ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
79           迷走を続ける有効性審査論議    
              (2) 何の有効性を審査するのか
 <62-01-79>
   何の有効性を審査するのかは有効性審査議論の前提である。この2年半の有効性審査論議を追って、有効性審査で評価する有効性が何の有効性であるかに関する見解をまとめた。
 
@ マネジメントシステムの有効性*1
  有効性審査を持ち出したH19.4月のJAB見解は、それまでの審査は「規格要求事項への適合、不適合の確認」であったとし、それでは不十分であって「MSがシステムとして有効に機能している」かどうかを判断する「MSの有効性の審査」が必要であるとしている。これが「有効性審査」の出発点である。この根拠に同見解は、ISO/IEC17021規格*6の序文のマネジメントシステムの認証の意義に関する記述を、「MSの有効性の審査に係わる考え方、並びに、要求事項」であるとして引用している。それは、認証審査はマネジメントシステムが次の条件を満たすことを実証することだという記述である。
 a) 規定要求事項に適合している。
 b) 明示した方針及び目標を一貫して達成できる。
 c) 有効に実施されている。

  明言されてはいないが、これまでの審査が序文a)項のみの審査で、b),c)項を含めた審査が「MSの有効性の審査」であるというのがJABの主張なのであろう。そしてこの「MSの有効性」という言葉は、恐らくはc) 項の「有効に」を援用したものであろうが、その有効性審査のことを、b),c)項を繋ぎあわせて「明示した方針、目標に向けてMSが有効に実施され、一貫して達成できるかどうかを審査すること」と定義している。有効性審査で判断するのはマネジメントシステムの有効性であり、マネジメントシステムの有効性とはJAB文書の表現では「明示した方針、目標に向けてMSが有効に実施され、一貫して達成できる」「マネジメントシステムが有効に機能している」ことである。
 
A 規格の有効性*2
  この年7月の経産省の信頼性回復ガイドラインでは有効性審査の徹底が必要となった。ガイドライン文書には、この有効性審査とは「規格適合性だけでなく、規格がシステムとして有効に機能しているかどうか」を判断する審査であると明記されている。この記述を文字通りに受け取れば、ガイドラインの有効性審査の有効性とは規格の有効性である。ただし、ガイドラインの有効性審査は@のJAB見解の丸写しであるから、この表現は単に筆が滑った結果であると考えられる。
 
B マネジメントシステムの有効性*3
  11月のJACBの有効性審査検討の報告書は有効性審査を「QMSの有効性を調べる審査」と「その審査の有効性」との両面で取り上げて、ISO/IEC17021の序文に基づいて検討している。そして、それまでの審査を組織のマネジメントシステムのように「実体を軽視した適合性審査は形だけの審査」であり、本当の審査とは言えないとしている。そして、@と同じc) 項を援用しながら、適合性審査は「マネジメントシステムの目的に適切な有効性を含めるものである」と、@とは違って適合性審査と対比される独立した有効性審査を否定する結論を導いている。それでも、序文a),b),c)項が「マネジメントシステムの有効性について有効に適合性審査を実施するための中心的な原則を記述する」ものであるとしているから、マネジメントシステムの有効性を審査するという概念は否定していない。
 
C 作られたQMSに誤りがない*4
  今年の3月のテーマ「審査を変える」のJAB討論会では、これまでの審査は「差異(不適合)を指摘する審査」であり、有効性審査とは「作られたQMSに誤りがあることを指摘する」審査であるとしている。これではQMSの有効性とは「誤りがある」かどうかであるということになる。しかし一方では、「本来規格適合性を見ることはQMSの有効性をも見るはず」との表現で有効性審査が適合性審査に含まれるというBと同じ見解も出されている。この表現からは、マネジメントシステムの有効性を見る審査が必要であると言っていることになる。
 
D マネジメントシステムの有効性*5
  今年8月の経産省ガイドライン対応委員会報告では有効性審査とは「明示した方針、目標に向けてマネジメントシステムが有効に実施され、一貫して達成できるかどうか」を審査することだと、@のJAB見解の文面をそのまま踏襲している。この報告では何の有効性を審査するのかを明言していないが、@と同じだとすれば、有効性は「マネジメントシステムが有効に実施され、その方針、目標が達成できる」という点での、マネジメントシステムの有効性を指していると理解される。
 
  有効性審査では何の有効性を審査するのか、これをはっきりとそれとわかるような形で記述されている発表、報告は稀であり、少なくとも自分の言葉で表されてはいない。引用した発表、報告から、何の有効性かという見解を読み取ることは簡単ではなく、文章を読み込んでその部分を抜き取り、推定するしかないが、ともかくも、上記のようにまとめた。これで判断する限り、有効性審査を否定する見解を含みどの見解も、従来の審査がマネジメントシステムという「仕組み」の適合性だけであり、「マネジメント システムの実行」による「マネジメント システムの目的の実現」又は「マネジメントシステムの方針、目標の達成」という観点でのマネジメント システムの有効性を審査することが必要であるとしているものと理解される。ただし、有効性審査の徹底を唱えるAのガイドライン文書でさえ何の有効性かを説明するのに「規格の有効性」と読める程の安易な表現がとられ、何の有効性を審査するのかがはっきりしない発表、報告が多い。底の浅い有効性審査議論の中での「マネジメントシステムの有効性」という一致した見解であるように思える。
 
註釈  
*1 JAB: マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方、2007.4.1
*2 経産省: マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン、H20.7.29
*3 JACB: 社会に価値のある有効なQMSの審査のために、2008.11.5
*4 JAB: 第15回JAB ISO9001公開討論会資料、2009.3.16
*5 MS信頼性ガイドライン対応委員会: 報告書、2009.8.18
*6 ISO/IEC17021規格: 適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行なう機関に対する要求事項
 
JAB: 日本適合性認定協会<BR>
JACB: 審査登録機関協議会<BR>
JRCA: マネジメントシステム審査員評価登録センター
H21.12.18 
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