ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
20   継続的改善はマネジメントの普遍的目的  <62-01-20>
    ISO9001,ISO14001規格を認証取得した組織の大半がその効果を実感できていないという事実が、ISOに係わる機関や人々にも認められ始めている。このような場合に効果を認める組織が挙げ、また、本来享受すべきと強調される、規格導入の利益の主要なひとつが継続的改善である。 確かに両規格とも継続的改善に焦点を当てている。
   
   ところで、両規格ともマネジメントシステム規格であり、マネジメントの在り方に関する必要条件を規定している。マネジメントとは、トップマネジメント以下の各層管理者の業務である。 注文受付、製造作業、給与計算等々、組織の事業に係わる業務、つまり、経営管理学で言う作業活動を直接担当し実行するのではなく、作業活動が効果的、効率的に行われるようにする業務がマネジメントである。具体的には、業務の手順の決定、要員の教育や指導、作業の実行指示、作業の実行状況の監視、結果の把握等々の業務である。単に必要な設備と要員を配置し原材料を投入しただけでは、顧客に提供できるに十分な品質、納期、また収益を得るのに十分なコストの製品が実現できるとは限らない。管理者の業務、つまり、マネジメントは、作業活動を秩序づけることであり、狙いは増収増益で事業を発展させることである。
   
   マネジメントは経営管理学で、「他の人々をしてものごとをなさしめること」(1)、「集団の中で協働する個々人が設定された目標を効率的に達成する場合における環境を設計し、維持するプロセス」(2)、「企業目標を達成するために限られた資源を有効適切に活用しコントロールする行動」(3)、などと定義されているが、実務的にも言い得て妙である。
   
   管理者は業務の手順を決める際には、品質、安全、環境、能率、コストなど種々の観点で最も適切な方法となるようにする。実行して不良品が出たり、時間がかかり過ぎたりなど問題が生じれば、原因を調査して再び問題が起きないように手順を変更する。これを担当者に教え、実行を監視し指導して、改善された新手順を職場に根付かせる。 職務に忠実な管理者は日々の業務を通じて、自部門起因の品質不良が多いなど自部門の機能、役割を果たすために支障となっている問題点がないか、或いは、能率向上の可能性などより良く役割を果たすためにとり得る処置はないか、について常に考えている。そして課題を特定し、予算処置など必要な手続き、要員の手配や手順の改善などの処置をとって問題を解決する。このように、管理者の業務、つまり、マネジメントの本質は改善である。 マネジメントの存在理由は改善の実現であり、改善はマネジメントの普遍的目的であると言える。
   
   管理者は品質不良、能率不足などで生じた現象上の問題を解決するに当たって、それらを生んだ業務の問題点を改善している。すなわち、マネジメントの目的とする改善は業務の改善であり、改善を繰り返すことによって業務体質を強化し続けることである。ISO9001,14001 両規格のマネジメントシステムとはマネジメントの業務体系のことである。マネジメントシステムの継続的改善は、不適合の是正、予防処置を通じた活動と目標を設定し達成を図る活動とによるシステムの改善のことであるから、実務的には業務改善の繰り返しによる業務体質の継続的な強化の活動に他ならない。規格の継続的改善とは、マネジメントの普遍的な目的を指しているのであって、ISOマネジメントシステムに特有の概念ではない。継続的改善は、組織のマネジメントの普遍的な目的であり、どの組織でも日々に実行されている活動である。
   
   管理者が存在する組織ではマネジメントが行われており、その業務の体系も存在しているに違いない。しかし、マネジメントの機能や目的に関する意識が希薄で、業務体系もあやふやのままになっている組織も少なくない。ISO9001,14001 両規格は、組織のマネジメントの業務体系を明確なものとして確立し、それが規格の要求事項を満たすようにすることを求めている。そのような業務体系の下に組織がマネジメントを効果的に実行すれば、品質、環境に関するそれぞれの規格の目的が達成できるというのが、過去の世界の企業の成功体験に基づく論理なのである。両規格の論理の共通要素は、体系的なマネジメントという点である。システムの継続的改善は両規格に共通であるが、それはマネジメントに固有の概念であって、ISO規格に特有なものではない。
   
   日本では審査合格優先の規格解釈から、規格の要求であるとして組織の業務にISOマネジメントシステムという新しい業務の仕組みが持ち込まれている。このような規格取り組みにおいては、ISO9001,14001両規格とも品質、環境の全社的な改善運動が要求されていると見做され、組織に展開されている。この改善運動では焦点はパフォーマンスの改善に当てられ、トップマネジメント初め各層管理者は旗振り役で、改善実行は専ら担当者が担う。 規格適用の利益として継続的改善が挙げられるのは、このような規格取り組みの実体を反映した誤解にもとづくものと思われる。
 
 
参考文献:
(1) 宮坂順一:経営管理学の論理, 轄W洋書房,1998.3.20; p.6
(2) 小椋康宏:経営学原理,滑w文社, 1996.3.30; p.3
(3) 宮田 薫:管理者のためのマネジメント理論, 日本コンサルタントグループ, 1995.9.1; p.15
H16.8.31(改 H16.10.4) 
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