ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
13   審査とコンサル分離のJAB新指針  <62-01-13>
    審査登録制度の信頼性確保のための国際的取組みを日本が先取りして、審査とコンサルティングの実行区分を厳格にするJAB新指針が11月1日から施行される。 これにより、審査機関によるコンサルティング事業は禁止となり、関連会社を審査することが出来なくなり、関連会社がコンサルティングした組織を審査することにも制約が加わることになる。多くの業界団体が独自の審査機関を設立し、また審査機関は少なからず子会社のコンサルティング事業を受審組織獲得の手段としているから、指針の運用次第ではISO業界の構造を揺るがすことにもなる。
 
   折しも JAB は3月15日開催の第10回ISO9001公開討論会に、昨年9月実施のアンケート調査結果を報告した。この中で、ISO9001の運用状況に関して「ISO9001が有効に機能した」と答えた組織は、「大いに」と「かなり」とをあわせても52% だったとしている。この数値は前回の調査(2001年12月)の56%と変わっていない。これについて報告書は「有効に機能していると評価している組織が過半数を越えている」と肯定的である。一方で、「全体の評価ではISO9001:2000の規格解釈に対する理解の深まりが見られる」と判断し、内部監査がシステムの有効性を確認し、システムの改善を図るというように活用されていないと指摘して、あたかも「有効でない」ことが組織の問題であるかの分析をしている。
   
   しかし、これらの組織も認証審査に合格し、登録証が発行されているのであるからば、この結論は甚だ表面的で一方的なもののように思える。なぜなら、ISOの説明では認証審査は「システムが効果的に運用されているとの保証を組織と顧客に与える」(ISO中央事務局:多忙な管理者のためのISO9000)ものであるからである。 調査対象のすべての組織は登録証を取得しているから、審査機関はこれらすべての組織のISO9001マネジメントシステムが機能していることを認めており、登録証のJAB認定マークはJAB 自身も同じ判断をしていることになる。 ISOの「効果的運用」と「有効に機能する」とが同じ意味であろうから、登録証を与えた組織の半数までもの「機能していない」との判断については分析が加えなければならない。 このような論理上の矛盾はともかくとして、JAB の結論は他の調査結果と同様であり、半数の組織のシステムしか有効に機能していないというのは現実を表したものに違いない。
   
   翻って上記の審査とコンサルティングの分離の問題は、卑近な言葉でいえば審査機関とコンサルティング会社ないし受審組織との癒着により、認証審査の基準が歪められているのではないかとの社会の不安が背景である。 つまり、規格要求事項に従ってシステムが確立、運用されていないのにもかかわらず審査機関が手加減して登録証を発行するという便宜を図っているのではないかとの疑いである。 JABが上記規制に踏み切ったのはこの疑いに対して JAB が相応の認識を抱いているためであろう。 しかし考えてみれば、手加減しないと合格しないような"いい加減なシステム"は、ISOの「効果的に運用されている」には合致せず、JABアンケート調査の言葉を借りると「有効には機能していない」はずである。 つまり癒着を疑う社会の不安の本質は「機能していないシステム」に「システムが効果的に運用されている」として登録証が発行されているのではないかということである。 もしそうであれば、顧客など利害関係者は登録証を組織やその製品を選ぶ判断基準に使用することが出来ないから、審査登録制度の存在意義が揺らぐ。 JAB 新指針の背景の審査登録制度の信頼性確保についての国際取組みの元もここにある。 従って、癒着は問題の本質ではない。それは不正な事業活動という別の問題である。
   
   問題の本質は機能していないシステムに対して登録証が発行されているのではないかということである。 そして日本のISO9001に関してはこのような登録証が半数あるということを JAB自身が認めている。 これがすべて審査機関とコンサルティング会社或いは受審組織との癒着の結果とは思えないから、JAB新指針では社会が不安に感ずる問題を解決することができない。 今日の日本の認証審査では、審査のばらつきに対する受審組織の不満はあっても、癒着が疑われるほどに審査機関が恣意的にでも規格解釈を行い得、どのようにも合否を判断できるという現実がある。 システム審査という名の下に、仕組みさえ整っていれば結果を問わない審査が行なわれていて、審査合否を決める絶対的な基準が欠如しているからである。 ISOの説明のように、効果的に運用されているシステム、機能しているシステムにしか登録証を発行しないというような審査でなければならない。認証審査にこの絶対の基準を適用することこそが、審査登録制度の信頼性確保の唯一の道である。 このような審査には審査機関の審査能力向上の相当の努力を要するが、癒着とか審査のばらつきなど認証審査を巡る諸問題は一挙に根本的に解消できる。そしてこれは、ISO9001、14001規格の認証登録制度の本来の意図であり、受審組織及び社会の期待に沿うものでもある。
H16.4.30(改 5.10) 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所