ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
36   必要性の理由が取替えられた訳は?
    −(その4) 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
 <62-01-36>

(1) 登録制度の必要理由の変更
    日本規格協会が進めるISOコンサルタント登録制度について、その開始に際し募集した一般からの意見を集約した回答の中で、ISO10019が規定するコンサルタント選考の考え方と注意点の組織への普及啓発、広報活動のために制度が必要であると説明していた(1)。ところが最近、日本のISOの元締たる日本工業標準調査会の専門委員会が「コンサルテーションの質的向上のためにISO10019の制定に合わせたコンサルタント評価・登録制度の創設」を提唱をしたのでこれを受けたものであると説明を変えた(2)。制度が啓発、広報のためというなら研修講座やセミナーの方が適切だから如何にも苦しい理由説明だが、公式な提唱を受けての制度だというなら提唱の適否は別として制度創設自体には納得もいく。規格協会はこれで制度創設の大義名分が明らかになったとするのであろう。
 
   しかし、それなら公式の専門委員会の提唱に基づく制度創設だという説得力のある説明をなぜ最初からしなかったのであろうかという疑問が沸く。そもそも広報活動を理由に挙げる初めの説明も、新しい理由説明も同じH15年7月の「管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」(3)の記述を根拠としている。初めの説明は同報告書の第2章(マネジメントシステム規格の普及戦略)のひとつとしての「組織から見たコンサルテーション(2.4.2)」の項における提唱の引用であり、新しい説明は第3章(マネジメントシステム規格とこの認証制度の今後のあり方の「コンサルテーションの質的向上(3.3)」の項の提唱の引用である。規格協会が本当に後者の提唱をきっかけとして登録制度が検討し創設したのなら、目的意識は明確であるから間違っても前者を制度創設の根拠に挙げることはなかったはずである。少なくとも最初の説明の時点では後者の提唱の存在を認識していなかったと推察するのが自然であり、従って新しい理由には後智恵の感が免れない。
 
(2) パブリックコメント回答の変更 
   ところで、一般募集意見を協会が集約して疑問点を「パブリックコメントのまとめ」としてウェブサイトで回答している。これは初め7月28日付け(1)でウェブサイトに掲載され、規格協会は説明を終わったとして登録募集を開始した。ところが今日同じURLに見られるのは8月29日付け(4)である。標題も形式も全く同じで、内容では制度創設の理由の説明だけが元の「啓発・広報活動」から新しい「公式の提唱を受けて」に差替えられている。変更を知っている者からすると、一旦公表した説明の核心部分を変更しながら、その事実に触れずに知らない人にはあたかも初めからこうであったかの如く、再公表するという行為に、公表主体と公表内容への不信が増幅させられる。
 
   
(3) 新しい必要理由の正当性 
   一見もっともらしい新しい理由説明であるが、これの正当性についても検証の必要がありそうである。 確かに規格協会が主張するように、前記の報告書の3.3.1項には「ISO10019の制定に合わせたコンサルタント評価・公表制度の創設」の提唱がある。しかし、同報告書は引続きその3.6項で各提唱の実施と追跡についても提唱しており、巻末の図表に「第3章(各論)の当事者と実施時期の目安」としてまとめている。ここでは、コンサルタント評価・公表制度については、「審査登録機関、研修機関、審査員評価登録機関、認定機関、業界団体など」を当事者として「審査員評価登録実績のある機関を中心とした評価・登録システムの作成」作業を「H16年度着手又は実施」するべきことが記されて。同時に同報告書は日本工業標準調査会がこれらの「取組みの実施状況やその効果などを検証していくこと」を求めている。
 
   規格協会が コンサルタント登録制度創設の根拠をこの報告書の3.3.1項の提唱に求めるのなら、押し進めようとする登録制度が3.6項及び巻末図表の手順を踏み、承認されたものであることでなければならない。然るに、報告書の提案のような各機関、団体から成る制度作成の取組みがあったことが発表され或いは報道された例を知らないし、規格協会の説明もこれには何も触れていない。規格協会は登録制度の正当性を主張するならその制度が報告書に記述された諸手順を踏んだものであるという証拠を示すことが必要である。仮に登録制度を規格協会が独自に検討し創設したなら、報告書の提唱を都合よく利用しているだけである。 そのような説明は公正ではない。
 
(4) 背景の憶測
   
制度に対して形通りに一般からの意見を募ったところ思いがけない強い反対意見があり、制度創設を正当化する理由に迫られて前記の報告書から適当な部分、2.4.2項を見つけて引用したが、これへの異論に当面して改めて報告書を繰ったところもっと都合のよい部分、3.3.1項を見つけたものの、その続きの3.6項までは読まなかったいうような筋書きも想像できる。 規格協会が「一定の水準のコンサルタント」を選別する制度が必要と考える背景には、ISOコンサルタントとはこのような少し調べればわかるような都合よい説明ででも納得させられる程度の知性と判断力しか持ち合わせていないという偏見があるのかもしれない。
 
(5) 制度のごり押し

   当事者の組織とコンサルタントにとって何の利益も認められない登録制度であるのに、規格協会の制度の必要性、公益性に対する説明は変わってもいまだ正当なものになっていない。一方で登録を無視する者は条件を満たしていないとみなされることになり、登録しないコンサルタントは仕事を失う結果になる(5)という脅かしとも受け止められる発言が公にされるなど、反対意見を抹殺して制度が押し進められようとしている。
 
 
引用文献 ( *印 及び海外文献は著者の和訳 
(1) 日本規格協会: ウェブサイト、パブリックコメントまとめ、2005.07.28
(2) 阿久津進他: アイソムズ、2005.10月号、p.20-23; p.20
(3) 管理システム規格適合性評価専門委員会: 報告書(案)、H15.4.25
(4) 日本規格協会: ウェブサイト、パブリックコメントまとめ、2005.08.29
(5) 福丸典芳: アイソムズ、2005.10月号、p.16-19; p.17
 
   
<規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか>
38. 反対しなければならない理由
(ISO機能不全の構造要因)−(その5) ISOコンサルタント登録制度
36. 必要理由が取替えられた訳は?
−(その4) ISOコンサルタント登録制度
35. 何を公平に ”評価” するのか
−(続々) ISOコンサルタント登録制度
33. 理屈の通らない必要理由の説明
−(続) ISOコンサルタント登録制度
32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか

H17.10.31(修H17.11.5, 11.12)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所