待に沿った環境保全努力を精一杯実行している証である。組織を受入れ、製品を購買し、取引機会を提供し、投資の対象を選択する際、当事者は登録証の有無を判断の基準とすることによって結果的に、組織の環境保全努力を管理することができる。今日、一般消費者に製品、サービスを提供する組織には、製品や事業活動の環境影響を減少させることが販売の必須条件となっているが、これを捉えて環境保全型製品を事業発展の戦略とする組織が増えている。このような組織は製品の環境負荷の管理のために、その外注製品や購入部品の持つ環境影響を低減することが必要であり、供給者がそのような管理を自主的に行なうことをISO14001の登録証に期待する。
   
   ISO9001、ISO14001共に、顧客組織が登録証の取得を供給者に要求するのは、供給者の製品の品質或いは環境負荷に関するニーズと期待があるからである。顧客組織からの登録取得の要求は、供給者が規格の要求事項を満たすマネジメントシステムを構築し運用し、その狙いの品質、環境上の改善を図ることを要求していることに他ならない。登録証は、組織がそのように業務を行なっていることを公正な第三者が保証するものである。顧客組織の本当の要求は自己の利益に資する供給者製品の品質或いは環境上の改善であるから、登録証を取得しても、顧客組織の必要とする製品、サービスの改善が実現しないなら、やがてその供給者を見放すことになる。「登録取得で取引機会を維持或いは獲得した」という利益は泡沫の如くはかない。
   
   これは、形だけのシステムが事業機会の喪失を招いたということであるが、規格の意図からすると、規格の狙いの実現を競争力の強化に繋げるという千載一遇の機会を逸したということである。 そして、問題は一組織の凋落に留まらずもっと深刻である。実際にニーズや期待に応えていないと顧客など利害関係者が判断するに至ったシステムにも登録証が発行されていたとすれば、登録証への信頼の低下は避けられないからである。そしてこのような例が、今日の時点でシステムの実益を実感できていない登録取得組織の割合で生じるようになったとすれば、登録証への信頼低下は雪崩をうつ如く、第三者審査制度やそれに裏打ちされるISO9001、ISO14001規格の信頼性も崩壊に向かう危険があり得る。消費者、顧客組織、地域社会、投資家など組織を巡る利害関係者は、自己の利益の実現のために法規制、要求仕様、監視、立入検査、監査、指導などの強化で自ら管理の行動を再開することになるかもしれない。これに対応する組織や社会的費用は産業の国際競争力を弱める。これは最悪の筋書きだが、現状が孕む危険でもある。
H15.12.31 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所