ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
80       迷走を続ける有効性審査論議
      (3) 有効性審査の監査基準、判断基準は何か
 <62-01-80>
  JAB*1の統計審査又は監査は、監査証拠を監査基準に照らして客観的に評価して、満たされている程度を判定する活動*8である。規格の規定は要求事項と呼ばれるが、効果的なマネジメントシステムとしての要件を表している。適合性審査ではこの規格の規定のひとつひとつが監査基準であり、組織の業務とその実行が規格の規定のひとつひとつを満たしているかどうかを判断する。すなわち、適合かどうかの二者択一が判断基準である。それでは有効性審査では、有効性を判断するための監査基準は何か、有効かどうかの判断基準は何か、これを明らかにしないと有効性審査なるものを実際に行なうことができない。この第3報では有効性審査では「マネジメントシステムの有効性」を判断するために具体的に何を調査し、評価し、判断するのか、或いは、監査基準は何で判断基準は何かに関連した、発表、報告におけるそれぞれの見解をまとめた。
 
@ システムのパフォーマンスが向上しているかどうかで判断する*1
  有効性審査という概念を持ち出したH19.4月のJAB見解「マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方」の中では、マネジメントシステムが「有効に機能している」かどうかが マネジメントシステムの有効性であるとして、これは「期待する目標に向かってシステムのパフォーマンス(アウトプット、指標又は結果)が向上しているかどうか」で判断する必要があると述べている。しかし、どのようなパフォーマンスのどのような向上が、マネジメントシステムが「有効に機能している」ことになるのかについては、何も述べられていない。
 
A アウトプットを考慮しながら仕組みを見る*2
  @のJAB見解に関連して雑誌アイソス同年9月号対談記事でJAB専務理事は、それまでの審査は「規格要求事項との適合だけを見て、システムのアウトプットを見ていない」のが問題であり、「アウトプットがどうなっているかを考慮しながら仕組みを見る」のが本来の審査であると述べている。これが、マネジメントシステムの有効性は「仕組み」で判断され、その判断にパフォーマンスを考慮するという主張だとすれば、有効性に対するパフォーマンスの位置づけが@と異なる。パフォーマンスとは何か、これをどのように考慮して仕組みの有効性判断に反映するのか、仕組みで有効性を判断する基準は何かについては何も語られていない。
 
B パフォーマンスが向上しているかどうかで判断する*3
  翌H20年7月の経産省の信頼性回復ガイドラインでは、認証機関に有効性審査の徹底を求めるものであるが、マネジメントシステムの有効性は「パフォーマンスが向上しているかどうかで判断する」と、上記@のJAB見解をそのまま引用している。監査基準や判断基準への言及はない。
 
C 規格適合性、方針・目標達成能力、製品の適合性の3つの事項を評価する*4
  11月のJACBの有効性審査検討報告書では、有効性審査は適合性審査に含まれるとした上で、「有効な適合性審査」とは、「マネジメントシステムが規格に適合しているか」「組織のマネジメントがそれを実行して達成する能力があるか」「製品の品質が顧客要求事項や法令規制要求事項を実際に達成しているか」の3つの事項を、「形式的」ではなく評価することだとしている。これはISO/IEC17021序文のa),b),c)の記述の言葉を変えたものである。これに引き続き、「もし不適合な観察が見られた」ならそれが「マネジメントの能力不足のためではないか、システムの問題に由来していないのか」を冷静に評価する姿勢が大切とも述べられている。適合性審査の適合、不適合の判断をした後に、その結果を用いてマネジメントの能力不足やシステムの問題がないかどうかを評価するということのようだが、それ以上の具体性はない。
 
D “結果”又は“実施された程度(パフォーマンス)”が目標又は結果を生み出しているかどうかを評価する*5
  今年の3月のJAB討論会では、「本来規格適合性を見ることはQMSの有効性をも見るはず」との表現で有効性審査が適合性審査に含まれるという見解の下に、有効性審査は「アウトプットに着目」しなければならず、マネジメントシステムの有効性は「“結果”又は“実施された程度(パフォーマンス)”が目標又は結果を生み出しているかどうか」で判定するとしている。
これはISO/IEC17021序文のc) 項の意図を説明した記述であり、ISO9000の「有効性」の定義の反芻であり、@の表現を少し変えただけである。監査基準にも判断基準にも言及されていない。
 
E 規格適合性、方針・目標の一貫した達成、所期の結果の実現の3つの視点で審査する*6
  今年8月の経産省ガイドライン対応委員会報告では有効性審査とは「明示した方針、目標に向けてマネジメントシステムが有効に実施され、一貫して達成できるかどうか」を審査することだとし、有効性審査の視点として「マネジメントシステムが組織に合った形で構築され、規格に適合しているか」「方針、目標を一貫して達成できているか」「期待されている結果が実現されているか」の3つを挙げている。CがISO/IEC17021序文を引用して取り上げた3つの審査事項を審査の視点として少し違った表現で言い表したに過ぎない。
 
  以上のいずれの見解も、有効性審査を行なうとして最も大切なことであるはずの監査基準と判断基準は何も示していない。適合性審査と異なるという以上は、規格の規定以外の監査基準、或いは、適合かどうかではない判断基準が出てくることが期待されたが、いずれの議論も、有効性審査とは○○を評価することだというだけで、監査基準や判断基準については議論した形跡さえない。○○を評価することだというのも、ISO/IEC17021の序文a),b),c)の文面をそれぞれに言い変えただけであり、@以上の内容はない。有効性審査を実際に行なうということに関する有効性論議は、何を評価するのかの抽象論を同じことをどう言葉を変えて表現するかだけに腐心するばかりで、本当は必要な監査基準や判断基準については何の実質的な議論も行ってこなかったと考えるしかない。審査と言いながら監査基準や判断基準が明らかでない有効性審査は絵に描いた餅である。有効性審査を実際に行なうということに関しては2年半前から何も明瞭にならず、何も具体的になっていない。
 
 
引用文献
*1 JAB: マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方、2007.4.1
*2アイソス No.118, September 2007, p.72-75, 組織のアウトプットを見ながら仕組みを問う審査を
*3 経産省: マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン、H20.7.29
*4 JACB: 社会に価値のある有効なQMSの審査のために、2008.11.5
*5 JAB: 第15回JAB ISO9001公開討論会資料、2009.3.16
*6 JACB: MS信頼性ガイドライン対応委員会報告書、2009.8.18
*7 ISO/IEC17021規格: 適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行なう機関に対する要求事項
*8 ISO9000: 3.9.1監査
 
註釈
JAB: 日本適合性認定協会<BR>
JACB: 審査登録機関協議会<BR>
JRCA: マネジメントシステム審査員評価登録センター
H21.12.26 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所             〒458-0031 名古屋市緑区旭出2−909