ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
103b       ISO14001 2015年版、組織主導の規格解釈の勧め
             −改定版移行の無用で無益な作業負荷の軽減のために
<62a-01-103b>
(0) 要約 
 
今日ISO9001/ISO14001認証組織の大半が効用を実感できず過大な負担と不満を感じている。これは、規格を正しく実践していないからである。この原因の根本は、規格作成の目的や狙い、規格の論理、条文の意図を顧みない誤った規格理解と条文解釈であり、認証組織がこれに盲従していることである。
 
  この規格解釈の傾向は2015年版改定説明でも同じで、例えば論理の明示的表現に過ぎない共通テキスト化に伴う新条項・条文も重要な改定点扱いをされている。組織が無用で無益な大きな変更を迫られる可能性が高い。この改定版移行作業の無駄を避けたい組織には自分の問題として主体的に規格解釈に取り組むことを勧めたい。規格導入の効用を実感できるためにもこれしかない。  

      
       
 
(1) ISO14001規格の意義
  ISO14001規格は、1992年の国連地球サミットを機に、産業界の地球環境保全責任の基準を明確化することを意図して作成され、地球環境保全への取組みの観点から組織を維持発展させるための経営管理(マネジメント)の効果的なあり方を示すものとされる。
 
  ISO14001の独自性は、組織の環境責任を果たす基準を世界標準として定めていることであり、それは組織がその事業活動に起因するすべての環境影響に責任を認め、地域住民、顧客、規制当局、投資家など組織起因の環境影響の利害関係者のニーズと期待と技術的、財務的な能力を均衡させて継続的に環境影響を低減することであると決められている。ISO140001の規定は、この基準を確実に満たす環境管理の経営管理(マネジメント)のあり方を、ISO9001で採用された経営目標を確実に達成するための世界で最良の考え方と方法論に準じ、学問としての同じ経営論に則って整理されて、条項・条文の形で表されたものである。
 
  規格を組織の環境保全を図る経営管理(マネジメント)活動の中で正しく実践すれば、自らの環境責任を精一杯に果たす環境優良組織としての社会や顧客からの評価を確立できる。逆にISO14001を正しく実践しなければ、地球環境保全に何の寄与も果たせず、逆に環境事故や不祥事を発生させ、或いは誰からも評価されないでひとり相撲の疲労感を生むだけになる。
 
  環境保全の経営管理(マネジメント)のあり方の世界標準の重みとはそういうものであり、それ故に規定条文には権威があり、これを正しく実践する組織がその環境責任を全うするとして信頼するに足るのである。顧客が組織にISO14001認証取得を要求するのは環境優良組織からしか材料、部品を購入しないということが自身の事業の維持発展に必要な環境優良組織としての位置づけに関係するからである。一般消費者向けサービス業が認証取得するのは自身が環境優良組織であることを訴えて顧客を引きつけるためである。
 
 
(2) 誤った規格理解と条文解釈
  しかし、日本では認証組織の大半が改善活動のネタ切れで規格実践の意義に疑問を感じ、効用を実感できず、環境への関心が益々高まる社会情勢の中でISO14001の認証登録数は減少を続けている。この状況は、認証組織が規格を正しく実践していないことと、ISO14001取得組織が環境優良組織であると社会的に認知されるようにする努力を認証業界が怠っているからである。そして日本の組織で規格が正しく実践されていないのは、組織にISO14001規格と認証制度の意義への認識が希薄で、かつ、認証業界主導の誤った規格理解と条文解釈に盲目的に従っているからである。
 
  この誤った規格理解では、ISO14001は現場中心の環境改善活動の仕組みを規定するものと考えられ、条項・条文は認証状授与のための組織への要求を羅列したものと考えられる。誤った条文解釈では、個々の条文毎にその文言から「ここでは○○をすることが要求されている」という形の解釈からその要求に対応する新しい業務がつくられる。組織もなぜそれが環境優良組織であるために必要かを考えずに受け入れる。例えば、省エネ設計という文言を有益な環境側面として著しい環境側面リストに記述するのとしないのとが、環境優良組織となることにどのような違いがでてくるのかを考えず、審査員の指摘をそのまま受け入れる。
 
  認証取得しても一向に環境影響が改善しないというのが組織の一般的な不満と言われるが、ISO14001にはどうすれば環境が改善できるかについてはひとことも書かれていないから規格実践で組織の環境問題が目に見えて改善されるというようなことにならないのは当然である。ましてや組織が、規格の要求だと言われて何も考えずに審査員の指摘を受けないように形をつけることで何か成果が得られると考えているとすれば甘いとしか言いようがない。しかし現実には、組織は紙ごみ電気の節減や歩留改善を環境改善目標に位置づけることが地球環境や地域公害型汚染の改善に繋がらないことを認識しており、それ故に自らの規格要求環境改善運動の結果やそれに対する指摘のお蔭で顧客との取引が継続されているという審査員の主張への疑問から規格と認証制度への不信を募らせているものと考えられる。
 
  ISO14001には認証状授与のための組織への要求が羅列されているのではなく、組織の維持発展のために必要な地球環境保全を図る経営管理(マネジメント)の世界で最良の考え方と方法論が、学問として体系化されている経営論に則って整理されて、条項・条文の形で表されている。規格の正しい実践とは、規格の狙いの実現を図るように規格の論理と条文の趣旨に沿って条文を解釈し、組織の環境保全の経営管理(マネジメント)活動の手順、方法、基準の形で適用し、それらに従って業務を行うことである。
 
  2015年版改定作業に参加する国内委員会のこれまでの改定説明では、改定によって規格実践が環境優良組織として社会に認知されるのに繋がることをより確実にするのだという責任感が伝わってこない。条項や条文の変更を自らの権利と勘違いして条文をいじっているような印象さえ受ける。これらの説明では相変わらず条項・条文の変更をすなわち規格の要求の変更とし、条文の文言を基に解釈を繰り拡げている。このため共通テキストに伴う4章をはじめ新しい条項と条文を改定点とし、CD.2版を規格の性格の変更を含む大きな改定という理解が説明されている。
 
(3) 組織主導の正しい規格解釈による正しい規格実践
  しかし本来は、規格の論理と条文の意図の変更があって初めて改定であり、組織が新たな対応を迫られるのである。例えばCD.2版の共通テキストに伴う新しい条項・条文は、04年版には記述されていないが、04年版の経営管理(マネジメント)活動で実際に用いている手法や考え方を初歩の経営論に沿って文章表現されたものに過ぎない。他の変更も1点を除いて単なる文章上の変更である。組織の2015年版対応は意識してこなかった事を意識してやっていくことでほぼ十分である。しかし、認証業界の規格解釈丸飲みの組織は、効用の実感が期待できず負担感を増すだけの将来のために改定版移行の大きな作業負荷を負うことになる可能性が高い。組織にはこの機に、自分の問題として主体的に規格解釈に取り組むことを勧めたい。無用な移行作業負担の軽減だけでなく、規格導入の効用を実感できるようになるためにも、環境優良組織として顧客や社会に認知されるためにもこれしかないのである。
H26.3.8(追 3.18)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所