ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
35   何を公平に ”評価” するのか
    −(続々)規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
 <62-01-35>
(1) 有識者から成る登録委員会
    「一定基準を満たす」コンサルタントを登録するという新制度に関して規格協会は、登録の「公平性」の確保のため「申請書類の評価」を「公益団体を中心に広く利害関係者」から成る登録委員会に委ねると説明している(1)。規格協会が意図したかどうかは別としてこの説明には登録の価値を権威づける種々の示唆を含んでいる。まず、「評価」するいうことで登録可否判定作業の意義深さを、そして、利害関係者たる「有識者による評価」ということで判定作業の専門性の高さを示唆し、「公平に評価する」で登録されたコンサルタントと非登録コンサルタントとに違いがあることを、また、「第三者による評価」により評価の公正さを示唆している。更に、規格協会外の人材による評価を謳うことにより委員報酬はじめ委員会維持費用を示唆して、高額との批判の強い登録料金の正当性を主張する意図があるようにも思える。
   
(2) 登録可否決定のための評価   
   この制度の「一定基準を満たす」コンサルタントになるには、「QMSコンサルタントの登録基準(2)」に定める14項目の条件を満たさなければならない。つまり登録基準として、@学歴、A3種類の職歴(判断を行える地位・管理的地位、品質実務、専門分野実務の各経験)、B6種類の知識(品質管理基礎知識及び5種類[ISO9000,9001,9004,19011,10019]の規格知識)、C個人的特質、D倫理的行動、Eコンサルタントとしての実績、及び、F関連規格又はガイダンス文書の知識、に関してそれぞれ条件が定められている。登録を希望するコンサルタントは、それがあれば各条件を満たしていると認めると登録基準に規定されている種類と内容の書類を提出する。すなわち、@学歴に関しては卒業証明書(1通)、A職歴に関しては職歴書(1通)、B知識に関しては研修修了証(計6通)、C個人的特質には業務上関係者の推薦書(計2通)、D倫理的行動には誓約書(1通)、Eコンサルティング実績については顧客による実績の証明としての推薦書(計3通)、Fの知識に関しては受講したセミナー名などを記した記録書(1通)が、それぞれの登録条件を満たすと認められる書類である。登録委員会は本人を試験も面接もせず、これら書類を「評価」することで登録可否を決定する。
 
   これら書類の内、@B以外は規格協会が書式を定めているから内容の適否という問題はなく、従って評価するといっても実際には記入漏れがあるかどうかの確認に過ぎない。Bの研修修了証の評価はその研修が規格協会認定の研修講座であることの確認であろうし、@の卒業証明書の評価はAの職歴書の学歴記載との一致の確認であろうから、これも事務的な作業である。 従って、もし登録委員が評価することがあるとすれば書類の真贋又は記述の真偽という問題であろう。CEの推薦書書式には「推薦者に問合わせするかもしれない」と偽の書類や嘘の内容を戒める記述が含まれているが、「自分は書かなかった」とか「嘘の推薦書を書いた」と問合わせに答える推薦者がいるとは考えられない。本人が書くA職歴書、D誓約書、F記録書の真偽の評価に関しても、身元調査や面接もしないで高々電話での照会だけで虚偽記述や書類の偽造を摘発することができるとは思われない。 各界の有能、有識の人々を集めて何を評価するのであろうか。
 
   書類の記入漏れの指摘以外に登録基準の定める条件を満たすかどうかの「評価」があるとして、それがこのように書類の真偽、真贋の摘発であるとするならば、これを提出された書類と問い合わせだけで行おうとすることはおよそ無理なことである。 従って評価作業は書類の記入漏れや記入ミスの指摘にとどまる可能性が高く、この職歴ではこの専門分野の経験とはみなすことができないとか、この職歴の記述では管理的地位の実務経験とはみなすことができないとかの表現上の整合性から書類の修正を求め或いは登録範囲を限定するなどがせいぜいであろう。いずれにせよ登録委員は、事務局が適切であるとして提出する15通の書類を眺めて「ああそうですか」というしかない。このような評価なら誰でも出来るから有識者を登録委員に招請するまでもない。
 
(3) 登録条件の例外 
   Bの知識に関しては、研修会の修了証がなくても講師経験、著作、論文発表があればよいと規定(3)されており、それらがコンサルタントに必要な知識の証明になるかどうかを登録委員会が評価することになっている。JAB(日本適合性認定協会)やJRCA(品質審査員評価登録センター)の講演会の講師を務め、専門誌に解説文を発表し、研修機関の講座の講師として活躍する著名な人々がコンサルタント登録することは、この登録制度の権威づけには必須である。このような著名人に改めて規格協会認定の研修会を受講することを求めることはできないから、こちらの登録条件はこのような人々が利用するのであろう。しかし登録委員は講演や研修会を傍聴するでもなく論文を読む訳でもないだろうから、何をもって知識水準を評価するのであろうか。規格協会はこの評価の手順や基準を明確にしないまま、有識者だから公平に評価できると言っている。その人の著名さや講演会や雑誌の格によって合否判定する結果になるのなら、こちらの場合の評価も有識者である必要はない。
   
(4) 制度に必要な公正さ
   規格協会は第三者による評価を持ち出して、登録が公正で意味のある合理的な「評価」に基づくと主張し、登録の意義深さを暗に訴えている。しかし、実際には書類審査で何を「評価」するのか、記入漏れや表現の不整合の指摘の他に登録委員がその見識と能力を発揮して「評価」するようなことがあるのかどうかわからないし、規格協会はこれを明確にしていない。この状況で第三者の有識者や評価の公平さを持ち出す規格協会の説明は、公的機関に期待される公正さが欠けている。
 
   ところで、雑誌の対談記事(4)で制度を普及させる方法を尋ねられて規格協会の阿久津氏は、登録委員を出している中小企業関係団体の勉強会、講演会を活用すると述べている。これは語るに落ちるということであろうか。「評価」のためというならなぜ有識者や委員会が必要かわからないが、登録制度の普及に資さしめるのが目的だというなら各界からの代表者から成る登録委員会設置の理由がよくわかるからである。委員報酬と引き換えに制度普及の促進に骨折りしてもらうということであろうか。委員会には審査登録機関協議会からの参加も求めるというから、システム構築を支援したのが登録コンサルタントか否かで登録審査工数を変えるというような制度普及策も規格協会は期待しているのかもしれない。
 
    規格協会の説明は筋が通らず、事実に率直でないという意味で公正さが欠如している。登録制度の意義を主張するのなら、評価の「公平さ」に対する説明が「公正」でなければならない。
   
 
引用文献 ( *印 及び海外文献は著者の和訳)
(1) 日本規格協会: パブリックコメントのまとめ、2005.07.28,
      http://www.jsa.or.jp/crc/crc-pdf/public_comment.pdf
(2) 日本規格協会: QMSコンサルタントの登録基準、CRC1301, 2005-08-01
(3) 日本規格協会: QMSコンサルタント登録のための手順、CRC2301, 初版
(4) アイソムズ: 2005.10月号、p.20-23; p.23
 
   
<規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか>
38. 反対しなければならない理由
(ISO機能不全の構造要因)−(その5) ISOコンサルタント登録制度
36. 必要理由が取替えられた訳は?
−(その4) ISOコンサルタント登録制度
35. 何を公平に ”評価” するのか
−(続々) ISOコンサルタント登録制度
33. 理屈の通らない必要理由の説明
−(続) ISOコンサルタント登録制度
32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか

H17.9.30(修正10.12, 11.5) 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所             〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909