ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
103a       ISO9001 2015年版、組織主導の規格解釈の勧め
           
−改定版移行の無用で無益な作業負荷の軽減のために
<62a-01-103a>
(0) 要約
 
今日ISO9001/ISO14001認証組織の大半が効用を実感できず過大な負担と不満を感じている。これは、規格を正しく実践していないからである。この原因の根本は、規格作成の目的や狙い、規格の論理、条文の意図を顧みない誤った規格理解と条文解釈であり、認証組織がこれに盲従していることである。
 
  この規格解釈の傾向は2015年版改定説明でも同じで、例えば論理の明示的表現に過ぎない共通テキスト化に伴う新条項・条文も重要な改定点扱いをされている。組織が無用で無益な大きな変更を迫られる可能性が高い。この改定版移行作業の無駄を避けたい組織には自分の問題として主体的に規格解釈に取り組むことを勧めたい。規格導入の効用を実感できるためにもこれしかない。
 
 
 
(1) ISO9001規格の意義

  ISO9001規格は、品質保証・顧客満足の観点から組織を維持発展させるための経営管理(マネジメント)のあり方を示すものであり、1980年前後の日本企業を含む世界の成功企業の実績で裏付けられた効果的で最良の考え方と方法論を集約したものとして作成されている。規格を品質保証・顧客満足追求の経営管理(マネジメント)活動の中で実践すれば、安易に不良品を出さない品質で錚々たる企業の仲間入りをすることができる。逆にISO9001を正しく実践しなければ、とりわけ形をとりつくろうだけの規格取組みでは負担感以外の何物も生まない。
 
  経営管理(マネジメント)のあり方の世界標準の重みとはそういうものであり、それ故に規定条文には権威があり、これを正しく実践する組織の製品品質は信頼に足るのである。それ故に1980年台初頭に サッチャー首相がISO9001の前身の英国の品質保証規格の輸出企業による実践の支援とその国家による認証という制度を、低迷する英国産業の品質競争力回復の政策に採用したのである。今日顧客が認証取得を組織に要求するのは、規格の実践により不良品を出さない信頼できる供給者となってほしいからである。
 
 
(2) 誤った規格理解と条文解釈
  従って、今日のISO9001認証組織の大半が効用を実感できず負担と不満を感じ、絶望して認証放棄する組織も後を絶たないという状況は、規格を正しく実践していないからに他ならない。日本の組織で規格が正しく実践されていないのは、組織にISO9001規格と認証制度の意義への認識が希薄で、かつ、認証業界主導の誤った規格理解と条文解釈に盲目的に従っているからである。
 
  この誤った規格理解では、ISO9001は現場中心の品質改善活動の仕組みを規定するものと考えられ、条項・条文は認証状授与のための組織への要求を羅列したものと考えられる。誤った条文解釈では、個々の条文毎にその文言から「ここでは○○をすることが要求されている」という形の解釈からその要求に対応する新しい業務や文書、記録がつくられる。組織もなぜそれが不良品を出さないために必要かを考えずに受け入れる。例えば組織は品質方針カードを全員に保持させ、審査員はこれを規格適合の証拠と認める。どちらもそれが不良品を出さないことにどのように繋がるかを考えない。
 
  認証取得しても一向に品質が向上しないというのが組織の一般的な不満と言われるが、ISO9001にはどうすれば品質が改善できるかについてはひとことも書かれていないから規格実践で品質が良くならないのは当然である。ましてや組織が、規格の要求だと言われて何も考えずに審査員の指摘を受けないように形をつけることで何か成果が得られると考えているとすれば、甘いとしか言いようがない。しかし現実には、組織は何を得るにもまともな努力が必要だという正しい考えを持っており、それ故に自らの規格要求品質改善運動では成果を上げ得ないことを認識し、その結果やそれに対する指摘のお蔭で顧客との取引が継続されているという審査員の主張への疑問から規格と認証制度への不信を募らせているものと考えられる。
 
  日本車に品質で大きく水を開けられた欧米の自動車会社が、不良のない材料・部品の受け入れという切実な必要に対応して始めた業界独自のISO9001に準じた品質保証規格QS9000/ISO TS16949の認証制度をISO9001の認定・認証制度の枠組みから離脱させ独自の体制を築いたのは、ISO9001認証制度における品質保証規格であることを忘れた規格解釈と形式的認証審査の結果に不満があったからに違いない。
 
  ISO9001には認証状授与のための組織への要求が羅列されているのではなく、組織の維持発展のために必要な品質保証・顧客満足追求の経営管理(マネジメント)の世界で最良の考え方と方法論が、学問として体系化されている経営論に則って整理されて、条項・条文の形で表されている。規格の正しい実践とは、規格の狙いの実現を図るように規格の論理と条文の意図に沿って条文を解釈し、品質保証・顧客満足の経営管理(マネジメント)活動の手順、方法、基準の形で適用し、それらに従って業務を行うことである。
 
  2015年版改定作業に参加する国内委員会の関係者のこれまで改定説明では、改定によって規格実践が品質優良組織となり顧客に認められるのに繋がることをより確実にするのだという責任感が伝わってこない。条項や条文の変更を自らの権利と勘違いして条文をいじっているような印象さえ受ける。これらの説明では相変わらず条項・条文の変更をすなわち規格の要求の変更とし、条文の文言を元に解釈を繰り拡げている。このためCD版では4章を中心とする共通テキストに伴う新しい条項と条文が重要な改定点として取り上げられている。
 
 
(3) 組織主導の正しい規格解釈による正しい規格実践
  しかし本来は、規格の論理と条文の意図の変更があって初めて改定であり、組織が新たな対応を迫られるのである。CD版の共通テキストに伴う新しい条項・条文は、08年版には記述されていないが、08年版の経営管理(マネジメント)活動で実際に用いている手法や考え方を初歩の経営論に沿って文章表現されたものに過ぎない。規格改定ではないから、この場合の組織の2015年版対応は意識してこなかった事を意識してやっていくことである。
 
  しかし、認証業界の規格解釈丸飲みの組織は、効用の実感が期待できず負担感を増すだけの将来のために改定版移行の大きな作業負荷を負うことになる可能性が高い。組織にはこの機に、自分の問題として主体的に規格解釈に取り組むことを勧めたい。無用な移行作業負担の軽減だけでなく、規格導入の効用を実感できるようになるためにも、品質で顧客や市場の評価の高い組織となるためにもこれしかないのである。
H26.3.8(追 3.18)
  禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所