ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
16  論理の説明のない簡易版EMS  <62-01-16>
    日本では中小企業でも容易に取得できることをうたい文句にした、いわゆる簡易版EMSがいくつか存在する。最近では環境庁が進めていた環境活動評価プログラム(エコアクション21)が2000年版として「環境マネジメントシステム」に衣替えした。これは「中小企業でも容易に取り組める環境マネジメントシステム」であると説明されており、ISO14001と同様の認証登録制度を創設することも明確にされている。
 
   腑に落ちないのは、これら簡易版EMSがなぜISO14001より取り組みが容易で安価であることができるのかという点である。どの簡易版EMSもこれを説明していない。 すべての簡易版EMSは、「環境マネジメントシステム」であることを謳っており、かつ、ISO14001を基礎としていることを明確にしている。 その上で、ISO14001の要求事項を緩和、削減したことを取り組みの容易さの理由に掲げている。 要求事項を緩和したから容易に登録取得ができるという理屈であるが、これは説明にはならない。 ISO14001のすべての要求事項にはそれぞれの意味があるから、どれかを適用しなかった場合はISO14001の狙いの実現に支障が生じるはずであるからである。
 
   ISO14001規格は、組織が社会の環境ニーズと自身の経済的存立を均衡させつつ活動と製品の環境への悪影響を継続的に着実に改善するという環境マネジメントに対する必要条件を規定している。 この規格の規定たる「要求事項」に沿って業務を行なう組織は、地球環境や地域の環境の保全のためにコストである環境対策に精一杯取り組んでいると認めるに値する。 このことは、「持続的発展」を基本理念とする地球環境保全の国際的取り組みの下での共通認識であり、国際的な合意である。 そして認証登録制度は、環境保全に正当な努力をしている組織を社会に公報するためにある。 登録証の有無は、顧客など諸利害関係者が組織を多くの競合組織の中から選ぶ場合に国際的に有効な判断基準となる。
   
   ISO14001はこのような国際的に正当と認められる環境保全の努力の条件を規定しているのであるから、その一部の遵守が困難だからという理由だけで、その条件を緩和したり削除するというのでは理屈は通らない。 この点を雑誌の対談で問われた、TC207国内委員長でかつ簡易版EMS擁護論の吉澤 正氏も「確かにISO14001の一部だけ行なって、それでEMSでいいのかという問題はあります。そこはよく考えた方がいい。」と答えている(アイソムズ、2003.6,p.24)。 各簡易版EMSは、組織がISO 14001の要求事項を緩和したり、削除したりしても、なぜ正当な努力をしていると考えることができるのかを説明しなければならない。 ISO14001が不必要な要求事項を規定していると考えるのであろうか。  或いは、簡易版EMSはISO14001とは別のものを目指しているのであろうか。  それならそうと説明しなければならない。  しかし現状ではすべての簡易版EMSが ISO14001を基礎としていると説明している。これでは組織や登録証を利用する利害関係者を混乱させていると非難されてもしかたない。
   
   簡易版EMSはまた、ISO14001に規定された国際的に正当な努力をしない組織が取得する簡易版EMSの登録証はどのような意味を有しているのかも説明しなければならない。 顧客や利害関係者は登録証から組織について何を判断すればよいのか、それはISO14001の登録証の意味と異なるのか同じなのか。 エコアクション21の登録取得がコンサルティング料を含めても25万円であると破格の安価さを喧伝する報道もある。 しかし、この価格で組織が得ることができる価値が何なのかの説明がない限り、ISO14001より本当に安価であるかどうかはわからない。
 
   簡易版EMSは、ISO14001の対案であり、ISO14001の中小企業にとっての問題点を改善したものと主張されている。 それなら、ISO14001と比較しての狙いや効用の相違或いは特徴をその論理と合わせて明確にしなければならない。 その論理が明確でない以上、取組みの容易さ、登録取得の安価はわかっても組織が取り組む価値というものが判断できない。  これは登録証を利用する顧客初め各利害関係者が最も知りたい点でもあると思う。
H16.7.3 (改 H16.9.20)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所