ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
74       ISO14001認証大国の京都議定書未達の不思議  <62-01-74>
  日本のISO14001認証登録件数は2007年に中国に追い越されるまでは、2位以下の欧米諸国をはるかに引き離して世界一であった。JAB統計では今年3月末現在のISO14001認証登録件数はJAB,非JAB認定を合わせて約23,500件であり、中国は別格であるから、世界におけるISO14001認証大国としての日本の位置づけは今日も変わっていないと思われる。今日、市場にはエコと銘打った製品が溢れ、エコ新技術やそれを活用したエコビジネスが花盛りである。この状況がISO14001認証取得企業の活動と日々に目に入るISO14001認証の標識に触発されて社会の人々が高めてきた環境意識に負うものであるとすると、なるほどISO14001認証大国だけはあるといえる。
 
  ところで、ISO14001規格の誕生が1992年の地球サミットを契機とし、産業界の要請に基づきISOが策定したことは広く知られている。この地球サミットによって、地球規模での環境破壊の実状と地球環境保全の取組みの緊急性がはじめて世界の共通認識となった。ここで確立した地球環境保全の理念が持続可能な発展を可能にする社会の実現を図ることである。ISO14001は、このための産業界の地球環境保全取組みの道しるべとして作成された。ISO14001を道しるべとして採用するかどうかは、企業など各事業組織の自由である。しかし、ISO14001を採用することを決めた組織は、組織に起因する環境影響を地球環境保全の観点から捉え、社会の必要を満たす程度にその環境影響の低減を図らなければならない。環境影響の低減には一般に経済的負担を伴うが、組織は耐え得る経済的損失の範囲内で社会の必要を満たす環境影響低減の努力をしなければならない。この努力をしていることの証明がISO14001認証制度の枠組み下に認証機関が発行する登録証である。
 
  この地球環境保全の努力は今日の情勢ではとりわけ、緊要の課題である温暖化ガス排出削減に優先的に向けられなければならない。今日の社会では、環境と言えば公害ではなく地球環境問題であり、地球環境保全とは温暖化ガス排出削減であることが常識である。様々なエコ製品やエコビジネスの繁栄は、例えば再生材料の使用を謳うものでも最終的には温暖化ガス排出削減につながるとの顧客や社会の期待が背景にある。 社会や人々がISO14001認証取得組織に好感を抱き、製品を購入するのは、説明される省エネルギー活動や廃棄物減量活動、或いは、提供されるエコ製品を受け入れることが、自身の温暖化ガス排出削減責任を果たすことに繋がると考えるからである。
 
  しかし、日本ではISO14001の規定する環境マネジメントシステムとは現場中心の環境影響改善運動であると見做されている。2004年版を口実に認証業界から“本来業務と一体化した活動”であるべきとの軌道修正が唱えられもしたが、大半の組織においては投資不要の“紙・ゴミ・電気”の低減に焦点が当てられた、環境改善に名を借りて自身の些細な利益を追求する運動に留まっている。エコ製品は、組織が製品に付随する環境影響の低減責任を果たすものであるが、日本のISO14001取組みでは組織の善意の努力に基づく有益な環境影響をもつ製品である。日本のISO14001取組みには、地球環境という視点、組織の地球環境保全責任という視点、或いは、収益と両立しない経営上の取組みという視点などISO14001の原点が一貫して欠落している。日本では認証業界が、このようなISO14001取組みを是とし、推奨し、このような組織に登録証を発行している。これがISO14001認証取得大国の実態である。
 
  麻生首相は6月10日に記者会見して京都議定書以降の中期温暖化ガス排出削減目標を2005年比で15%とすると発表した。これは2005年での温暖化ガス排出を1990年比で7%の増加とする前提に立っており、京都議定書の1990年比6%削減という目標が達成できないということを公式に認めたものである。これによって、登録件数が多いだけで、中味のないISO14001取組みとまやかしの登録証の実態がはしなくも炙り出されることとなった。 汚染たれ流しの公害大国中国がISO14001認証件数で世界一になったことに対して、日本の認証業界は認証取得組織の無節操さや認証機関の倫理感、或いは、登録証の価値への軽蔑と冷笑を以て応えた。しかし、日本の登録証もISO14001と認証制度の目的や社会の期待に適ったものであるかどうかという点では、中国で発行されている登録証とあまり変わりはないのである。目くそが鼻くそを笑っているだけだ。
 
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