ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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42   日米で食い違うISO14001:2004 改訂の背景説明
−どちらが本当か?
 <62-01-42>
1. 要求事項条文の変更の説明
   ISO14001の2004年版の改訂条文に関する日米両国国内委員会の説明が肝心な点で食い違っている。 規格4.3.1項の環境側面に関する例の条文であるが、JIS和訳では旧版の「組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面」から「組織が管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる環境側面」に変更になった。
   
2. 日本国内委員会の説明
  日本の国内委員会はこの変更について、旧版の条文では「管理できる側面の中の、影響を及ぼすことができる側面」という誤解(1)を生じ易かったことを正したと背景を説明している。そして、実際に米国やカナダは国としてそのように捉えていた(2)し、この条文変更に米国とカナダが環境側面の範囲が無限に拡大するとして強硬に反対(3)し、その「組織が特定した」の文言挿入の提案が否定された結果4.1項に「組織はどのようにこれら要求事項を満たすかを決定する」を挿入することで妥協したとのことである。
 
3. 米国国内委員会の説明
  一方、米国の国内委員会(U.S. TAG)は最近、その”意図の明確化”活動の状況を発表(4)しているが、そこで本条文の変更に関して、「環境側面の決定に組織外の誰かの見解の考慮が必要」と誤解されかねなかったためであり、「決定するのが組織であること」を明確にするのが新条文の意図であると説明している。考えるに、この誤解は「影響力を及ぼすこと」を組織(it)が、 it can be expected to…(期待され得る)という英語にあり、これをすっきりと it can…(できる)と変更したということであろう。 この説明では、米国で日本の国内委員会の指摘する誤解をしていたとは言ってないし、条文変更に反対したとも言っていない。
 
4. 英語条文とJIS和訳
   ところで、この条文の原英語は、旧版では
the environmental aspects that it can control and over which it can be expected to have an influence
であり、新版は
the environmental aspects that it can control and those that it can influence
であるから、後段の can be expected が can になったことが英語の意味上の唯一の変化である。
 
   旧版のJISは条文中の and を「かつ」と和訳し、have an influence に「影響が生じる」という奇妙な日本語を当てたため、条文解釈に議論百出した。その後解釈委員会報告(5)として、条文の日本語がなぜそのように読めるのかの説明もないまま、「管理出来る側面と影響力を行使できると判断される範囲の側面」と結論づけ、今度は「管理でき、かつ、影響を及ぼすことができる」と読むことが出来ると説明している。
 
5. 条文解釈の誤解
   旧版の英語を素直に読めば「管理できる」と「影響力を及ぼす」の2種類の環境側面であることになる。日本の国内委員会が懸念する誤解はJIS和訳の日本文、とりわけ、「かつ」に原因があるのであって、英語圏でそのような誤解が生まれるとは思えない。実際、U.S. TAGが1997年から続けている”意図の明確化”活動の回答でも本項に関しては、次のように2種類の環境側面であることを明確にしている。すなわち、
4.3.1項の環境側面特定の要求事項は、「(environmental aspects of) its activities,...services over which it has influence and control (組織が影響力を持つ、及び、管理できる活動・・・の環境側面)」に適用され、「both elements must be presented (両方の環境側面が明確にされていなければならない)」と記している (6)。

  他方、U.S.TAGの懸念するような誤解は日本にはなく、これが議論されたことも知らない。 しかし、can be expected という英語表現上あり得る解釈であるから、英語圏でそのように誤解されるというU.S.TAGの懸念は否定できない。
 
6. 改訂作業の真実
   TC207の改訂作業議論でU.S. TAG代表がどちらの誤解を提起し、どの修正に反対したのか、密室の議論である以上は検証することはできない。日本の国内委員会の説明には国を代表して主張を規格に採用させることを役割とする意識が垣間見られる。U.S. TAGにも同様の意識があるのかもしれない。どちらも自分に不都合なことは国内では言いたくないから、この条文変更の国内向け説明には双方の想いが込められ、従って両国で説明が異なってしまうことはあり得ないことではない。しかし規格解釈をも左右するような問題に関して、なぜもこんなに異なる事実説明があり得るのかの疑問は解消しない。自己の正当化のため、意識的に事実と異なる説明があるとすれば、規格使用者の利益を代表する国内委員会の委員としての資質が問われることになる。両国の国内委員会の説明が公正で倫理に則るものであることを信じたい。
   
   
引用文献( *印及び英語文献は筆者の和訳)
(1) 寺田 博:”96年版からの移行ポイント”,アイソムズ,2003.12号, p.32-36; p.34
(2) 寺内 博: “第1次改訂の内容”,ISOレポート,JIA-QAセンター,p.5
(3) 寺田 博: “改訂の趣旨及び対応課題”,産業環境協会,2005.12; p.7
(4) S.L.K.Briggs: “Clarifying the Intent”,Quality Progress,Feb.2006,P.76-77
(5) 吉澤 正: ISO14001解釈委員会報告,2004.4.28; p.1
(6 U.S.SubTAG1: “Clarifying the Intent Q&A”, 99-03.A3,ASQウェブサイト
2006.4.4 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所