ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
77       縮みゆくISO9001/14001認証バブル
           −認証業界よもやま話−
 <62-01-77>
  JAB*1の統計によると頭打ち傾向が続いていたISO14001の登録件数が6〜9月期で2期連続の減少となり、どうやらこの1〜3月期をピークに減少に転じたらしい。ISO9001の登録件数は既に2006年の10〜12月期をピークに減少を続けており、この6〜9月期の登録件数はピークから3,597件、率で8%の減少である。この統計外のJAB認定を受けていない認証機関の登録件数は、両規格共になお増加し続けている。しかし、その伸びにも翳りが見え、往年の勢いは消えた。結果として、JAB発表の非JAB登録件数をJAB統計に加えた総登録件数で見ても、両規格とも減少している。すなわちISO9001の07年6月末と今年6月末とを比べると、非JAB登録件数が1,539件(32%)の増加だが総登録件数は1,195件(2%)の減少である。ISO14001の今年3月末と6月末とでは非JABが161件(2%)増なのに総登録件数は42件の減である。
 
  ISOの毎年年末の登録件数調査でもISO9001は英国では04年末がピークであり、米国、独国でも06年末をピークとして減少に転じたようだ。英国では07年末で既にピーク時の70%にまで減少しているが、ピーク時の登録件数の50,884件が異常であった。ISO9001認証制度は、サッチャー政権の英国産業の品質競争力強化の政策としてのBS5750認証制度が起源であるが、この政策の単純な延長としての意味のない多数の登録が英国の登録件数を膨らませていたということが推察される。登録件数の激減はバブルの崩壊と見做される。英国のISO14001登録件数は07年末でも7,323件であり、まだ少しずつ伸び続けており、数字上は中味のある登録とみなすことができる。
 
  雑誌アイソスの記事*2によると日本のISO9001登録件数の消長は建設業界の登録の急増と急減の影響を強く受けている。認証事業は、組織が登録証を取得することにより一定の利益を得ることができることから成り立っている。建設業の登録件数の放物線を裏返した形の推移は、入札での優遇処置という今や幻の登録利益に踊らされた結果の反映である。ピーク時の43,564件ものJAB統計のISO9001登録件数は15,000件もの入札優遇幻想バブルを含んだものであり、このバブルは今日までにJAB統計の減少総件数に匹敵する3,600件も縮んでいる。ISO9001認証制度は元々欧米の産業界が日本並の品質競争力を訴えることが目的であったのに、その日本が先進国ダントツの登録件数であるのは、欧州輸出に必要という恐怖幻想に踊らされたバブルの要素が濃厚である。大企業の中からこれに気づき登録を返上するところが現れればこのバブルが一挙に崩壊する可能性がある。
 
  ISO14001の登録件数も日本では世界的に異常な多さである。地球環境に微々たる影響しか持たない多くの組織が、エコブームに踊らされて内向きのお金をかけない環境改善運動として登録を取得しており、今日では改善が種切れになり、認証機関がなんとか理屈をつけて新しい改善の観点を持ち込んで智恵を絞るという形でこのエコ自称バブルを必死に持ち堪えさせている。登録の価値のないことに気づいた地方自治体は続々と登録を返上しており、JAB統計では04年のピーク時の514件が09年9月末で274件に減少している。 この税金無駄遣いバブルはさらに急速に消滅に向かうだろう。しかし、今のご時世では消費者を相手にする組織はエコのイメージを捨てるようなことはできないし、実質的に取引条件として登録取得している下請け型企業も多数を占めるから、全体としてのバブルは中味が益々薄くなっても維持はされるだろう。
 
  審査員の登録制度ではバブルがはじけ始めている。JRCA*3統計のISO9001審査員登録者は09年1月でピークの08年4月の86%に減り、CEAR*2統計のISO14001審査員登録者は09年10月でピーク時の06年10月の76%にまで落ち込んでいる。この登録者数も必要でない人が登録しているというバブルである。例えばCEAR統計によるとISO14001審査員登録者の内の認証機関所属者は18%、無職が13%で、コンサルタントが23%、一般企業の社員が約50%である。実際に審査業務に携わっているのは認証機関所属者と無職に区分される契約審査員だけである。無職とコンサルタントの多くは00年前後に定年退職と共に参入してきた人々であるから、需要の減少と高齢化で引退し資格を放棄する人が増え、また、一般企業の社員が何の役にも立たない資格の定期更新をしないですますことが益々増すことも間違いない。
 
  研修や出版物に関する統計はないが、苦戦していることは間違いない。ウェブサイトの閲覧も激減している。著者が著名3サイトを調査した結果では、07年秋と今秋では3ケ月間の閲覧カウンターの動きはそれぞれ、65、70、54%も少ない。著者の分析では、ISOはどんなものかとの関心やコンサルタント探しのためのウェブサイト検索は激減し、規格解釈や審査での指摘への疑問に関する情報を求めるサイト検索はそんなに減っていない。研修や出版物もウェブサイトも組織の初めての登録取得に付随する知識需要というバブルに依存してきた訳であり、登録が行き渡った今日で本当に規格を勉強しようとする少数の人々を相手にするしかなくなった。
 
  日本のISO9001/14001認証関連業界のこれまでの盛況は多分に バブル のなせるところであった。認証制度への深い理解もないままに、我も我もと組織が飛びつき、人々が群がり、関連需要がつくり出されてきた。今日、業界のあちこちで、様々なバブルが収縮し始め、破裂の可能性をはらんだ状態にもある。バブルに依存してきた業界では既に深刻な打撃を蒙っている分野、機関もある。登録件数の頭打ちや減少傾向を不祥事頻発による認証制度の信頼低下を原因と懸念する声もあるが、著者の分析ではそうではなさそうである。いずれにせよ認証関連業界は、登録証で受ける利益に見合って組織が支払う費用によって成り立つ事業としての生き残りを追求しなければならない時代に入りつつある。縮小する業容に合わせて一緒に小さくなり社会に忘れられていくのか、認証という製品の価値を高めて市場を拡大して社会になくてはならない産業になるのか、別れ道にさしかかっている。
 
註釈
*1: 日本適合性認定協会
*2: 環境マネジメントシステム審査員評価登録センター
*3: マネジメントシステム審査員評価登録センター
*4: ISOを斬る、寺部哲央、アイソスNo.143、2009年10月号、p.62、
*5: 本メルマガ 2007(H19).12.1号
H21.11.9 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所