ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
100       認証制度信頼性向上が目的のISO/IEC17021改定             <62-01-100>
1.2011年版ISO/IEC17021 の発行
  JABなど認定機関が認証機関を認定する基準となる規格ISO/IEC17021の改定2011年飯が発行され、2013年2月1日には完全適用となる。改定の中味は、認証審査の実行と審査員の能力に関する要件が、旧版で審査に関する指針規格ISO19011を引用するだけであったのに新版では認定条件として明確に取り入れられたことである。これに対して認証業界からは、JABが認定審査でどのような要求をしてくるのかに思いを巡らせ、審査員は資格維持のための負担の増えることを憂い、要員認証機関はどのように資格維持条件を強化するのが得策かを思案し、研修機関は資格維持の研修需要の増加を期待するなど悲喜こもごものざわめきが聞こえる。業界の各機関がそれぞれの目先の利害にのみ目を向け、ISO/IEC17021が初版発行からわずか5年後という異例の早さでこの時期に改定されたということに無関心を装っていることが遺憾である。すなわち、JABはじめ認証業界各機関は、この改定版の発行が近年のIAFを舞台とし、日本でもJABが経産省の権威をも持ち出してまで進めてきた、認証制度信頼性向上の取り組みの中で発意された結果であることがすっかり無視されている。
 
2.改定の発端及び目的
  改定版はIAFの信頼回復議論たけなわの2006年、ISOのCASCO(適合性評価委員会)が作成されたばかりのISO/IEC17021:2006を下敷きに、認証機関の審査能力を明確にしたISO/IEC17021-2を作成することを決議した結果の産物である。結局は新規格作成ではなくISO/IEC17021の改定版となったのであるが、ISOはこの改定の狙いが登録証の信頼を強化することが目的であり、改定版ではこのための審査の在り方と審査員の審査能力について新しい要件を定めたと明確にしている。すなわち、ISOは改定版発行に際する発表*1で、「マネジメントシステム規格に対する適合性の証明である登録証の信頼を強化することが目的であり、世界の人々と民間組織にとってのマネジメントシステム認証の価値を高めるための、マネジメントシステム審査と審査員の審査能力について新しい要件を定めた$1」と述べている。これについてJISQ17021の巻末解説*2は「認証の有効性に関する問題点が各所で指摘されたことを受け、マネジメント システム審査の質並びに品質及びその他のマネジメント システム認証の質を向上させる目的で審査員の力量要求及び審査プロセスに関する要求事項を追加した」と、改定の背景を含み、より明確である。
 
3.ISO/IEC17021規格の狙い
  そもそも、規格ISO/IEC17021は登録証が社会に信頼に足るものであることを確実にすることが目的であり、認証機関が社会に信頼される登録証を発行するための認証機関の業務の在り方を規定している。このような規格の意義とその規定の意図は、規格が序文*3で「これら要件はその遵守が、認証機関が適切で、一貫した、また、公正な方法でマネジメントシステム認証事業を行うことを確実にすることに繋がり、それによって国内及び国際的に認証機関が認知され、その発行する登録証が受け入れられるようになることが狙いである」と記している$2ことからも明白である。
 
  規格の標題は原文$3では「認証機関たるための全般的な必要要件」であり、JABなどの適合性認定機関がこれを認証機関の認定基準として採用することを意図して作成されている。認定機関は、その認証機関が社会に信頼される登録証を発行する能力を持っているかどうかを、認証機関がこの規格の規定する要件を満たして認証業務を行っているかどうかによって判断する。
 
4.新要求事項の意図
  この規格の論理に従うと、社会の登録証への信頼の低下は、そのような登録証しか発行できない認証機関にもかかわらず信頼に足る登録証を発行できる認証機関であると認定されてきたことに問題がある。この原因が認定機関の能力不足や不作為に無関係とすれば、旧版ISO/IEC17021の規定が、認証機関の登録証発行能力を見極めるのに十分でなかったということになる。ISO/CASCOが2011年改定版につながる新規格ISO/IEC17021-2の作成を決議したのは、この規格の論理に則って登録証への信頼回復を図ろうとしたからである。CASCOは、旧版であいまいであった認証審査と審査員に関する必要条件を明確にすることによって、認定機関が認証機関の能力を正しく判断する基準を確立する責任を果たそうとしたものである。なお、ISO19011は第三者審査を除く監査の指針規格として目下改定作業が進められている。
 
  このように改定版に審査と審査員に関する要件が追加されたのは、認定機関が社会に受け入れられる登録証を発行できる認証機関を間違いなく見極めることを可能とするためである。認定機関は認定審査において、認証機関が認証制度の趣旨に適い、認証制度の発展に不可欠な社会からの信頼に足る登録証を発行できるかどうかの観点で、追加された要件を適用しなければならない。しかしJABは、この改定を受けてどのように認定審査のやりかたや視点を変えようとするのかについて発表していないし、改定の趣旨についても無言である。
 
5.JABの思惑
  JIS規格巻末解説にさえ書いてあることをJABが知らないはずはないから、この改定の趣旨を公にすることがJABにとって不都合と考えているからであろう。第一に、JABは登録証は不祥事防止の保証ではなく、それを期待し、そうでないからと言って登録証が信頼できないと考える社会が間違っているという考えである。従って、社会が信頼する登録証を発行できるかどうかで認証機関を峻別するという理屈を受け入れることはできない。第二に、この規格改定は認証制度への社会の信頼低下がJABなど認定機関の認定に問題があったという事実認識に立っているから、権威の頂点に君臨するJABが、問題の責任が自分達の側にあったなどと言うようなことは口が避けても言えない。この改定版については世間に黙っておきたいのである。
 
6.まやかしの認証制度信頼回復取り組み
  そうではあるが、認証制度信頼回復が制度の元締めであるJABにとって最優先課題であるという姿勢は見せなければならない。JABは例年のISO9001認識制度発展を意図したJAB/ISO9001公開討論会を、今年はテーマを「認証のブランド価値を高める」として開こうとしている。その開催案内によると「近年、品質マネジメントシステム (QMS) の認証数は、伸びの停滞あるいは減少傾向にあり、第三者適合性評価制度の意義や有効性が改めて問われております」という問題意識の下に「第三者適合性評価制度の利用拡大、信頼性向上に向けた議論」を重ねてきた結果を報告するとのことである。この案内文を読む限り、JABは登録件数の減少という形で表された社会の認証制度への不信を認識して、信頼性回復になお真剣に取り組んでいるようにも見える。しかし、一方の社会の期待に応える目的のISO/IEC17021規格の改定について黙っておいて、"信頼性向上に向けた議論"を重ねてきたと聞かされても、議論の真剣さを疑わざるを得ない。JABにしろ認証機関にしろこんなご都合主義のまやかしがいつまで通用すると思っているのであろうか。
 
7.愛想尽かし
  今年の公開討論会もこれまでと同様、社会の期待に向き合わない業界論理に基づく空虚な議論と結論であることはまず間違いあるまい。公開討論会の参加料は例年1万円であるが、地方からだとその何倍にもなる。余計なお世話かもしれないが、参加者数はJAB発表で2005年の950名から年々減少して昨年は500名にまでに落ち込んだ。JABはこの状況について考え、原因を分析しているのだろうか。JABの代わりに推測すれば、参加の費用に見合う利益が感じられない人が増えているというより、まやかしの議論であることが見透かされ、公開討論会が愛想を尽かされつつあるのが原因とも考えられる。それならば、登録件数の引き続く減少も、このような振りだけの信頼回復取組みに象徴される認証業界のこれまでの様々な独善的で権威主義的見解と行動に潜むまやかしが社会に見透かされ、そのような認証制度が愛想を尽かされつつあるということに関係しているのかもしれない。

 
引用文献
*1: ISO中央事務局、新聞発表、2011.2.1; ISO News, Ref.:1396 2011-02-01
*2: JISQ17021:2011規格書; 巻末解説 (2)項
*3: ISO/IEC17021:2006、
 
原文(本文中の日本語は著者訳)
$1: The just-published second edition of the International Standard ISO/IEC17021 sets new requirements for the auditing of management systems and for auditor competence in order to increase the value of management system certification to public and private sector organizations worldwide……ISO/IEC17021:2011 is intended to increase trust in certificates issued attesting conformity to management system standards……..
 
$2: Observance of these requirements is intended to ensure that certification bodies operate management system certification in a competent, consistent and impartial manner, thereby facilitating the recognition of such bodies and the acceptance of their certifications on a national and international basis.
 
$3: Conformity assessment − Requirements for bodies providing audit and certification of management systems
H24.1.11
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サニーヒルズ コンサルタント事務所