ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
58   競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出    <62-01-58>
1. 登録件数推移と認証機関数
   ISO9001,14001の登録件数が伸び悩みの様相を示して数年になる。JAB統計でISO9001の四半期毎の新規登録が減少に転じたのが2005年1/4期だが、2007年1/4期からはマイナス成長となり、総登録件数は2006年4/4期をピークに減少を続けている。ISO14001も同じ頃から新規登録の減少が始まり、直近の3/4期の総登録件数の増加は0.7%にまで下がった。当然、審査登録機関(JAB方針で“認証機関”と呼ぶことになった)の業績に影響があり、合併や廃業による淘汰が始まっている。例えば、JABの認定する認証機関は12月1日現在でISO9001が52機関、ISO14001が44機関であるが、認定番号にはそれぞれ11件、6件の欠落があるからこの分の認証機関が淘汰されたことになる。
 
   しかしこの情勢の中で、海外の認定機関の認定を受けただけでJAB認定を受けないで日本で活動する認証機関が増加している。筆者が調査した限りではこれら認証機関は、ISO9001で21機関、ISO14001でも21機関もあるから、JAB認定以外にその40〜50%に相当する数の認証機関が存在していることになる。登録件数も概算推定でそれぞれ6,500件、1,500件もあり、JAB傘下の認証機関の合計がそれぞれ43,000件、21,000件と推定されるから、その15%と7%に相当する件数である。これら認証機関の多くの日本での活動開始が近年であることも踏まえると、日本の登録件数がJAB統計ほどには衰えていないこと、また、それでも飽和しつつある市場にJAB統計の1.5倍もの多数の認証機関がしのぎを削って既存登録を含めて登録組織を奪い合う状況であることが推察できる。
 
 
2.適合性評価事業の特質
  適合性評価という事業は元々競争の余地が小さい。その製品である登録証は規格適合の証明であるから、どの認証機関が発行する登録証も価値は同じである。その上にISO9001、14001の認証制度では認証機関の活動に関する国際的基準があり、通常各国にある認定機関、日本ではJAB(日本適合性認定協会)、が認証機関の活動を監視し、登録証発行活動と登録証の価値を一定のものとする枠組みが確立している。更に、各国の認定機関はIAFなる団体を結成し、その下での多国間相互承認協定を結ぶことで認定機関の活動の国際的整合を図り、以てどの国の登録証も世界で同じ価値が認められるという仕組みになっている。認証機関はその事業活動にも登録証の価値にも差をつけようがないのである。
 
 
3.非JAB系認証機関の活動の特徴
  JAB認定下にない認証機関はほとんどが外資系でその母国の認定機関の認定を受けている。ウェブサイトではほぼ一様にその国際的活動と実績を強調し、日本企業の輸出先の認定機関の認定を受けていることを強調するものもある。しかしこれは両刃の剣であり、国内だけの企業に対しては逆に弱みとなる。非JABの認証機関がJAB認定を取得する動きが見られるのはこのためかもしれない。一方、登録証は組織の不祥事発生の防止を図るものでないなど日本独特の規格解釈や審査活動に関してはウェブサイトでも格別言及しておらず、筆者の数少ない経験で判断する限りはJAB傘下の認証機関と変わることはない。非JAB認証機関の審査もJAB枠組みの下の日本人審査員によって行われるのであるから当然といえるから、登録証の価値或いは信頼性という点でも非JAB認証機関に格別の競争力がある訳ではない。競争力があるとすれば、JAB傘下の認証機関が受審組織をその活動を監視し規制する対象と位置づけているのに対して、受審組織を顧客とみなす認証機関としての方針や政策にあると思われる。例えば多くの非JAB認証機関は、JABが事実上禁じている本審査前に組織の要請で行う予備審査を実施し、その他にも受審組織の負荷への配慮が滲む施策が強調されている。この線上かどうか、ウェブサイトで低価格を掲げる認証機関も少なくない。筆者もこれまでの常識を一変させられる水準を一度ばかりか体験させられた。
 
   
4.価格競争
   製品品質の差別化が本質的に困難な認証事業の世界では、市場が狭まり顧客の奪い合いになると価格勝負が一番手っとり早い。米国では既に登録証は一般取引商品となったと嘆かれるまでに価格競争に陥り、IAF枠組みの認定を受けないで活動する認証機関や、英米の認定機関UKAS、ANABの認定を偽装する認証機関まで出ており、格安料金を売物とする認証機関による安易な登録証発行が登録証への信頼低下を招いているなど、混乱する状況が各種報道に垣間見ることができる。
 
   とりわけ、組織も顧客も登録証に価値を必要とせず、期待せず、登録証の取得と維持が組織の唯一の関心事であることが大半である日本の状況では、安価で手間を要せずに発行される登録証は殊更、魅力的である。非JAB認証機関の筆頭のM社はこの11月にISO14001についてJAB認定を取得したが、「審査費用の低廉化、顧客の納得の審査料金」を掲げる一方で、2009年末での業界一のシェア獲得を宣言している。この目論見が実現すると、登録件数で15,000件、全登録の20%強の認証機関となる訳であり、その価格政策が認証市場全体に強い影響を及ぼすことは必至である。
 
 
5.まとめ
   日本では登録証の信頼性の議論は、引き続く登録取得組織の品質、環境の事故や不祥事に加えて、激化する低料金審査競争の中に埋没し、やがて忘れられることになるかもしれない。一方で、認証機関の激しい競争で登録取得のハードルが下がって、登録取得が小規模組織に拡がり、やがて認証制度は登録証で社長室の壁を飾ることを目的とするものとなっていくのかもしれない。制度の趣旨からは登録証は、組織が顧客や利害関係者のニーズや期待に間違いなく応えるという安心感を保証するものでなければならない。これへの信頼が失墜している今日であるからとりわけ、そのような登録証を発行できるかどうかが認証機関の競争力となり得る。そしてそれなら、安売り競争で身を削ることにもならないと思うのだが、どうであろうか。
H19.12.5 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所