ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
33   理屈の通らない必要理由の説明
      −(続)規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
 <62-01-33>
(1) パブリックコメント回答
    日本規格協会はそのISOコンサルタント登録事業(3)に関するパブリックコメントを締切って、そのまとめをウェブサイトに掲載している。ここでは22件の意見と回答が記載されているのであるが、登録制度と登録条件についての質問がそれぞれ3件、15件であり、制度創設に対する批判や疑問を呈する意見はわずかに4件しか採り上げられていない。世の中はこの制度に大賛成と言いたいのかもしれないが、筆者の知人の意見なども無視されているからお手盛りの意見集約かとも感じられる。
 
(2) 登録制度の必要理由
   ともあれ、この「パブリックコメントのまとめ」(1)で規格協会は登録制度を開始する理由について回答している。これによると制度創設の根拠は「管理システム規格適合性評価専門委員会報告書(H15.4.2)」にあるとのことである。因みにこの委員会は、ISOマネジメントシステム規格の認証取得の増大の一方で役に立たず重荷になっているとの導入組織の不満の高まりや導入組織の不祥事など、ISO規格認証制度への社会の不信を背景に設立されたものである。同報告書では、現状を「コンサルタントと審査の迎合を原因とする負の”スパイラル”」が回っている状態と断じ、審査とコンサルティング行為の分離を中心に、審査の質の向上、「コンサルテーションの質の向上」の必要が提起されている。
 
   規格協会は登録制度の必要性を主張するにおいて、この報告書の「コンサルテーションの質の向上」に関する「コンサルタントの選考及び起用にあたっての基本的考え方、選考にあたっての注意点などについて、普及啓発、広報活動が必要となる」という記述を引用している。そして、「標準化団体」としての責任上、コンサルタント選考の指針である「ISO10019の普及啓発、広報活動」を行う必要があり、この普及、広報活動を行うためにコンサルタント登録制度が必要であると、制度創設を理由づけている。
 
(3) 筋の通らない論理
   これは筋道の通らない論理である。報告書の「普及啓発、広報活動」というのは「コンサルタントの選考及び起用にあたっての基本的考え方、選考にあたっての注意点」について組織が理解しコンサルタント選考の際に参考にして組織自身が適切なコンサルタントを選択する能力を身につけるようにする活動である。しかし、登録制度は規格協会がISO10019を指針にしてコンサルタントを評価し、基準を満たすコンサルタントを公表して組織に推奨することが趣旨であるから、規格協会がコンサルタント選考の指針を組織に教えるのでなく、規格協会自らが組織に代わって指針を実行することに他ならない。これは「ISO10019の普及啓発、広報活動」ではなく、組織のISO10019の適用に関する「コンサルテーション」の範疇である。つまり、登録制度は目的と効果において啓発や広報とは正反対のものであり、報告書の問題認識に反するものである。規格協会は、普及啓発、広報活動が世の声であり、それを行うのが責任だと言いながら、それを実行しないで、それに反することをしようとしているのである。
   
   普及啓発、広報活動のために登録制度が必要というのも訳のわからない論理である。ISO10019の「普及啓発、広報」のためなら、コンサルタントを選ぼうとする組織にお得意の研修セミナーを提供するのが効果的である。然るに規格協会は登録条件としてのISO10019研修セミナーを傘下の研修機関に開設させながら、組織への普及啓発、広報活動としてはセミナーも何もやっていない。普及啓発、広報活動をやらないまま、「普及啓発、広報活動に伴い、"どこでQMSコンサルタントを探したら良いか" が問題となる」と先読みして登録制度が必要と言っているのだ。普及啓発、広報活動を進めると組織から登録制度への要望が出る可能性があると考えるなら、実際に要望が出てから手をつければよいことである。登録制度が今なくとも、普及啓発、広報活動を進める上では何の障害も生じないはずである。
 
(4) 私益
   ISO10019によるコンサルタント登録制度に反対してきた日本では、登録制度が社会的コストを増大させるという社会的不利益が広く認識されている(2)。この中で日本規格協会は、「ISO10019の普及啓発、広報」が自らの責任であり世間の期待に沿うものであるとの認識を根拠にコンサルタント登録制度を強行せんとしている。 然るに、「普及啓発、広報」に登録制度がなぜ必要かについては筋道の通らない、訳のわからない説明しか出来ていない。一方で肝心の「普及啓発、広報」活動を行っている形跡はない。大義名分が明確でない以上、登録制度に伴う規格協会自身の利益の方に世間の関心が寄せられるのは自然の成り行きである。
   
 
引用文献
(1) 日本規格協会 認証・登録センター:パブリックコメントのまとめ、                
                http://www.jsa.or.jp/crc/crc-pdf/public_comment.pdf,2005.7.28
(2) 阿久津 進(日本規格協会): ISOMS-2003.1,P.50-53
(3) 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
   
   
<規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか>
38. 反対しなければならない理由
(ISO機能不全の構造要因)−(その5) ISOコンサルタント登録制度
36. 必要理由が取替えられた訳は?
−(その4) ISOコンサルタント登録制度
35. 何を公平に ”評価” するのか
−(続々) ISOコンサルタント登録制度
33. 理屈の通らない必要理由の説明
−(続) ISOコンサルタント登録制度
32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか

H17.8.13(修 H17.11.5) 
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