ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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41   是正処置の効果の確認
   −実務を無視した規格解釈−
 <62-01-41>
1. 有効性の事後確認
   ISO9001の是正処置では「是正処置において実施した活動のレビュー」が規定(8.5.2 f)項)されており、大方の解説書はこれを事後に効果を確認することと説明している。多くの組織で規格のa)〜f)項の手順を書式に反映した「是正処置要求、実施報告書」などの標題の文書を用いて是正処置の実行を管理しているが、この最後の欄は「効果確認」の欄となっている。登録審査でこの欄が未記入のものを見つけても、組織の「もう少し時間が経過してから効果確認する」との言訳けを審査員も認める。ISO14001ではこの条項(4.5.3 e)項)は「とられた是正処置の有効性をレビューする」であるから、事後の効果確認という解釈が何の疑問もなく採り入れられている。

 
2. 是正処置の有効性
(1) 再発防止対策の意義
   ところで是正処置とは、起きてしまった不都合な問題を再発させないためにとる処置であり、組織の実務では一般に再発防止対策と呼ばれる処置のことである。是正処置は、問題で生じた損失を再び被ることが事業活動の健全な維持のために、許されない或いは著しく不都合であると判断される問題を二度と、特に、続けて二度起こさないためにとる処置である。例えば、重大クレームの再発は顧客との取引の停止も免れないし、環境法規制違反事故を繰返せば操業停止の行政処分もあり得るし、生産停止をもたらした重大事故の再発は組織の命取りにもなる。
 
(2) 有効性の事前確認
   是正処置にはコストが付随するから、是正処置を「不適合のもつ影響」「問題の大きさ及び生じた環境影響」に見合う(8.5.2/4.5.3項)程度のものとするのは組織の実務の常識である。しかし、再発すればまずいのであれば、再発防止を図る目的でとった処置が有効なものかどうかを、対策実施後しばらく経って実際に問題が再発したかどうを見直して判断するというようなことは、実務ではあり得ない。例えば、起こしたクレームの再発防止対策をとったが、その有効性は顧客で問題が再発するかどうかで判断するというようなクレーム対策報告を顧客が認める訳がない。実際、とった処置の有効性を、次の製品、サービスの引渡しの前に自ら確認するということは実務では当然のこととして行われている。これは他の問題でも同じであり、処置の有効なことを確認して初めて手順を改定しその正式の実行を開始するのである。
 
(3) とった処置の結果の記録
規格ではこのことを、「とった処置の結果の記録」「とられた是正処置の結果を記録する」として規定(8.5.2 e)/4.5.3 d)項)している。すなわち規格は、どのような処置をいつ誰がとったかの「とった処置の記録」ではなく、その結果がどうであったかの「とった処置の結果の記録」を残すことが必要であるとしている。有効性の確認は、製品、サービス或いはプロセスの通常の監視測定(8.2.4,8.2.3/4.5.1項)の手順で行う他、特別な試験、検査、計測、観察、或いは、実験室や計算機によるシミュレーションなど種々の適切な方法により行われる。これによって対策処置の有効性を確認して再発の防止を確実なものとし、これを記録することにより事後に何らかの問題が生じた際に効果的に対応できるというのが、規格の規定の意図である。
 
 
3. 是正処置の見直し
(1) 是正処置のPDCAサイクル

   ISO9001/ISO14001両規格はすべての活動にPDCAサイクルを適用することを原則としており、是正処置をとるという活動も例外ではない。規格は、有効性の確証を得て実施した是正処置であってもやりっ放しではなく、その実施状況と実際の結果を監視測定する必要を規定している。これが「レビュー」の規定(8.5.2 f)/4.5.3 e)項)であり、是正処置のPDCAサイクルのC、Aに相当する行為である。JIS9001ではこの項は「是正処置において実施した活動のレビュー」と和訳され、「“是正処置において実施した活動”とはa)〜f)の一連の活動のことである」とJIS独自の註釈があるため、規格の意図を却ってあいまいなものとしている。ISO9001の英原文は reviewing corrective action takenであるから、単純に「とられた是正処置を見直す」という意味である。
 
(2) 是正処置の見直し
実施した是正処置を見直すというのは、是正処置をとってしばらく時間の経過した後に、改定された手順が引続き実行されているか、或いは、その後の製品、サービスが狙い通りの評価を顧客から受けているか等々を、ある時期に改めて調査検討することである。是正処置は一般に再発の確実な防止を意図するため過剰な処置となることが多いし、対策処置が生産性やコスト或いは他の品質や環境影響の発生に予期しない又は予想以上の悪影響をもたらしている可能性もある。例えばあるクレームが再発しているかどうかをこの調査で初めて知るというのは管理不在という他になく、そのような見直しは是正処置のPDCAのCには値しない。「是正処置のレビュー」の意図する見直しは、再発防止の有効性(effectiveness)をこれらの観点、つまり、適当(adequacy)か、適切(suitability)かを含めて改めて吟味することと理解するべきである。
 
(3) レビュー(review)
   規格では名詞形の「レビュー(review)」は、「ある事項がその狙いの達成に適切か、適当か、有効かを判定する活動*」と定義(ISO9000 3.8.7項)されている。動詞形には定義がないので、review の一般的な意味である「再び見る」から来る「顧みる、過去を振り返る」、つまり、「見直す」と解される。名詞形と動詞形の違いは「見直し」の観点が明示されているかどうかであるから、ISO9001の8.5.2 f)項の「レビュー」を名詞形に明示される観点を含ませて解釈すればよい。ISO14001の4.5.3 e)項では「有効性をレビューする」と明記はされているが、「適切」「適当」でなくとも再発防止さえ出来ればよいというのは組織に存立と繁栄の道を指し示すという規格の性格から考えて規格の意図でないことは確かである。海外の規格作成者の解説(1)も「有効性のレビュー」としてしか説明していないが、当人の意識にあるかないかを問わず、事業活動の実務では適切、適当であっての有効性であるから、これら解説を単純な「有効性」に限定して理解しなければならないことはない。規格は組織の効果的なマネジメントに資するように解釈しなければならず、日本初め世界の成功企業で行われてきた実務に照らして理解しなければならない。
   
   
4. 実務を無視した規格解釈
   ISO9001/ISO14001両規格は規格作成者の創造物ではない。規格は世界の成功企業の体験たる業務方法をシステムの要素として取り込み(2)、体系化したものであり、組織の効果的な実務の在り方を requirement (JISでは「要求事項」)として規定している。ところが日本では翻訳文であるJIS条文の日本語を基に、実務との関連を無視して“規格の要求”としての種々の解釈が発表されている。取引や操業、事業の健全な維持発展が出来るかどうかを意に介しない“是正処置の効果確認”という解釈もこの典型である。この有無を言わせぬ「規格の要求」的解釈が、組織の大半が規格導入の効果を実感出来ないでいる現状の源であると思う。
 
   
引用文献( *印及び英語文献は筆者の和訳)
(1) C.A.Cianfrani他: ISO9001:2000 Explained, ASQ Quality Press,2001;p.192
(2) ISO中央事務局:ISO9001/14000謎解きの旅,基本,汎用的マネジメントシステム規格
H18.2.28 
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