ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
15  内部監査員は部課長以上であることが必須
 <62-01-15>
   ISO9001,14001のマネジメントシステムの運用に関して内部監査の重要性を強調する声が高い。 最近では組織の業績の改善に寄与するような内部監査ということまで議論されている。 これに関連してこれまでの不適合摘出能力の点から必要とされてきた内部監査員の能力向上に新たな要素が持ち込まれている。 しかし研修の強化が叫ばれても監査員にふさわしい力量とは何かの本質に遡ってこれを議論した例は聞かない。
 
   内部監査を行なうにふさわしい能力のことを監査の規格(JISQ19011*)では「力量」と呼ぶ。 力量とは「個人的特質と知識及び技能を使用する能力(筆者翻訳)」と定義される(同 3.14)から、ISO9001の力量に個人的特質を加えたものであり、概念的には同じである。 ここに、内部監査を行なうのに必要な知識には、規格と監査に関する知識、監査の対象となる組織の業務に関する知識の3種類があると考えられる。 技能とはこの場合は監査を行なう技能であり、例えば質問の仕方や不適合発見の仕方、審査所見のまとめ方などである。 これは規格用語を用いると監査技法を実行する能力という。 必要な知識と技能を備えていても、実際の場でそれらを適切に使用することができるかは別問題である。 規格はこのことを「知識と技能を使用する能力」と表現しているが、これは実地に使用して、すなわち、経験によって育まれる種類の能力である。 規格の定義に沿って監査員としてふさわしい力量を考えるに、個人的特質の他、業務知識、規格知識、監査知識、監査技能、監査経験の6つの要素がある。 規格では知識及び技能として、監査の原則、手順及び技法、マネジメントシステム及び基準文書、組織の状況、法律、規制及びその他の要求事項の4領域を挙げている(7.3.4)が、言わんとするところは同じである。
 
   ところで、一般的な社外の内部監査員研修では、規格要求事項と監査手順の解説と監査のロールプレイ演習が中心である。 受講によって力量要素の内、規格知識、監査知識、監査技能の3つは身につけることができるかもしれない。 しかし、審査のばらつきが批判される認証審査を行なう審査員がもっと濃密な研修を履修し、実地の審査研修の後に資格を与えられたことを考えると、これだけで内部監査を効果的に行なう力量をもったとするのは疑問である。 第一、これら日常業務と異質の新しい知識と技能を研修受講で吸収できるには、それなりの知識の基盤が必要である。 これらの業務関連の知識基盤は、自らの担当業務以外の関連事項にも関心を持ち、自己啓発に努め、業務経験を通じて形成されるものである。 このような知識基盤の持ち主が受講して初めて研修は有効なものとなる。
 
   監査の専門家であったとしても問題になるのが組織の業務に関する知識である。 監査員が手順や専門用語、文書の存在を含む監査対象業務を初め、部門の機能や役割を知っており、組織の業務体系全体について理解していなければ、効果的な監査は望めない。 また、方針、目標など組織の戦略的意図、その時点での状況や緊要の問題など組織の活動の実態についての全般的な知識を持っていることが必要である。 人々がどこまで正しく深い理解や知識をもち得るかは、担当する業務と責任に依存する。 システムの効果的実施の程度や組織の業績改善に関して経営者に提言するような監査報告書を書くのに必要なマネジメント知識と理解は、トップマネジメントか少なくともミドルマネジメントの管理者でしか持ち得ない。
   
   更に、JISQ19011が規定する監査員に必要な「個人的特質」も、倫理的、外交的、観察力がある、決断力がある、等であるから、生まれながらの資質というより業務や職責を通じて強化されるものである。 これらの個人的特質は組織が人々の業務遂行能力を評価し、責任ある職位を委ねる際の判断基準として一般に用いられている。 従って組織内でこれらの特質を有する人々とは自然に管理者層と重なることになる。
 
   多くの組織で、外部の内部監査員教育の履修またはその履修者による内部教育の受講を以て内部監査員の資格を付与し、内部監査を委ねている。 また、内部監査員の多くが作業者や下位管理者から任命されていることも珍しくない。 これは内部監査を手順遵守の抜けについての相互指摘活動として、人々の品質、環境マネジメントシステムへの理解促進の手段としている限りは問題ないのかもしれない。 しかし、規格の意図する効果的な内部監査とするためには、監査員が本当にふさわしい力量をもっているのかどうかが鍵である。 力量を規格の意図に従って6つ要素に分けて考えると、内部監査員は少なくともミドルマネジメント層の管理者、つまり、一般には部長、課長クラス以上から選定することが必要である。 経営に役立つ内部監査や組織の業績改善に資する内部監査を求めるなら尚更マネジメントに関する高い立場からの理解と知識が必要である。 今日の多くの内部監査が手順の不順守の相互指摘活動に堕しているのは、監査員にふさわしい力量を持ち得ない人々を内部監査員に任命しているという規格要求事項の形式的適用が原因であると思う。
 
* JISQ19011:2002 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針
H16.5.31 
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