ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
94       登録証の継続した有効性の確保
       制度の責任そして震災被災組織の支援
 <62-01-94>
1. 登録証の意義
   一連のISOマネジメント システム規格の登録証は、規格の対象のそれぞれの分野で登録組織が顧客や利害関係者、社会の必要や期待に応え、に損害や迷惑をかけることのない信頼できる組織であることの証明である。すなわち、例えば、ISO9001登録取得組織には不良を出さず顧客の必要や期待を満たす製品をどんな状況でも提供することが期待でき、ISO14001登録取得組織には社会の緊要な必要や期待を満たすように地球環境保全に取り組むことが期待できる。これは、それぞれの規格が、そのような組織であるための経営管理の活動の在り方を規定しているからである。それぞれの対象事項に係わる効果的な経営管理活動の必要条件である規格のいわゆる要求事項を満たして組織が事業を行うならば、そのような顧客や社会が期待する業績を挙げることができる。認証機関が、組織の経営管理に係わる業務の実態を審査して、それぞれの規格のすべての必要条件を満たしていること、つまり、規格適合性を確認し、それぞれの経営管理の分野で顧客や社会の必要や期待に応え、或いは、反することを起こす可能性がないと判断した結果で登録証が発行される。
 
2. 登録証の継続した有効性
  一度発行された登録証は永遠に有効というのではない。登録証が組織は信頼できると保証するのは3年間だけであり、それも毎年の定期審査で規格適合性を確認するという条件つきである。これは、組織の事業環境や経営管理活動の必要というものが常に変化するからであり、組織の経営管理活動の実態、つまり規格用語ではそれぞれのマネジメント システムが変化する可能性があるからである。このような世の常たる、特に今日の競争社会における激しい変化に対応する組織が、変化の中を一貫して規格適合性を維持することを図るのが、認証制度の定める定期審査、更新審査である。
 
3. 震災による有効性の危機
  東北大震災によって多くの被災組織、及び、被災組織と取引関係にある組織の事業活動は大きな影響を被っている。事業所そのものを流失し、業務機能の著しい損傷によるなど、事業停止に追い込まれた組織も少なくない。この中で事業活動を継続し、または中断の後に再開した組織の多くでは、震災前と異なる業務方法で事業活動が行われている。規格用語では、それぞれのマネジメント システムは震災により大きく影響を受け、システムとしての一貫性が維持されているとしても、震災前とは大きく異なるマネジメント システムの下で業務が行われている。被災組織と社会に対する認証制度の責任は、この混乱と変化の中でも発行済の登録証が有効であることを確実にすることである。認証制度は組織にあり得る変化を想定して、これによっても組織の規格適合性が影響されないように更新、定期審査を制度化しているのであるが、被災組織と関連する組織には震災によりこれより確実に、これより大きな変化が生じている。登録証の継続した有効性のために更新、定期審査が必要という論理からは、認証機関は今日速やかに被災組織と関連する組織のマネジメント システムの実態がどのようになっているのか審査を行うことが必要である。
 
4. 認証業界の危機対応
  しかしながらJABとJIPDECの震災対応は「災害の被害の甚大さ、また不可抗力であること」を考慮して、審査時期や審査規模に手加減を加えるというものであり、混乱の中の登録証の有効性の確保という視点が全くない。ISOマネジメント システム規格に係わる認証制度の商業化は世界的傾向であり、登録証の価値への社会の不満への対応より登録取得組織の数の拡大の方が優先され勝ちである。それでも東北大震災に対する米英の適合性認定機関の対応は、非常時の登録証の有効性の維持に焦点が当てられているという点で、JAB/JIPDECとは異なって、認証制度の元締めとしての責任に則った正当なものと言える。
 
  すなわち、米国の適合性認定機関ANABは3/22にJABの対応処置の連絡を受けたとして「認証されたマネジメント システムが受けた影響に関する審査及び必要な評価が行われるならば」との条件付きでJABの処置を容認している。同時にANABがこのような非常時の際の認証機関の行動基準を定めており、日本で活動する傘下の認証機関の震災対応に参照することを求めている。この基準では、認証機関は組織のマネジメント システムがどの程度の影響を受けたかを調べること、システムの継続した有効性を確実にするために定常審査と代わる暫定的な審査方法を検討することが含まれている。英国の適合性認定機関UKASが3/30に出した通達は、発行済登録証の有効性維持に関してもっと直接的である。これによると日本で活動するUKAS傘下の認証機関は、まず「組織が震災で受けた影響の程度を認証要件に則って事業活動を継続する能力に関して調査し、その状況下で認証を維持できるかどうか」判断し、これを4/30までにUKASに報告しなければならない。そして、事業活動が再開した場合は直ちに適合性評価の審査を行わなければならない。更に、これに至るまでの期間中でも認証機関は、電話での事情聴取、インターネット利用の文書審査などの方法で監視を怠ってはならない。
 
5. 登録証への信頼回復機会の逸失
  JABは認証制度の目的を、組織が問題を起こすことの防止でなく、問題を起こした組織に是正処置をとらせることとしているから、被災組織が混乱の中で規格適合性に支障を生じ、顧客や社会の必要や期待に反する問題を起こすかもしれないという発想にはならない。JABの認証制度運営は、社会に代わって悪徳組織を取り締まることが狙いであり、社会に受け入れられて発展しようと努力する優良組織に信用を付加するという発想はない。英米と日本の適合性認定機関のこのような震災対応の考え方の違いのために、被災組織の認証機関が米英系かJAB傘下かによって実際の復旧の円滑さやその過程での問題発生に違いが生じるかどうかはわからない。元々登録証への信頼の落ちた日本の社会では、問題があっても非常時だからと認証制度の信頼性が話題になるとも考えられない。しかし事実は、認証機関が組織の業務実行を審査することや、認証制度の登録証がこんなにも意味があり、有用なものであるということを、批判的で関心を失った社会に訴える絶好の機会を失したということである。JAB/JIPDECの震災対応方針では、審査を受けられない被災組織の登録証は期限切れで失効する。この期限切れ失効による登録組織数の減少が一時的であり、近年引続く減少傾向を加速させることにはならないであろうことを願うしかない。
H23.5.23 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所