ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
104a    ISO9001 規定条文の正しい読み方、10の留意事項  
             ―組織主導の規格解釈(2a)
<62a-01-104a>
 
1. 組織主導の規格解釈の必要
  ISO9001認証組織の大半が規格と認証制度に不満を抱く今日の状況は、規格作成の目的や狙い、規格の論理、条文の意図を顧みない認証業界主導の誤った規格理解と条文解釈に組織が盲従していることが原因である。
    
  ISO9001は、不良品を出さず顧客のニーズと期待を満たす製品を一貫して供給する品質優良組織であるための仕事のしかたの必要条件を、『〜しなければならない』という表現の多数の規定条文の形で明らかにしている。この必要条件を正しく満たして仕事をすれば、顧客に品質優良組織として認められて、コストや他の面でも顧客のニーズと期待を満たすならば、組織が必要とし、望むような売上をあげることが出来、事業を継続的に維持発展させる基礎が確立する。
   
  これがISO9001実践の効用である。顧客が組織に認証取得を要求するのは、品質優良組織からしか製品を買いたくない又は取引をしたくない、できない事情が顧客にあるからである。認証制度は、組織の規格実践の規格適合性を判断基準として組織が品質優良組織であることを顧客に保証することが目的である。
    
  規格取組みを現状のようなコストから本来の利益に転換するためには、組織が自分の問題として自らの利益を目指して主体的に規格を解釈することがまず必要である。その根本は、規定の条文を認証取得のための規格の要求ではなく、品質優良組織であるための経営者と管理者の仕事のしかたの必要条件と認識することである。すべての条文は、狙いの顧客満足の実現になぜそのようでなければならないのか、それは組織の実際の仕事ではどのようなことに相当するのかという観点で読み解くことでなければならない。
   
   
2. 条文の正しい読み方
  このように条文を読み解くためには、規格の規定と条文表現に関する次の特質、10のポイントを念頭に置くことが必要である。規定条文『〜しなければならない』は、次のような意味で『〜しなければならない』と書かれている。
 
(1) 規定は要求ではなく、必要条件を意味する
  規格の規定の『〜しなければならない』は仕事のしかたの必要条件を表し、新たに何かをしなければならないという意味ではなく、組織の仕事のしかたがそのようでなければならないという意味である。規格の導入とは、実務の仕事と別の仕事の仕組みを作り運用することではなく、実務の仕事を『〜しなければならない』という必要条件を満たすように変えることであり、或いは、そのようであることを意識し明確にすることである。例えば認証取得用に『品質方針』(5.3項)なるものを創作するのではなく、組織が必要な売上を確保するためにどのような製品をつくり、或いは、顧客にどのように気に入ってもらわなければならないと考え、仕事をしてきたのかを『品質方針』として明確にするということである。
   
(2) 規定は具体的な方法・手法ではなく、論理と方法論を意味する
  規格は論理の体系であり、論理とその実践のための方法論として『〜しなければならない』と言っているのであり、具体的な業務或いは活動、方法、手法を規定しているのではない。例えば『要員は力量がなければならない』(6.2.1項)は、手順書を作ればその通りに作業が行われその通りの結果が得られる状況とするためのひとつの必要条件としての方法論を意味しているのであり、個人の能力を評価し表す方法を問題にしているのではない。
   
(3) 規定は規格独自の考え方ではなく、産業界で普遍的な論理と方法論に沿って書かれている
 規格の論理と方法論は基本的に独自のものではなく、規定条文は組織の仕事のそれぞれの分野で有効性が広く認められ活用されている論理と方法論に則って書かれている。すなわち、経営論のマネジメントサイクル、監査論、計測管理論、機械工学中心の設計管理論、マーケティング論の顧客本位経営、PDCAサイクルを基礎とする品質管理論、購買管理論、人間重視の人事マネジメント論等である。従ってISOの内部監査(8.2.2項)は何々だというような解釈は基本的に正しくなく、品質優良組織の名を汚すような事態が起きないかどうかの判断を結論として組織内の業務実行の適合性をトップマネジメントに報告する普通の内部監査が規格の意図である。
     
(4) 規格では方法論は必要に応じてしか規定されていない
 規格には必要な論理は抜けなく規定されているが、方法論は必要に応じてしか規定されない。特に、論理に対応して当然の或いは広く定着している方法論は規定化されていないことが多い。例えば、『製品に適用される法令・規制要求事項』(7.2.1項)を遵守しようとするならISO14001(4.3.2項)のように『特定し、参照する』『決定する』手順を確立するという方法論が必要である。ISO9001では規定がないからこれら手順は不要という解釈では必要な法規制の適用が漏れる可能性があり、法規制違反の製品を顧客に引渡してしまうことに繋がる。
    
(5) 規定は規格独特の用語、文章表現で書かれている
  規定条文には規格独特の用語を用いた独特の文章表現が存在するが、特殊な必要条件を意味するものではない。表現が独特であるだけであるから、条文は文字面で読むのでなく、その意図を実務の観点から読みとらなければならない。例えば『品質マネジメントシステムの計画』の規定は、狙いの顧客満足を決めて確実にその実現を図るための仕事の仕組みを確立することを『品質マネジメントシステムのプロセスアプローチ/PDCAサイクルの計画/C』の活動として表現したものである。『品質目標を満たすために』とは、組織の存続発展に必要な狙いの顧客満足が確実に実現するようにと言うことであり、そのような『品質マネジメントシステムの計画を行う』とは規格の各条項の規定を満たして仕事の仕組みを確立するということである。
   
(6) 規定は効率性、収益性との均衡を前提に書かれている
  規定は狙いの顧客満足の実現のための効果的な仕事のありかたとしての必要条件であるが、効率或いは収益性との均衡を前提として書かれている。これは規格の顧客満足の追求が組織の存続発展を目的とするものであるから当然のことである。例えば『是正処置は不適合のもつ影響に応じたものでなければならない』(8.5.2項)のようにこの原則が明記されている条項もある。些細なクレームの再発防止対策のための作業手順のために生産能率が大きく低下したというようなことは規定の意図でない。  
    
(7) 条文の文章と規格の意図の必要条件とは別物
  規定条文は仕事のしかたの必要条件を文章で表すものであるが、条文の文章それ自身が規格の意図の必要条件ではない。例えば、08年版改定では56ケ所の条文の変更があるが、その序文に『00年版を規格本体の要点を明確にするため、及び、ISO14001との両立性を高めるために改正したものである』と明記されているようにすべてが文章の変更であり、品質優良組織であるための必要条件は何も変わっていない。また例えば製品の合否判定活動の必要条件を『受入検査・試験』『工程内検査・試験』『最終検査・試験』に分けて詳しく規定していた94年版条文 (4.10.1〜5項)が、00年版では『製品の特性の監視及び測定は製品実現の適切な段階で実施すること』(8.2.4項)となったが、これを機に製造業で工程内検査をやめたところはまずないであろう。
   
(8) 条文の意図は異なる条項の条文と合わせて汲み取れるように書かれている
  規定条文は個々にはプロセスアプローチ/PDCAサイクルの各段階の各業務の観点での必要条件を意味し、全体として品質/環境優良組織であるための必要条件を表す。条項・条文のそれぞれが独立して何かの必要条件を規定していると言うことではなく、同じことでも様々な観点から必要条件が規定されている。例えば『プロセスの監視及び測定』(8.2.3項)は、文書管理(4.2.3項)以下の規格の全条項の業務(プロセス)に係わるPDCAサイクルのCの活動について、必要で十分な方法で行わなければならないという論理を述べているのであり、どのプロセスを監視測定するのかを決めるということは規定の意図ではない。
 
(9) 条項の段落構造には意味がある
 複数段落から成る条項では各節条文が独立して必要条件を規定しているのではなく、第一節が主文であり、第二節以下は第一節の特定の事項或いは必要条件の詳細を表す。例えば、後に苦情申立を受けた時には正しい検査をしたことの証拠が必要であるから第一節に『合否判定基準への適合の証拠を維持しなければならない』(8.2.4項)と規定し、その『証拠』の記録には『製品のリリースを正式に許可した人』が含まれていなければならないというのが第二節である。第二節文末の(4.2.4参照)は第一節の『証拠』の『記録』を指すから、合否判定の記録の維持が不要と読み取ることは適切でない。
   
(10) JIS和訳文には問題が多い
 
品質優良組織であるためになぜ必要かという観点で条文を読んで意味がわからない或いは合点がいかないと感じる場合は大抵はJIS和訳の問題である。解釈には和訳規定より原文(英語)規定を優先させるのがISO規格の原則であるから、意味が納得できるまで辞書を引くことが必要である。JIS条文には意図を無視した硬直的な日本語が少なくなく、文法上の誤りを含む英文解釈の誤りもある。例えば、工程計測器は校正不要という実務の品質管理の原則にもとる解釈の源は「正しい測定結果を確保するために必要な場合には」を『測定値の正当性が保証されなければならない場合には』と誤訳されたことである。
   
    
3. 正しい規格解釈の証拠
 
このように条文を真剣に読むと、多くの『〜しなければならない』に対応する自らの考え方や手順や手法が存在することに気付く組織が多いはずだ。このように気付いたとすれば、正しい規格解釈をしていると思ってよい。なぜなら規格とは創作物ではなく、世界の組織が実践する品質優良組織であるための論理と方法論の優れたものを集約し整理したものであるからである。その中心は1980年前後の製造業の大企業を中心とする日本流の仕事のしかたであるから、とりわけ製造業の組織には思い当たるところが多いと思われる。

H26.4.18 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所