ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
97 認証業界、天気晴朗のようでも波高し −認証バブル崩壊真っ只中
−日本認証業界 よもやま話−
 <62-01-97>
1.はじめに
  ISO9001、14001の認証登録件数の減少が続いている。JABがウェブサイトに掲載する統計によると、登録総件数のピークはISO9001が2006年10-12月期、ISO14001が2009年1-3月期である。39に分類される産業分野で見てもISO14001の建設業を除くすべてで総登録件数が減少に転じている。それでも減少率で見た場合は、ISO9001、14001のそれぞれが年率で3.5%、1.4%程度であり、JABが登録総件数の変化を四半期毎の推移グラフに表した四半期グラフを見ても両規格とも右下がりの勾配は緩やかである。先に予測した認証バブルの崩壊(1)は当面起きる気配は感じられない。しかし、この統計は認証業界に生じている異変を反映していない。
 
2. 登録放棄
JAB統計を解析すると新規登録期間別の登録件数を知ることができる。これを含めた解析によると、ISO9001では、2009年4‐6月期を基準にとり、本年4‐6月期までの2年間のJAB四半期グラフの総登録件数の減少は1年で1,700件(4%)であるが、これは登録放棄 4,200件(11%)が新規登録 2,500件(7%)で補われた結果である。ISO14001についても同様に、総登録件数の減少が600件(1.5%)で、登録放棄が1700件(8%)、新規登録が 1,400件(6.5%)ある。すなわち、1年で10%もの組織が登録証を放棄している。これを新規登録で補った結果がJAB四半期グラフの緩やかな減少曲線なのである。
 
  この状況は産業別でも変わらない。ISO9001では総登録件数の60%を占める5産業でみても登録放棄と新規登録は、建設が13%と6.5%、金属・加工が8%と7.5%、電気・光学が9.5%と5.5%、機械・装置が7.5%と6.5%、ゴム・プラスチックが8%と6%である。ISO14001の総登録件数の55%を占める6産業でみた登録放棄と新規登録は、金属・加工が5%と6.5%、卸・小売・修理が10%と6%、建設が9%と18.5%、電気・光学が9%と5.5%、ゴム・プラスチックが6%と5%、機械・装置が7%と6%である。建設は新規登録が異様に多く、金属・加工も新規登録が登録放棄を上回ったため総登録件数が増加しているが、他分野も含めて登録放棄は5〜10%に昇る。特にISO9001の総登録件数の減少の主体は建設業と言われていきたが、登録放棄は両規格とも各全産業分野で起きている。
 
  なお、JAB傘下の認証機関が減り続けているのに対して非JAB系認証機関は、この2年間にも総登録件数を増やしている。すなわち、ISO9001では1年当たり900件、ISO14001では1,100件の増加である。この増加数はISO9001では年々落ち、ISO14001も頭打ち傾向である。そして、ISO9001の総登録件数はJABと非JABの両方を合わせても2007年を基準年とする統計で減り続けている。ISO14001の場合は合計では微増である。そして、JAB系の登録放棄件数と非JAB系の登録増加件数とは大きな開きがある。これらのことから、JAB系の登録放棄がそのまま非JAB系への登録替えを意味するものではないことは確かである。
 
3. 認識バブルの崩壊
  つまり、10年続くと総登録件数がゼロになるという登録放棄の異常な多さは、認証制度への深い理解もないままに、誤った情報に踊らされ虚構にあおられて、本質的に不必要な組織までが我も我もと飛びついたことによる認証バブル(2)が今、正に崩壊中であることを物語る。このような中でも、バブル崩壊を統計上で隠すのに十分な数の新規登録組織が存在する。ほぼ例年のJABの認証取得組織に対するアンケート調査(2)では複数回答ではあるが、認証取得目的に顧客の要求、参入条件拡大、業界動向考慮など顧客の維持に係わるものを挙げる回答は、品質/環境の改善、管理体制の確立、社員意識改革など内的効用を挙げる回答の半分である。後者は規格の狙いの品質保証/環境保全の実現のための必要条件として規格が規定しているが、今日の規格解釈と審査の有り様では実際に達成できるものではない。登録放棄組織と、このような規格の趣旨と異なる誤った想いで認証取得に走った組織とは重なるところが大きいと推察される。そして、回答のこのような傾向は03年から最新の09年でも変わっていないから、最近の新規登録組織にも将来の泡の素が同じように混じっていると考えられる。
 
  JABの縦軸の目盛りを調節し、横軸を歴年ではなく認証制度開始からの経年に置き換えて作成されたISO9001と14001の四半期グラフはほとんどピッタリと重なる(3)。この場合の増加曲線の勾配が減少に転ずる変曲点は制度開始から9年目当たりにあり、登録件数のピークは13年目である。このことから、登録証の2回目の更新時に登録放棄が始まるものと推定される。過去2年の新規登録件数は既に上り坂の時代の1/2から1/3に減少している。新規登録は市場が飽和に向う今後も減り続けることは間違いない。今後のJABの四半期グラフの形は、古いバブルが破裂し尽くし、新しいバブルがはじけ出し、新規登録が減り、非JAB系への登録替えが進むという4つの要因が絡み合って決まる。いずれ右下がり勾配が急になることは避けられないだろうが、いつになるのか認証機関では情勢分析と推定をしていることだろう。
 
4. JABの問題認識
  JABの先のアンケート調査報告書(2)には、ISO9001が役立っているかどうかの質問もあり、回答は、大いに、ある程度、を合わせて、約50%(03年)、50%(04年)、55%(05年)であった。回答では半数の組織が役に立っていないと効用に不満を表明しているのにJABは「機能しているという回答が半数を超えている」と肯定的に評価してきた。登録放棄が増加して総登録件数が頭打ちからピークに達した07年調査ではこの数値が75%となり、「QMSに対して有効に機能している組織の割合が増えた」と分析している。そしてこれを最後にこの質問をやめてしまった。この質問で知りたかったはずのISO9001認証の価値に対する組織の評価を、登録放棄の急増という形で事実として知った以上、さすがのJABもこんな質問をし、回答を評価することが憚れるからに違いない。それでも問題を隠して、穏便な四半期グラフを公表し続けているから、やはりJABは制度の継続に関心がないと考えるのが自然である。
 
5. 役に立たないマネジメントシステム
  ところで、登録放棄した組織でISO規格適合のマネジメントシステムがどうなっているかの情報はない。しかし、ほとんどの登録放棄組織が、ISO事務局もろとも、それまでの審査の対象だった業務をなくしてしまうのではないかというのが業界関係者の大方の見方である。組織の業務の中心は、所定の期間収益を挙げるために、受注し、製品実現し、顧客に引渡し、代金を回収する業務を行い、また、所定の結果を出すよう様々な管理を行うことである。組織が審査対象だったすべてを捨て又はお蔵入りさせることができるのは、そうしても組織の業務の実行やその結果の業績が全く影響を受けないというからに違いない。これは、ISOマネジメントシステムと称して、組織の日常業務とは別建ての、認証取得にだけ必要な一連の業務とその形や書類を作り上げ、それに関して認証機関が審査して、それに登録証を発行しているという日本の実態をそのまま写している。

6. おわりに 
  日本の認証業界では、ISO9001,14001の認証バブルの崩壊真っ只中にある。認証機関は、苦労して新規顧客を獲得してもそれ以上の既存顧客が去っていき、新規顧客にも将来のバブルが含まれているという、賽の河原で石を積むかの状況にあり、さらに、新規顧客が減りいく中で非JAB系認証機関に顧客を着実に奪われている。組織の不祥事にもISO認証との関係に触れられることがなくなり、認証機関の頭上から信頼性危機の雨雲が去り、様々な信頼性回復施策で彩られた青空が拡がっているようにみえる。しかし、足元は大荒れで波高しである。そしてJABの救援は期待できそうにない。この状況で認証機関が生き残りの道を探すのなら、組織があっさり捨て去っても何も困らないことに対して、適合とか不適合とかの評価をし、組織に注文をつけることで生計を立てているという現実を認識することから始めなければならない。
 
(1) 縮みゆくISO9001/14001認証バブル−認証業界よもやま話(4)−、H21.11.9
(2) JAB:調査報告書、ISO9001に対する適合組織の取組み状況、ほぼ毎年発行
(3) 轟 廣敏:私信、初年度を同じにした総登録件数の推移、H23.8.23
H23.9.7 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所