ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
14  必要条件と十分条件  −機能するISOシステムにするには  <62-01-14>
    日本のISO9001,14001マネジメントシステムの大半が機能していないというのは今や多方面で認識されている事実である。この原因は審査合格優先の形式を重視する日本の常識的な取組みにあると考えるのであるが、その元は規格や要求事項というものの本質の理解がおろそかにされていることである。日本では規格取組みの最初からシステムが機能することが念頭に置かれていないように見える。。
 
   規格は組織が顧客やその他の利害関係者の必要又は期待を満たすように品質改善或いは環境改善に取組み、実績を挙げることを目的に制定されたものである。 組織が規格に従って組織の諸業務を運営管理(マネジメント)すれば、組織は必要な品質或いは環境改善を着実に達成することができる。すなわち規格は、事業の維持、発展の必要から品質或いは環境改善を図りたいと考える組織が、その諸業務をどのように運営管理(マネジメント)しなければならないかを規定している。 規格の規定は要求事項と和訳されているが、このような効果的なマネジメントの活動とは如何なることであるかを、関連する諸業務に対する必要条件として示すものである。 因みに要求事項は Requirement であり、必要条件の意味である。 要求事項の文章は、「・・であること」「・・すること」又は「・・でなければならない」「・・しなければならない」と和訳されている。 「・・・こと」「・・ならない」のは、組織が品質或いは環境改善の達成を図るためである。
 
   要求事項に従ってマネジメントを行なえば本当に必要な品質改善或いは環境改善が達成されるのかという疑問に対してISOの当事者は、規格が規定するマネジメントの在るべき姿とは規格作成者の単なる思いつきではなく、世界の各企業の成功体験を織り込んだ最新のマネジメント理論として世界の専門家が合意したものであると説明している。 現に1980年代に品質で世界を席巻した日本の大手製造業の仕事の仕方は、ほとんどそのままで規格要求事項を満たしている。 筆者もその一員であったがこれら企業では、規格の意図を正しく理解しておれば、ISO規格認証取得に際して新たに何かを構築するというような感覚は全く不要であったはずである。
 
   実績に基づく科学的な理論であるから、規格に従ってマネジメントを行なえば組織は必要な品質或いは環境改善を達成できると信じることは合理的である。 従って、もし組織がISO規格に従ってマネジメントを行なっているなら、その組織の活動や製品が品質又は環境上の問題を引き起こすことはないと、顧客やその他の利害関係者は安心してもよい。 だから、あまたある組織や製品の中からひとつを選ぶ機会を持った場合には、ISO規格のマネジメントを実行している組織やその組織の製品を選ぶことになる。 認証登録制度は、審査登録機関が個々の顧客や利害関係者にこの安心を提供するものである。
 
   然るに要求事項は必要条件であるに過ぎない。規格の適用は直ちには品質、環境の改善の達成に結びつかない。 規格は改善達成のためにはマネジメントの活動はこうでなければならないという必要条件を規定しているのであって、こうすれば必要な改善が達成できるという十分条件を規定しているのではないからである。 規格は仕組みだから運用が大切とか、規格は最低条件しか規定していない、などとの規格理解には筆者は賛同できないが、これらも規格の性格についての同根の指摘でではある。 しかし規格は、マネジメントの業務体系(マネジメントシステム)の必要条件を規定した上で、それが効果的に確立、実施、維持されるべき必要をも規定している。 効果的とは改善の達成に効果的ということであるから、これは十分条件を満たしているという意味である。
   
   例えば規格は、問題の再発の防止のために問題の大きさと影響に見合った是正処置をとることの必要を規定しているが、どこまでの深い是正処置を行なえば組織の品質又は環境改善の目標達成に十分であるかはそれぞれの組織が決定しなければならない。 このような十分な手順が定められ、その意図に沿って是正処置が実行されて初めてマネジメントシステムが効果的に確立され実施されていることになる。 規格条文のおうむ返しの如き記述の是正処置の手順が、十分条件を満たしているとは思えない。
 
   日本では、審査登録を目的とし審査合格優先の形式としてのマネジメントシステム構築が広く行なわれている。 このようなマネジメントシステムが規格が意図するような機能を発揮しないの当然であるから、ISO規格適用効果についての最近の世評も驚くに当たらない。 しかし、規格適用の効果に関する本当の問題は、規格の要求事項は必要条件であって十分条件ではないということである。組織は要求事項の「・・しなければならない」を、「ここまで・・」或いは「このように・・」と十分条件にまで高めることが必要である。 規格への適合とは、システムの構築、運用に当たって要求事項を満たしておればよいというものではない。必要な品質又は環境改善を着実に達成するのに十分なように満たすことが必要である。 これが規格の「効果的」の意味である。品質又は環境改善を達成するのに十分な業務体系を確立し、運用すること、つまり機能するシステムが、規格の本当の要求事項である。
H16.5.13 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所