ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
11  規格の意図に沿わない内部監査の落し穴  <62-01-11>
   ISO9001,14001両規格とも、組織が内部監査を行なうことを規定している。 監査というと、会計監査、会社の監査役などが思い浮かぶが、いずれも監督目的で専門的立場から業務遂行を検査するものである。 ISO両規格は、組織が規格要求事項に従って業務を行なうことを顧客など利害関係者の組織への信頼感に繋げる枠組みであるから、組織が業務の規格適合性の維持を自ら管理することが必要である。 内部監査はこの手段のひとつの、監視、測定と検証の活動に位置づけられ、実施するよう規定されている。
 
   両規格とも内部監査の視点は要約すると、マネジメントシステムの計画(有様)とマネジメントシステムの実施及び維持(運用)の両面である。 実際の内部監査では、後者のシステムの実施、維持の面を主体に行なわれているのが普通であり、承認印の欠如、文書の改定遅れ、記録記入もれ、手順の逸脱、あるべきもの不在など、決められた事の不遵守が不適合指摘の大半を占めている。 このような内部監査の実際を問題視する声はほとんど聞かれず、むしろ、不適合指摘とその是正処置の多いことが監査の有効性の証とみなされることが多い。 それは内部監査が、認証審査での不適合指摘をなくする組織の自主的活動であり、問題点を見出し是正することによって、マネジメントシステムの適合性を改善することが目的と考えられているからであろう。 従って、認証登録後に定期審査が繰返えされても不適合の観察や指摘が減らない場合には、内部監査が適切に行なわれていないためであるとされ、更には、内部監査員の能力が問題視されることになる。
 
   しかし、何であれ決まりや決め事がきちんと守られ実行されるということは組織運営の基本であり、これがなくしては組織の態をなさず、必要な何事も実現しない。 自部門の人々に決まりを守らせ、その目的の実現を図るのは各層管理者の最も基本的な業務であり責任である。 ISOマネジメントシステムの確立とはいわば、この決まりを明確にすることであり、決まりは守られ実行されることが前提である。 それに監査は本来、業務の遵法性或いは妥当性に問題がないことを第三者が客観的に確認することであって、存在する不適合を見出し是正するための活動ではない。 あり得る不適合を選別する製品検査と違って、監査では不適合指摘はあってはならない性格の事態である。 組織の活動においては、決まり事遵守に問題があってはならないし、内部監査は問題があることを前提に行なう活動でも、決まり事不遵守を是正することを狙いとする活動でもない。
 
   実際、規格が内部監査に求めているのは、決められた通りに業務が実行されていることを意味する"実施されている" かどうかの検証ではない。 規格の意図する内部監査は、システムという業務の体系が「効果的に実施され、維持されている」(ISO9001 8.2.2 b)項)、或いは、「適切に実施され,維持されている」(ISO14001 4.5.4 a)2)項)、か否を決定することが目的である。 システムの効果的な或いは適切な実施とは、システムとその諸業務が方針や目的・目標に定めた所定の必要な結果(規格用語では、"計画された結果"、"望まれる結果"などと表現される)を出すように実施されているということである。 そして、維持というのは、組織の事業や業務など諸情勢に変化があっても、手順が適切に変更されるなどシステムの狙いの結果を出す能力が維持されているということである。 内部監査は、決められた通りに業務が行なわれていることを検証するだけでは十分でなく、加えて、必要な業務の変更が行なわれていること検証するだけでも十分ではない。 それら各業務が所定の結果を出しているかどうかを判断しなければならない。 結果が出ていて初めて、プロセスやシステムが効果的に或いは適切に実施され、維持されているということになるからである。 決められた事の遵守とその確認は管理者の日常的業務である。その上で当該管理者以外の独立した者が客観的、専門的な立場で、決められた通りに業務が行なわれて各業務が所定の結果を出しているかどうかを評価、検証をする活動が、規格の意図する内部監査である。
   
   因みに、決めれた通りに業務が実行されても所定の結果が出ていないことがあり得る。 定めた手順や適用した方法、技術、力量などが不適切或いは不十分だった、つまり、プロセスやシステムが狙いの達成に有効でなかったからである。 これに是正処置を実施することで、プロセスやシステムが所定の結果を出すようになれば、それはプロセス、システムの有効性の改善と呼ばれる。 これを通じてシステムの結果、つまり、パフォーマンスが改善される。 なお、厳密に言えば、システムの有効性の改善は内部監査の結果だけでなく他の多くの情報を元にして、トップマネジメントがマネジメントレビュー(ISO9001)、経営層による見直し(ISO14001)によって判断するべきことを規格は規定している。
 
   日本では、ISOの品質、環境両マネジメントシステムとも、組織の通常の事業活動とは別の品質改善或いは環境改善の一種の社内運動の仕組みであるか如くの理解と実践が多い。 内部監査もこの延長で、運動の決まり事の遵守を図るための部門間の相互チェック活動であるかに取り扱われている。 決められた事が守られていないことの発見と指摘が内部監査の役割であるとするのは、規格の意図の誤った理解である。そのような内部監査は規格のマネジメントシステムの枠組みの上で意味がなく、価値も認められない。そればかりか、他の業務に関しても決まり事の遵守という絶対の価値観に対する人々の認識と判断を狂わせ、管理者の責任感をあいまいにする危険をはらんでいる。 技術の発達した今日、多くの事故やトラブル、不祥事は決まり事が守られなかったことを原因としている。 ある決まり事は絶対遵守で、ある決まり事は守らなくともよいというようなことにはならないというのはマネジメントの常識である。 不遵守を是とするかのISOマネジメントシステム内部監査は、永い年月の間に悪くすれば、職場秩序の崩壊を招き、労働安全や品質、環境、設備事故などとして表面化しかねない、マネジメント上の憂慮すべき問題であると考える。
H16.3.31 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所