ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
25   登録証の取得は将来的にも取引継続の保証になるか?
 <62-01-25>
    ISO9001,14001が組織にとって重荷になり、役に立っていないという実態があからさまに語られることが次第に多くなっている。しかしこの実態がなぜ生れたかについては、組織が規格を活用する気は最初からなく、ただ顧客から取引継続の条件として認証取得を要求されて認証取得したまでであるからとする意見が大半である。この意見はまた、取引が継続できたのだからISO9001,14001の認証取得が組織の役に立っているのだとして、役立たないという組織の不満を否定する理由にも使われている。
   
   この意見は、なぜ顧客が組織にISO認証取得を要求したのかということに思考を巡らせていないという点で致命的な欠陥がある。確かに、登録取得を求めてきた顧客もその顧客からの要求でISO認証を取得し、そのシステムの一部としての供給者の管理のための認証取得要求であるというようなケースもあるようである。それでもこの場合も一番元の顧客には供給者に認証取得を求める理由があるはずである。
   
   ISO9001規格の制定のそもそもの狙いは、海外、国外の見知らぬ組織の製品を買う時の品質への不安をなくすることであり、登録証は顧客に製品品質が自らのニーズや期待を満たすものであるという安心感を保証する。また、ISO14001の登録証は組織が自らの活動、製品、サービスの環境影響にふさわしい環境保全責任を果たしているというお墨付きであり、諸利害関係者に組織とその製品を受け入れてよいというサインである。
   
   従って、ISO9001、ISO14001のいずれであれ、組織の親会社や顧客組織がその認証取得を求めてくるのは、その顧客や利害関係者が必要とし期待する親会社や顧客組織の製品品質或いは環境保全に対する必要ないし責任に、供給者たる組織の活動、製品、サービスが関わり合いを有しているからである。組織が供給する製品、サービスの品質或いは関係する環境保全取組みで起こした問題が親会社や顧客組織の活動、製品、サービスに影響し、従ってその顧客や利害関係者の品質、環境保全に関するニーズや期待に応えることができなくなる状況があるからである。
   
   供給者に品質、環境で問題を起こさせず、その不始末による不利益を被ることを避けるため、親会社や顧客組織は供給者たる組織の活動、製品、サービスを管理する必要がある。しかし、第二者監査などで供給者たる組織の活動の監督を強め、受入れ検査を強化しても、親会社や顧客組織には負担が増すばかりで供給者の引起こす問題の防止にはあまり効果がないことは経験上よく知られている。供給者たる組織にISO9001、ISO14001に従って業務を行わしめ、その実行の監視を第三者審査に委ねるという方法は、供給者たる組織に親会社や顧客組織のニーズや期待を自主的に考えさせ、かつ、それを自律的に実現させる、親会社や顧客組織にとって効果的で経済的な管理方法である。
   
   QS9000(ISO/TS16949)が米国自動車会社の日本の「系列」による管理を見習っての部品会社など供給者の管理を目的に作成されたように、ISO9001、ISO14001両規格とも本質的に供給者管理の道具である。すなわち、親会社や顧客組織が組織にISO9001,14001の登録証の取得を求めるのには、品質、環境保全に関して組織にニーズや期待を自主的、自律的に満たしめるという狙いがあり、単に登録証を取得することを求めているのではない。従って、登録証を取得して取引継続を確保しても、或いは新規顧客との取引機会を得たとしても、ISO9001、14001の形式的な取り組みを続けて品質トラブルを起こしたり、グリーン調達に抜けが出たり、親会社や顧客組織のニーズや期待を満たすことが出来なければ、登録証は維持してもいずれ親会社や顧客組織から排除されることになる。
   
   日本ではISO規格や審査登録制度の本質を顧みないで、規格要求事項をして登録証を得るための条件視した形式な取り組みが大手を振り、それを許容する解説がまかり通っている。この中で、認証取得の利益を実感できない組織が増えるのに対して、親会社や顧客組織の要求に応えて登録証を取得し取引継続ができ、新規参入機会を得たことが利益であるとする説までもが語られている。しかし、親会社や顧客組織が供給者たる組織にISO9001又はISO14001の認証取得を求めるには、それによる組織の業務改善と問題発生防止に対するニーズや期待があるからである。規格の論理と審査登録制度の趣旨に則ると、親会社や顧客組織に応えない組織は例え登録証を維持してもいずれ取引関係から排除されることになる。登録証を得ること即ち親会社や顧客組織の要求に応えることであるというようなことは理屈にならない。そればかりか親会社や顧客組織は登録証の効用への信頼を失い、規格や認証登録制度に頼らないで自ら供給者を管理することになる。すなわち、ISO9001、ISO14001規格と審査登録制度の崩壊が始まる。
H16.11.30 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所