ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
10 製品の改善、環境パフォーマンスの改善 は不必要か ?  <62-01-10>
    ISO9001もISO14001も マネジメントシステム の規格である。 両規格とも マネジメントシステム の改善が要求事項であって、製品の改善や環境パフォーマンスの改善は要求事項ではないというのが、一般の規格解釈である。 例えばにISO9001について JISQ9000巻末の解説(4.3 g))にはわざわざ「JISQ9001で要求する改善とはシステムの有効性の改善であり、しかも、製品の改善は含まれていない」と記されている。 しかし、製品や環境負荷の改善は本当に必要でないのだろうか。それならシステムの改善とは何なのか、何のために必要なのであろうか。
   
   ISO9001の目的は言うまでもなく顧客満足の向上であり、それは組織が顧客のニーズと期待を満たす製品を供給することで達成することができる。 品質保証が目的だった94年版の要求事項(4.2.1項)に「製品の規定要求事項への適合の確実化の手段として品質システムを確立、維持すること」とあったように、2000年版の品質マネジメントシステム は「顧客のニーズと期待を満たす製品を一貫して供給する」ための手段である。 マネジメントシステム の実体は マネジメント活動に必要な、責任と権限、手順、技能、要員、設備、文書初めとする諸活動、諸資源であり、2000年版では諸業務の有機的集合体と認識されており、マネジメントの業務体系のことと理解できる。 組織は、規格に沿って確立した マネジメントの一連の業務を体系的に実行することによって顧客に受け入れられる製品を供給することができる。 ISO9000はその「品質マネジメントシステム の論理的根拠」(2.1項)において、「顧客はそのニーズと期待を満たす特性をもつ製品を求めている。(中略) 顧客のニーズと期待は変化し、市場競争や技術進歩があるので、組織にはその製品とプロセスを継続して改善することが求められる。」と記している。 すなわち、継続的改善の意義は、時代の変化に対応して製品とそれを生み出すプロセスを改善し続けることにある。
   
   有効性とは目的達成能力のことであるから、 顧客満足の製品を一貫して提供するための業務体系である品質マネジメントシステム の有効性とは、変化する時代に対応して製品を変化させることができるかどうかである。 ニーズと期待の変化とは例えば、欠陥の程度や品質トラブル発生率の許容水準の厳格化、納期或いは待ち時間の短縮、デザインや性能など製品特性に対する好みの変化、また、既存にない機能、使途への欲求などがある。 これに対応して既存の製品特性を変え、或いは、新しい特性の製品を開発し市場に出し顧客に提供するすることが、製品の改善である。 規格のマネジメントレビューの「製品の改善」の要求事項(5.6.3 b))はこれらに関する組織の戦略的決定を意味している。 必要な製品の改善が出来ずに競合他者の後塵を拝する結果を招いたとすれが、それは仕事のしかた、つまり、業務体系が適切でなかったからである。 情勢の変化を見落としたのか、変化するニーズを見誤ったのか、新ニーズを適切に製品特性に変換できなかったのか、新しい特性の顧客への訴え方がよくなかったのか、等々である。 この反省を業務体系の変更に反映して、以降の仕事のしかたを改善することが、品質マネジメントシステム の有効性の改善である。 同じマネジメントレビューの「システム及びプロセスの有効性の改善」の要求事項(5.6.3 a))はこのようなことを包含している。
   
   ISO14001についても、ISO14004に「改善は環境マネジメントシステムに対して行なわれる」と記されているが、規格の目的はその序文に「環境保全と汚染予防を援護すること」と明記されている。 また、継続的改善の定義も「全般的環境パフォーマンスの改善を達成する環境マネジメントシステム 強化プロセス」であるから、環境マネジメントシステム の改善が環境負荷改善を意図したものであることが明確である。 実際にも環境目的、目標の要求事項(4.3.3項)の下に環境負荷改善の活動が行なわれている。 この点でISO9001とは異なった状況にある。 しかし、認証審査では、改善の実績にはほとんど焦点があてられていない点では両規格で大きな差はないように思える。
   
   ISO9001、14001両規格とも第三者認証登録制度と共に運用されている。 登録証は組織が品質或いは環境に関する顧客その他の利害関係者のニーズや期待に応える努力をしていることにお墨付きを与えるものである。 顧客など利害関係者のニーズと期待が製品或いは環境負荷の改善であることは明白であるのに、規格の要求事項はシステムの改善であるとして、製品や環境負荷の改善実績の有無と無関係に登録証が発行されるとすれば、審査登録制度の意義が問われる。 そもそも、規格の目的は製品品質の改善や環境負荷の改善であり、その達成が組織に事業発展に係わる種々の利益をもたらすのである。 規格条文がシステムの改善となっているからといって、システムを運用するだけでよく、品質や環境の改善は必要ないという解釈は、規格を要求事項の単なる集合としてしかみないという規格解釈上の根本的過ちを犯している。 実益の伴わない業務体系の構築と運用を組織に求め、登録証を交付するというのは、両規格の作成の意図でありようがない。
H16.3.17(改H16.3.20) 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所