ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
84       迷走を続ける有効性審査論議
           (5) 審査現場混乱が必至の権威主義的決着
 <62-01-84>
  同じようで違うようでもある見解が様々に出され、議論がぐるぐる廻っているだけに見えた有効性審査論議は、まだこれからまとめの作業が進められると思っていたが、昨秋のガイドライン対応委員会の見解で決着していたようである。しかし、この見解が最終結論であり、今後の認証審査を拘束するとするなら、社会の認証制度への信頼回復などあり得ないばかりか、認証審査の現場で受審組織にいらぬ負担や迷惑がかかることになる可能性が強い。
 
  第一に、最終報告書*1は、内容も論理も矛盾に満ち、徹底しなければならないとされる有効性審査なるものの狙いも効果も、方法論も何ひとつ明確でない。
すなわち、有効性審査とは何かの最終見解は次の通りであり、
@ 有効性審査と適合性審査は本来、切り離して扱われるものではない。マネジメントシステムが規格の要求事項に適合しているということは、有効に機能していることでもある。
A 従って、マネジメントシステムの適合性の評価では、マネジメントシステムの有効性を確認しなければならない。
B システムの有効性とは、「構築された仕組みによって期待される結果を出すことができる状態にある」かどうかである。
 
  ここに@は、マネジメントシステム規格の適合性評価制度の枠組みと狙いに照らして誠に正しい見解である。WG4報告会では更に踏み込んで、「適合性審査と有効性審査を別のもの」という考え方は間違いであり、「適合性審査の中に有効性審査も包含される」と歯切れがよい。つまり、適合性審査ではない有効性審査などというものは存在しないということである。適合性評価制度ではシステムの有効性を適合性審査で評価するのであり、有効性と適合性とは次元の異なる問題である。有効性審査というものは適合性評価の論理からはあり得ない代物である。しかし、これがわかったというのなら、有効性審査論議の切っ掛けとなった3年前のJABの、審査は「規格要求事項への適合、不適合の確認だけでは不十分」であり「マネジメントシステムの有効性を審査することが必要である」と言う見解*2は間違っていたことになり、この2年半の業界挙げての有効性審査論議は壮大な無駄であったことになる。
 
  更に、@で適合性審査は有効性審査を含むと言うのだから、適合性審査をやればよいと言うのかと思ったら、Aでは、だから有効性審査をしなければならないと言う。それなら、@は適合性審査と有効性審査とは別物と言い換えなければ日本語にはならない。WG4報告会のQ&A*3では、「今まで(適合性審査)と同じ」ということかそれとも「期待される結果が実現できるように運用されているかを評価する」という(別の)ことかという質問には「両方を意味している」と答えている。Bでは後者がシステムの有効性であるから、適合性審査もやり、後者の評価もやるというのなら、やはり後者の有効性審査は適合性審査とは別物ということになる。適合性審査と有効性審査は同じだが違うと言っている。
 
  Bも正しい。これはISO/IEC共同コミュニケ*4での表現と同じであることからもわかるように、規格で有効性とは「計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度」である*5から、システムの有効性を定義するとこのような表現になる。何も2年半の間の議論を経て到達したというような見解ではない。問題は、この「期待される結果」と社会が問題視する事故や不祥事の防止と同じなのか、違うのかということである。不祥事と有効性審査の関係を問うWG4報告会のQ&A*3の質問に対しては「仕組みがあってもそれが有効に機能していないことを認証審査で見つけられなかったために不祥事を防止することができなかったのではないかという問題意識から経産省ガイドラインができたと考える」と官僚の国会答弁である。有効性審査の狙いが不祥事の防止とは明言されていない。
 
  第二に、この報告書のどこを読んでも、それまでの数々の有効性審査論議の様々な見解を参照し、比較して考察した跡が見られない。発端の3年前のJAB見解との関係にさえ頬被りである。見解は論理がなく、社会の信頼回復との関係も不明である。何事も権威者の都合のよい上意下達で済む業界の通例とも言える権威主義的決着である。報告書には見解の妥当性の説明もない。世間では、判断に絶対的権限を持つ裁判官ですら判決理由を説明するのにである。認証審査に携わる人々の多くが、納得も理解もしていないことは、WG4報告会のQ&Aを見ても窺える。
 
  審査関係者にも受審組織にも社会にも何のことかわからない有効性審査とやらが、今後の認証審査では徹底されることになるのである。認証機関も権威に服従し、わかった振りをして有効性審査とやらを目指すのであろうが、そんなことで審査を意味なくややこしくして受審組織にかける迷惑など頭になさそうだ。受審組織には権威主義者に変身するのだ。
 
   
*1: MS信頼性ガイドライン対応委員会報告書、2009.8.18
*2: JAB: マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方、2007.4.1
*3: MS信頼性ガイドライン対応委員会WG4報告会 Q&A、2009.12.18
*4: IAF: Joint IAF-ISO Communiques、July 2009
*5: ISO9000, 3.2.14
H22.3.9 
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