ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
108       2015年版改訂解説における文字面解釈
           
    組織主導の規格解釈(6)
<62-01-108>
0. 概要  こちら
 
 
1. 文字面解釈

  規格の規定は、効果的な品質/環境経営<品質/環境マネジメント>の在り方を組織がそれに則って業務を行なうべき必要条件として示している。規定の文章、つまり、条文の本質はその意図であり、文章は意図を正しく伝えようとする規格執筆者の努力の産物である。ほとんど全面的に条文が変わった15年版にもかかわらず、どの改訂解説でも全面改訂とは言われずに改訂点はこれとこれというような説明がされているのは、解説が文章の変更すなわち意図の変更ではないとの理解に立つからである。それでもほぼ出揃った認証業界の改訂解説は条文の文章の変更を捉えて規格の意図が変わったとする文字面解釈の披瀝ばかりである。
 
  規定の文字面解釈は今日のISO規格取り組みを組織には実利のない認証ゲームに堕さしめている根本原因のひとつである。例えば次の事例のような文字面解釈による認証審査が行なわれている。
 
@ 法規制遵守
  ISO14001認証審査では関連法規制の改訂を把握する手順が厳しく点検されるが、ISO9001審査では製品に対するどのような法規制があるかという質問だけで済まされる。これはISO14001(4.3.2項)では『適用可能な法的要求事項を特定し、参照する手順を確立すること』と書かかれているのに、ISO9001(7.2.1項)では『製品に適用される法令・規制要求事項を明確にしなければならない』としか書かれていないからであり、ISO9001では法規制改訂把握の手順までは要求されていないとの文字面解釈が一般化されているからである。しかし、規定の意図は顧客や社会から指弾され、損害賠償訴訟や行政、刑事罰に晒されないように関連する法規制をしっかり遵守しなければならないということであり、組織が法規制を遵守するためにはその改訂把握は必要不可欠なことである。
 
A 校正不合格
  また、ISO9001(7.6項)審査では計測器の校正不合格の場合に過去の製品をどうするのかの手順が聞かれるが、ISO14001(4.5.1項)ではまず聞かれることはない。これも、ISO9001には『測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には・・・』との規定があるのにISO14001(4.5.1項)には存在しないからである。しかし、ISO9001条文の意図は正しくない測定値で合否の判断をして基準はずれの不良製品を出荷してしまって顧客の不評を買うことを避けなければならないということであり、ISO14001でも誤った測定値のために規制違反の排水を出してしまうことがあり得る。本来校正とはこのような問題を起こさないための計測器管理手法であるのだから、『校正された監視及び計測機器が使用されていることを確実にすること』というISO14001の規定には校正不合格発生時には必要な処置をとるということが当然に含まれている。審査員が規格の要求でないとして許容したとしても、手順がなければ排水基準違反で摘発されるなど組織が困った状況に陥るのである。
 
 
2. 15年版の改訂解釈
  15年版ISO9001/14001の改訂点に関する認証業界の見解は、過去の改訂時と同様に、新しい規定の文章の一部を取り上げてこのように変わったと主張するものばかりである。それらは、文章の表面的な意味の脈絡のない解釈だけを以てそれぞれにこのように変わったと主張するものであるから、典型的な文字面解釈であり、なぜの説明のない権威主義的押しつけ解釈である。例えば、次の@〜Cの用語や表現が現行規格になく15年版で登場したことを以て、規格の要求が新たに追加され変わったと主張している。
 
@ 組織の外部と内部の課題、及び、利害関係者のニーズと期待の決定
A リスクと機会の決定、及び、それらへの取り組みの計画
B 事業プロセスへの品質/環境マネジメントシステム要求事項の統合
C 品質/環境パフォーマンスの評価、及び、品質/環境マネジメントシステムの有効性の評価
 
  現行規格では、定期的なマネジメント レビューによって品質/環境方針を見直し変更し、そのために必要な課題取り組みをその狙いの結果を表す品質目標/環境目的、目標として決定し、その達成を計画し、日常業務を通じてその実現を図るというプロセスアプローチ/PDCAサイクルの形で品質/環境マネジメントの活動を表しているが、この概念も表現も15年版で何ら変わっていない。@Aは、このようなマネジメント活動の枠組みに関する規定の表現を変えたものに過ぎず、@は現行の『品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更』(5.6.2 f)項)、『変化している周囲の状況』(4.6g)項)の経営用語を用いた言い換えであり、Aは用語『リスク』が現行の『予防処置』の代替であること、リスクの概念は現行規格にも暗に含まれていると規格作成者が文書で説明されており、意図の変更ではない。品質目標/環境目的、目標の決定とその取り組みを『取り組む必要のあるリスク及び機会を決定し』『それらリスク及び機会への取り組みを計画しなければならない』と言い換えているだけである。
 
Bは、15年版規定のトップマネジメントのリーダーシップ発揮の証拠としての11項目のひとつであるが、経営の最高責任者をトップマネジメントと呼ぶこと(定義)、そのリーダーシップが人々を組織の目的の実現に結集させることを意味すること(品質マネジメントの原則の『リーダーシップ』)は現行規格と同じである。従って11項目は現行ISO9001(5.1項)の『品質マネジメントシステムの構築及び実施並びにその有効性の継続的改善』というトップマネジメントの責任を具体的に記述したに過ぎない。この観点からはBの趣旨は組織の日常業務が確立した品質/環境マネジメントシステムに則って行なわれるようにトップマネジメントが統率力を発揮するということであり、現行の『品質マネジメントシステムの実施(正しくは、履行)』の言い換えの一部である。
 
Cは品質/環境マネジメントのプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cの活動としての業務実績が決められた通りであるかどうかを評価し、この結果から業務実行手はずに問題がないかどうかを評価するという組織では普通の業務実行管理の方法論を規格の論理と用語を用いて表したものである。現行ISO9001(8.1項)では『a)、b)、c)のために必要となる監視、測定、分析を実施しなければならない』、ISO14001(4.5.1項)では『著しい環境影響を…特性を定常的に監視及び測定するための手順を実施しなければならない。この手順には、パフォーマンス・・・を監視するための情報の文書化を含めなければならない』の言い換えである。
 
 
4. 共通テキスト化
  2015年版は共通テキストを用いて記述されている。共通テキストはISO9001やISO14001など目的の異なる多数のマネジメントシステム規格においても同じ意図の規定なら同じ文章で表そうというのが目的である。従って、共通テキストからの用語や条文が現行規格の条文と異なることを以て、新要求事項だとか、改訂点だとか言うことは基本的に間違った主張なのである。ところが、認証業界の改訂解説で重要な改訂点であると主張される問題は、上記の@〜Cを含みすべて共通テキストト導入により15年版規定となった用語や文章を根拠としている。共通テキスト化で導入された用語や文章を以て規格の意図の改訂を議論することは基本的に間違いなのであり、その解釈は規定の意図を反映していない文字面解釈なのである。
 
 
3. 組織主導の規格解釈
  これら文字面解釈による改訂解説では、例えば、内部と外部の課題、リスクと機会、それらへの取り組みの一覧表や計画書などが必要とされている。そして、これらが必要と言いながら、現行版対応でどのような問題があったのか、変更して何が良くなるのかの説明はない。組織が登録証を維持するためにこれまで無くても特段の問題がなく、どのような効用が得られるのか明確でない新しい形式的業務を行い、文書をつくらされることになるのを避けるためには、組織の実務の必要に照らした主体的な規格解釈が必要である。規格は組織に効用をもたらすために作成されている。
 
H27.4.10 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所