ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
24   ISO14001:2004 で認証審査が厳格化される?  <62-01-24>
    ISO14001改定版の発行が迫り、改定点の解説が雑誌を賑わせている。この中で、現行版で認められていた“紙、ゴミ、電気”を中心とした ”本来業務と遊離した環境マネジメントシステム” が改定版では認められなくなるなど認証が厳格化されるという説が勢いを増している。
   
   しかし、“本来業務と遊離した環境マネジメントシステム”は現行版でも不適合であり、これに関して改定版には何の変更はない。なぜなら、ISO14001を実践する組織は、自らの環境影響低減の取り組みの意図や狙いを環境方針として明確にし、その実現を図る責任があるのだが、ISO14001 4.2 a)項は、この環境方針は「組織の活動、製品又はサービスの性質と規模及び環境影響に照らして適切でなければならない」と規定している。 「又は」だから、活動、製品、サービスのどれかの性質、規模、環境影響に対応したものであればよいという解釈があるようだが、この4.2 a)項が何のためにあるのかを考えればあり得ない解釈であり、「又は」だからどれかひとつの、というような解釈は条文の文脈上も素直な解釈ではない。この「又は」は「〜にしろ〜にしろ」の意味に受けとめるべきである。 “紙、ゴミ、電気”が組織の本来業務に関係ないとすれば、それらの削減を掲げる環境方針は 4.2 a)項に照らして不適合であるのは議論の余地がない。この規定は改定版でも変わらない。
 
    ISO14001は、組織がその環境責任を果たしていると国際的に認められるために必要な仕事の仕方を規定した規格である。 ISO14001が体現するこの国際的合意とは、組織がその利害関係者のニーズや期待を満たすような環境保全、環境影響低減に、経済的、技術的に可能な最大限の取り組みを行い継続的に着実に実績を挙げれば、組織はその環境責任を果たしていると認めようと言うものである。そして認証審査はこの判断を公正な第三者に委ねるものであり、審査機関の発行する登録証は、組織の活動と製品がもたらす環境影響に係わりを有するいわゆる利害関係者に対する、組織が必要な環境責任を果たしているというお墨付きである。登録証に信頼があれば組織が登録証を有しているという事実は、地域住民はこの組織の立地や操業を許し、消費者が製品やサービスを購入する際にこの組織を選び、投資家や金融機関は投資や融資先としてこの組織を有利に扱うことになるという状況をもたらすことが期待される。こうして、利害関係者の環境ニーズや期待に応えた組織はその努力が報いられて事業発展の機会を得、一方で組織の活動と製品が生む環境影響は着実に低減され、地球環境保全の道が開かれる。 ISO14001は、現世代の生活向上と地球環境の永続の両立を図る ”持続可能な発展” の駆動力であり、組織にとってコスト要因でしかない環境保全対策を利害関係者という存在を介して市場原理に組み込むことによって組織の利益要因に転化するという絶妙の地球環境保全の仕掛けの基礎をなす。
 
   組織の環境取り組みは自主的なものであるが、ISO14001適合を主張するなら、それは組織の果たすべき環境責任に見合うものでなければならず、見合うかどうかは諸利害関係者のニーズや期待を満たすかどうかで判断される。 ISO14001 4.2 a)項が、「環境方針は組織の活動、製品、サービスの性質と規模及び環境影響に照らして適切でなければならない」と規定しているのはこの意味である。 この4.2 a)項に対する適合はISO14001認証登録制度の信頼性の根幹であり、これへの不適合を許容してはISO14001はその存在意義を失するから、4.2 a)項は認証審査の最も重要な点である。
   
    ISO14001とその認証登録制度の精神に照らすと、組織の本来業務と遊離した“紙、ゴミ、電気”への取り組みがISO14001の登録証を得たとすれば、組織が登録証をかざす行為は利害関係者に対する欺瞞であり、地球市民として組織が果たすべき環境責任が見せかけだけという反社会的な行為ということにもなる。よりによって規格作成或いは審査機関の関係者もこのような認証登録が現行版では認められていると述べていることには驚きを禁じ得ない。
   
   日本ではISO9001にせよISO14001にせよその本質を顧みることも議論することもないままに、規格を登録証取得のための組織への要求として、翻訳規格たるJISの条文の日本語文言に基づいて、要求事項対応という形式重視の解釈が幅を利かせている。この風潮の中で論拠を示さない神様の御託宣式の解釈が組織の関係者に容易に鵜呑みにされることになり、ISO原文を隠したご都合主義の説明にさえ異議が唱えられる恐れもない。
 
   改定版が認証厳格化を意図したものと考える理由としては、4.1項に「適用範囲を定める」べきことが追加されたことや、4.3.1項の環境側面に関する記述が変更されたことが挙げられ、現行版で“紙、ゴミ、電気”の環境マネジメントシステムが認証されていたのは要求事項があいまいであったからと説明されているが、如何にもご都合主義の解釈である。その上 4.3.1項の変更の説明では実質的に誤訳の修正に過ぎないJIS和訳文の文言の変更であるという事実が伏せられている。この度の改定版発行についてISOは新聞発表しているが、そのどこを探しても認証厳格化に触れた記述は見当たらないが、これを含めてISOの公式見解と明らかに異なる認証厳格化論は、そんなものは誰も気がつかないと高を括っているのか、それとも解説者自身が読んでいないのか。
H16.11.20 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所