ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
110       組織の実務を基礎とするISO9001 2015年版規格解釈
                         
- 組織主導の規格解釈(9)
<62-01-110>
0.1  概要  こちら
 
0.2   図. 組織の品質経営の実務を基礎とするISO9001 2015年版解釈 (製造・加工業の単純な事例)
 
 
1. 管理者の仕事
  管理者の仕事は、事業活動の目標を達成するように決められた通りに業務が実行され決められた通りの業務結果を出すように担当部門の業務実行を管理することである。業務実行管理では、業務の実績を狙いの業務結果と比較評価して、実績が狙いの通りであればよしとし、そうでなければ処置を取る。管理の目的は業績目標の達成であるから、管理の対象はそれら結果がすべて狙いの通りなら狙いの顧客満足の状態が間違いなく実現すると考えられる業務だけである。管理は一般に、(Ⅰ)日々の生産活動、(Ⅱ)月単位、(Ⅲ)年度単位の3段階で行われている。
 
 
2. 業務実行管理
(Ⅰ) 毎日の業務実行管理
A. 実務 (生産現場)
  (Ⅰ)は狙いの業務結果が出ているかどうかの観点での個々の業務の生産現場で管理であり、担当者が決められた手順に従って行い、また、結果を記録する。例えば①粗加工後の部品の表面を目視観察して外観管理基準の限界サンプルに照らして出来ばえを3水準に分類し、最下級は廃棄し、中級と上級では異なる仕上げ加工条件を適用する。②~④も同様である。また、⑤⑥発生した異常や苦情に対しては異常や苦情を処理する手順に従って処置がとられる。
 
B. 規格の表現
  規格では、決められた通りの結果であるかの評価判定は パフォーマンス評価(9.1.1)であり、実際の業務結果つまり実績である パフォーマンス(3.13)を品質目標(3.08)又は判断基準(4.4.1)と比較評価する。パフォーマンスが目標を満たしていれば適合(3.18)であり、そうでなければ不適合(3.19)であり、不適合に対する処置は改善(10.1)であり、例えば①の不適合の処置は修正、⑤の処置は是正処置(10.2)である。業務結果が製品である場合にはパフォーマンス評価は合否判定基準に照らしての検証(8.6)である。
 
  パフォーマンス評価の基準となる業務目標たる品質目標プロセスの品質目標であり、その業務の手順書の中に狙いの業務結果又は管理基準の形で文書化(6.2.1)されるか、年度業務目標実行計画書(6.2.2)の中に明確にされている。前者の品質目標は、経営理念又は経営基本方針の下の暗黙の業務実行指針としてのシステムの品質目標(5.2)であり、組織内の共通認識或いは(Ⅱ-2)の管理基準となっており、この実現を図るために各業務の狙いの結果たるプロセスの品質目標とその達成のための業務実行手順が決められている(6.2.1)。
 
  これらの管理や生産活動など組織の業務は、要員、設備、手順、文書、責任権限など用意された業務実行の手はずに則って行われているが、規格ではこの手はずは品質マネジメントシステム(4.4)であり、手はずを整えることは品質マネジメントシステムの計画(6.1.1)である。これら(Ⅰ)の統括は08年版の管理責任者、つまり、品質経営代行者の役割(5.3)である。生産指示や①~④の結果報告、⑤⑥の発生と処置の連絡はコミュニケーション(7.4)である。
 
 
(Ⅱ) 月単位の業務実行管理
A. 実務 (月例生産・品質検討会)
  (Ⅱ)は業績管理の観点で関連業務の実行が順調かどうかを判断する管理である。例えば①粗加工部品の当月の出来ばえを3水準の各区分の比率として月次推移図に表し、当月実績を過去と比較評価し、粗加工能力に何かの異常が起きていると判断される場合には処置をとる。Ⅱ-⑤はⅠ-⑤を含む当月に起きた異常や問題点と対応実績であり、生産、品質の予期した安定性水準と比較評価し、必要なら処置をとる。①~⑤のいずれの処置も、事態を放置した場合に狙いの顧客満足の状態の実現に悪影響が及ぶかどうかのトップマネジメントの判断で決められる。⑦は(Ⅲ-4)の中の重要な情報の入手次第のトップマネジメントへの報告である。また、⑧業務目標実行計画の実績を計画と比較し、遅れに対して処置をとる。
 
  (Ⅱ)では、(Ⅱ-1)業務が決められた通りに順調に行われているかと同時に、(Ⅱ-2)それとの関連で実際に狙いの顧客満足の状態が順調に実現又は維持されているかを評価する。例えば⑥原因別苦情発生率の月次推移図から、苦情発生件数の増減とその原因を評価検討し、組織の製品・サービスへの顧客の評価に変化がないか、顧客のニーズと期待に変化が起きてないかを判断し、必要なら処置をとる。
 
  (Ⅱ-1)は(Ⅰ)の個々の業務実行の適否を月単位の実績として管理するものであるが、それら業務とその実績をそのような基準で評価し、処置をとることが、狙いの顧客満足の状態の実現に必要で十分と考えられる業務が管理の対象である。(Ⅱ-2)は組織の狙いの顧客満足の状態である世界一品質に関して顧客に評価してもらいたい事項であり、これらがすべて狙い通りの結果となっているなら、組織の望む形の顧客との取引の継続できると判断される顧客満足の状態を表す指標であるある。
 
  (Ⅱ)は通常は例えば月例生産・品質検討会の場で行われ、大規模組織では(Ⅰ)の統括責任者がこれを主宰して結果をトップマネジメントに報告し指示を仰ぐ形であり、小規模組織ではトップマネジメントが自身で主宰する。
 
B. 規格の表現
  規格では、(Ⅱ)に関するトップマネジメントの責任を、品質マネジメントシステムが意図した結果を達成することを確実にする(5.1.1) と表現し、(Ⅱ-1)の管理の対象の業務を決めることを、品質マネジメントシステムに必要な関連する機能、階層及びプロセスの品質目標の確立(6.2.1)と表現し、(Ⅱ-2)の顧客満足の状態を表す指標を、顧客満足の受けとめ方の情報(9.1.2)と表現している。(Ⅱ)のための実績情報の収集、報告と評価の判断と処置の関係者への連絡、指示はコミュニケーション(7.4)である。
 
  例えば①出来ばえ区分率は粗加工能力を表すパフォーマンス指標(4.4.1)であり、⑥原因別苦情発生件数は顧客満足の状態を表すパフォーマンス指標であり、月次推移図は顧客の受けとめ方を監視するための情報(8.1.2)である。(Ⅱ)のパフォーマンス評価は一般に分析及び評価(9.1.3)である。パフォーマンス評価で順調でないと判断された業務に対する処置は、修正、是正処置(10.2)である。また⑦特別な内外の事情、動向は、品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える外部及び内部の課題(4.1)と品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者の要求事項(4.2)である。
 
 
(Ⅲ) 年度単位の業務実行管理
A. 実務 (期末業績検討会)
  (Ⅲ)年度単位の業務実行管理では、当該年度の業績を確定し、次年度の業績目標と必要な経営施策を決定するために トップマネジメントが自ら年度末に当該年度全体を振り返り、(Ⅲ-1)業績目標の達成の評価、(Ⅲ-3)それに関連しての業務能力の評価と(Ⅲ-4)事業環境の変化の評価を行う。
 
  (Ⅲ-1)では⑥原因別苦情発生件数など様々な業績目標指標の実績をイ)~ヘ)品質指標の過去の値又は当該年度の業務目標の値と比較評価する。業務実行が手順書の通りであるように管理するのは、それによってこれまでと同様の製品・サービスへの顧客の信頼感を確保するためであり、では各品質指標と業績目標の実績を総合的に評価して狙いの顧客満足の状態が実現したかどうかを、例えば次年度も同様に継続取引をしてもらえそうかどうかというような観点で判断する。
 
  (Ⅲ-3)では、(Ⅲ-1)に関係する不適合の原因となった業務能力上の問題点を抽出し、狙いの顧客満足の状態の実現に十分かどうか、狙いの顧客満足の程度や水準を高くする、或いは、別の観点の顧客満足の状態の実現を図るこという観点で十分か、何が不足するかを評価する。
 
  (Ⅲ‐4)では、(Ⅲ-1)の原因を含み次年度以降の狙いの顧客満足の状態の在り方に影響を及ぼす可能性のある事業環境上の事情とその変化を抽出し把握する。
 
B. 規格の表現
  (Ⅲ)の業務実行管理は規格では、マネジメントレビュー(9.3)であり、トップマネジメントが自ら行う(9.3)。(Ⅲ-1,-3,-4)の各評価項目はマネジメント レビューへのインプット(9.3.1)である。(Ⅲ)のパフォーマンス評価は、分析及び評価(9.1.3)である。例えば(Ⅲ-1)の⑥原因別苦情発生件数の情報は、受けつけた苦情を予期の通りかどうかを評価判定できるようにⅠ-⑤のデ-タを分析して図示したものである。(Ⅲ-3)の実現した顧客満足の状態は⑥~⑮の総合評価の結果の判断である。
 
  また、⑤は顧客満足の状態を表すパフォーマンス指標(4.4.1)であり、比較評価の基準はシステムの品質目標(5.2)である。実現したと判断される顧客満足の状態は品質マネジメントシステムのパフォーマンス(10.3)であり、このパフォーマンス評価は実績を品質方針に伴う品質目標(5.2)と比較評価することである。
 
  (Ⅲ-3)のパフォーマンス評価は、出した不適合やとった是正処置から判断される業務能力の実績が狙いの顧客満足の状態の実現に必要と考えられる業務能力と比較評価することである。
 
  (Ⅲ-4)のパフォーマンス評価では、前提としてきた事業環境上の事情が狙いの顧客満足の状態に照らしての適否の評価判定である。この事業環境上の事情の変化と(Ⅲ-3)の業務能力の問題点は規格では、品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える外部及び内部の課題(4.1)と品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者の要求事項(4.2)である。
 
 
(Ⅳ) 年度単位の業務実行管理の結論
A. 実務
  (Ⅲ)の業務実行管理でトップマネジメントは、(Ⅲ-1,-3,-4)で抽出、把握した業務能力の問題と事業環境上の事情とその変化の中から、組織の事業の継続した維持発展を図るという観点から対応が必要な問題を判断し、必要な経営上の対応策を決める。対応は業務能力と事業環境を活用して組織の発展を図るもの(機会への対応)であるが、発展の支障となる恐れのある業務能力の問題点と事業環境に見込まれる変化への対応(リスクへの対応)も含まれる。
 
  これらは通常は経営戦術としての対応であり、そのための経営施策を次年度の年度業務方針と重点取組み事項として明確にする。これらは次年度の各部門の業務目標、業務目標計画書に展開し、手順書に定められたこれら以外の大多数の業務と合わせて決められた通りの結果が出るように(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)で実行を管理する。
 
B. 規格の表現
  規格では(Ⅲ)によるトップマネジメントの次年度に向けた決定はマネジメントレビューからのアウトプット(9.3.3)である。(Ⅲ-3,4)で抽出、把握した業務能力の問題と事業環境上の事情とその変化の中の対応が必要な問題は、4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮しての取り組む必要のあるリスクと機会(6.1.1)であり、対応のための経営施策はリスクと機会への取組み(6.1.2)である。
 
  この経営施策を次年度の年度業務方針に反映することは、状況に対して適切な品質方針を維持する(5.2.1)であり、重点取組み事項の各部門の業務目標としての取組みは、関連する機能、階層及びプロセスにおいて品質目標を確立する(6.2.1)であり、取組み実行を業務目標計画書(6.2.2)で管理することも多い。
 
  このようにマネジメント レビュー(9.3)による狙いの顧客満足の状態の実現とそのための各業務のパフォーマンス評価と問題点の抽出(9.3.2)、それに基づく経営施策の決定(9.3.3)と、それへの取り組み(6.1.2)というPDCA/プロセスアを繰り返すことが、継続的改善(10.3)である。
 
 
3. 組織の実務を基礎とする規格解釈
  規格の規定の文言から何をしなければならないかを考える規格解釈ではなく、組織の管理者の現実の仕事の仕方に規定の意図を当てはめるという本来の規格解釈を行うならば、2015年版への移行作業はしないのも同然で済む。しかも、これが2005年改訂の趣旨に合致し、ISO9001が役に立つ規格となる。

 
   



H27.9.9 
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