ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
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45   登録組織の不祥事と業界の対応
   −審査登録制度の信頼性を毀損−
 <62-01-45>
1.審査登録制度
(1) 審査登録制度の意義
   ISO9001,14001両規格は、事実上審査登録制度と共に運用されている。規格は品質又は環境の面で組織の事業を発展させるマネジメントの在り方を規定したものであるが、組織が利害関係者のニーズと期待を満たすことを組織発展の基本とする原理に基づく。すなわち、組織が品質又は環境に関して利害関係者のニーズと期待を満たした場合に初めて、利害関係者から製品の購入、立地許容、操業許可、融資や投資など組織の発展に不可欠な支援を得ることができる。組織がこのような努力を行っていることは利害関係者にはわからないから、組織は公正な第三者たる審査登録機関の審査を受け、その努力が規格に適合するとの証明の登録証を得て利害関係者にかざし、支援を訴える。ISO9001,14001規格に則る努力をすることで組織は事業発展という利益を手にすることができるが、加うるにその努力の証の登録証を掲げることによって、初めての商取引の顧客など見知らぬ利害関係者にも信頼感を抱かせ、それら利害関係者からの利益を拡大できる(1)のである。これが審査登録制度の意義である。
 
(2) 審査登録制度の発展
   組織が登録証取得を望むのは、登録証によって当該の及び潜在の利害関係者の組織と製品・サービスへの信頼を得ることができ、取引上その他の事業発展のための支援、便宜、利益を得ることができるからである。より多くの組織が登録証を取得する、つまり、ISO9001,14001の普及のためには、当事者の登録証に関する認知と登録証の信頼性が極めて大切である。とりわけ、審査登録業界がその顧客層を事業者間取引の組織から一般消費者へ製品・サービスを提供する組織へと拡大を望むなら、規格と審査登録制度に対する広く社会の認知と信頼の醸成が不可欠である。
   
   最近、ISOが発表した英国における消費者のISO9001の認知と登録証への信頼に関する調査結果では、知っているのは26%で、この大半は仕事を通じて知ったことをうかがわせており、また、登録証を購入の基準とする人は10%であるから、英国でもISO9001の一般社会への浸透はまだまだという状況である。

   
2.登録組織の不祥事
(1) パロマ工業製の瞬間湯沸器
   近年、登録取得組織による不祥事が少なからず報道されている。折しも、パロマ工業製の瞬間湯沸器に係わる深刻な品質事故が新聞等を賑わせている。不完全燃焼とりわけガス中毒事故の防止はこの製品の品質の最も基本的要件であると考えられるから、報道される同社の問題処理は如何にもお粗末で、品質保証の観点でも妥当性に欠ける。ところが、JAB(日本適合性認定協会)の適合組織リストによると同社は、ガス温水機器など4種の製品の設計・開発及び製造に関して2002年1月にISO9001適合の登録証の発行を受けている。登録証は個々の製品の品質を保証するものではないが、顧客のニーズであり期待である品質不良防止を図る効果的マネジメントの実行の保証である。だとすれば登録証が、この事件のように死亡事故を何件も発生させるというような事態はないということ位の安心感を保証するものと利害関係者が期待してもおかしくない。
 
(2) 日本の消費者マスメディの報道
   これまでの事件の報道には同社のISO9001登録取得に触れたものがないため、幸いにも事件が消費者を含む社会一般の登録証や審査登録制度への信頼に打撃を与えることにはなっていない。しかし、マスメディアが登録証に触れないのが、マスメディアが代表する社会一般にはISO9001に対する認知も登録証への信頼も存在しないという現実の反映であるとすると、報道されないことは審査登録制度にとっては幸いどころか憂慮すべきことである。
 
   
3.不祥事への審査登録業界の対応
(1) JAB(日本適合性認定協会)の対応
   JABは今年初めの耐震偽装マンションの販売が疑われた潟qューザーのISO9001登録取得の事実が報道されたのをきっかけに、意図的な法規制違反を審査で知り得た場合に関する審査員の義務を定めた通達を出した(2)。しかし通達が、対象を意図的な法規制違反に、しかもISO9001審査に限定しているなど、内実に乏しい見せかけの対応に過ぎない。
 
(2) 審査登録機関の対応
   一方、当事者の審査登録機関は不祥事が明らかになった場合には、組織の登録を一時停止にして組織に再発防止対策を要求し、この結果を是と判断した後に登録を復活するという対応をとるのが通例である。審査でなぜ発見できなかったか、審査は妥当であったかなど審査登録機関の責任についての見解が発表されたことはない。代わりに「少ない工数で最低ラインのマネジメントシステムの存在と有効性を保証しているだけで、事件、事故が発生しないことを保証しているわけではない」というような主張(3)が雑誌に載る。
 
(3) 審査登録制度の有効性
   この度の湯沸器の事故に関しては、パロマ工業のISO9001マネジメントシステムを審査し登録証を発行した審査登録機関JIA-QAセンターさえ未だ何の釈明もせず、登録一時停止の処置さえとっていない。登録範囲を注意して読むと、”株式会社パロマ向けガス温水機器・・・”となっており、且つ、販売後の修理などアフターサービスへの規格適用を除外するものとなっている。従って、報道される事故は、顧客たる潟pロマが販売した製品に係わる問題であって、顧客にアフターサービスなしで製品を売り切る場合の品質保証を対象とするパロマ工業のISO9001マネジメントシステムの与り知らぬ問題であると整理ができる。今回、JABや審査登録機関が沈黙を通す理由かもしれない。

 
4.まとめ
   JABも含めて、審査登録制度の顧客は受審組織でなく、受審組織の顧客つまり取引先や消費者を含む社会一般であると標榜しているが、消費者や社会一般が不祥事の相次ぐ発生に困惑し、審査登録制度の有効性に疑いを強めることに対して、審査登録制度への信頼性を繋ぎ止めようとしているようには見えない。
 
   今日日本の登録証の圧倒的多数は国内の事業者間取引に使用されており、その有効性ないし限界に関する割切りが関係者に存在しているから、不祥事により直ちに登録件数が減少することはない。しかし不祥事の報道は、認知さえ未だしの消費者はじめ一般社会にとっては審査登録制度への疑念と不信を育む機会をもたらす。例え不祥事の発生が審査登録制度の枠を越えるものであるとの審査登録業界の主張や対応に合理性があるとしても、不祥事を起こす組織にも登録証が発行されるという事実は、消費者はじめ一般社会がISOマネジメントシステムの審査登録制度の有効性と登録証の信頼性を強めることにはならない。
 
   問題の根底には、システムを機能させることを否定する規格理解と要求事項解釈、これらに基づく形式重視の審査と審査合格の形式を整えるシステム構築作業という日本のISOマネジメントシステム取組みがある。不祥事はこのような取組みによるシステムの機能不全の結果であり、現にシステムが組織の発展の役に立っていない証拠である。確かな未来は、不祥事が後を絶つことなく、社会一般の登録証への信頼は向上せず、審査登録制度の普及は足踏みすることである。
 
引用文献( *印及び英語文献は筆者の和訳)
(1) ISO中央事務局:ISO and Conformity assessment, http://www.iso.ch
(2) JAB: JAB Notice No.05, 2006.2.10
(3) 土屋慶三:アイソムズ, 2006.1月号, p.43
H18.8.14 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所