ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
22   ISO9001はそれだけでは "効果が出ない" 規格か ?  <62-01-22>
    形骸化したISO取組みの問題が露出度を強めてきて、遂にISO取組みをリードする機関、関係者の間でもこれを認める声が上がりつつある。認証取得企業の不祥事もきっかけになって、認証取得の”効果が出ない”がどうすればよいかの議論が雑誌等でも盛んになってきた。ただ、議論の多くは認証取得組織の規格に対する無理解を原因に挙げるものであり、従来のいわゆる失敗例に関する指摘と代わり映えのしない主張である。しかし、組織の無理解を強調するあまりか、ISO9001だけで”効果が出る”と誤解しているところに問題があるとする主張まで現れている。曰く、規格は国際規格であるので最低必要限度の或いは一般的な要求事項しか規定していないので、本来規格だけでは”効果を出し得ない”のである。これによると 組織がISO9001規格適用で”効果を出そう”とするなら、組織の顧客の独自の要求事項はじめ組織に特有の別の要素をシステムに追加しなければならないということである。
   
   この主張には例によって根拠が示されていないので真意を測ることはできないが、論理的に奇妙で筋の通らない考えに思える。 第一、「最低必要限度」とは、何かの意味や効用をもつために最低限度ということであるから、ISO9001に置き換えるとその狙いの”効果を出す”ための最低必要限度の要求事項という意味となる。「最低必要限度」だから効果が出ないというのは理屈にならない。また、ISO9001規格は「顧客、規制及び組織に特有の要求事項を満たす組織の能力を評価するために用いられる*」(ISO9001, 0.1 序文)ものであると規格が謳っている。ISO9001が一般的な要求事項しか対象にしていないというのは当たらない。 更に、規格適用の目的は顧客満足向上の実証又は追求(同,1.1 適用範囲一般)であるから、 規格序文の「能力」とは顧客満足向上を達成する能力である。組織が顧客満足向上を図るという”効果を出す”ために規格は作成されたのであり、規格だけでは”効果が出ない”という主張は規格の本質をないがしろにしている。
   
   審査登録機関による審査は、そのような能力を「審査登録機関を含む外部機関が評価するため用いられることができる*」との同じ条文に根拠をおいている。ここに認証審査における不適合は、「一つ又は複数の品質マネジメントシステム要求事項が欠けている、又は、実施、維持されていないこと」(JAB R300-2002 改1, G.1.3.1)であり、登録は「品質マネジメントシステムを効果的に実施しかつ維持していることを実証するもの」(同, G.2.1.2)である。 規格で「効果的」とは「計画した結果が達成されるように*」(ISO9000,3.2.14)の意味であるから、「効果的に実施」するとは、序文に規定の各要求事項を満たして顧客満足向上が図れるという”効果が出る”ようにマネジメントが行われているということである。なお、規格で「実施する」とは決められた通りに実施するという意味であり、効果的に実施することを意味する。 審査登録機関は、不適合がなく、”効果が出ている”と判断したからこそ登録証を発行している。ISO9001規格だけで現に”効果は出ている”のである。
   
   日本では、要求事項を審査合格のための規格の要求とすることから始まる、日本語条文偏重、審査合格の形式重視で、論拠を示さない規格解釈が大勢を占めてきた。規格だけでは”効果が出ない”という主張も相変わらずの神様のご託宣的見解の表明以上のものではないように思える。登録取得を目的化した形式重視の規格取組みこそが”効果の出ない”原因と思うのであるが、規格自身に”効果がない”という主張がそのような取組みの基となった過去の規格解釈の不適切さを糊塗するように利用されることがあってはならない。 規格だけでは”効果が出ない”とは、これまでISO9001の適用を勧め、或いは登録証取得を勧める話の中で出てきた例を知らないが、もしこれを知らされていたなら組織は果たして大金と労力をかけて規格適用に走ったであろうか。
   
*印: 筆者による和訳
H16.9.30 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所