ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
104b       ISO14001 規定条文の正しい読み方、10の留意事項
           ―組織主導の規格解釈(2b)
<62-01-84>
 
1. 組織主導の規格解釈の必要
 
ISO14001認証組織の大半が規格と認証制度に不満を抱く今日の状況は、規格作成の目的や狙い、規格の論理、条文の意図を顧みない認証業界主導の誤った規格理解と条文解釈に組織が盲従していることが原因である。
 
  ISO14001は、顧客、規制当局、投資家など利害関係者のニーズと期待と技術的、財務的な能力を均衡させて組織起因の環境影響の継続的な低減を図るという形で環境責任を果たす環境優良組織であるためのしかたの必要条件を、『〜しなければならない』という表現の多数の規定条文の形で明らかにしている。この必要条件を正しく満たして仕事をすれば、関係者に関係優良組織として認められて、組織の事業活動が支持され、必要で望まれる収益を確保し、事業を継続的に維持発展させる基盤が確立する。
 
  これがISO14001実践の効用である。顧客など関係者が組織に認証取得を要求するのは、環境優良組織からしか製品を買いたくない又は取引をしたくない、できない事情が顧客にあるからである。認証制度は、組織の規格実践の規格適合性を判断基準として組織が環境優良組織であることを顧客や関係者に保証することが目的である。
 
  規格取組みを現状のようなコストから本来の利益に転換するためには、組織が自分の問題として自らの利益を目指して主体的に規格を解釈することがまず必要である。その根本は、規定の条文を認証取得のための規格の要求ではなく、環境優良組織であるための経営者と管理者の仕事のしかたの必要条件と認識することである。すべての条文は、組織が目指す環境優良組織であるためになぜそのようでなければならないのか、それは組織の実際の仕事ではどのようなことに相当するのかという観点で読み解くことでなければならない。
 
 
2. 条文の正しい読み方
  このように条文を読み解くためには、規格の規定と条文表現に関する次の特質、10のポイントを念頭に置くことが必要である。規定条文『〜しなければならない』は、次のような意味で『〜しなければならない』と書かれている。
 
(1) 規定は要求ではなく、必要条件を意味する
  規格の規定の『〜しなければならない』は仕事のしかたの必要条件であるが、それは新たに何かをしなければならないという意味ではなく、組織の仕事のしかたがそのようでなければならないという意味である。規格の導入とは、実務の仕事と別の仕事の仕組みを作り運用することではなく、実務の仕事を『〜しなければならない』という必要条件を満たすように変えることであり、或いは、そのようであることを意識し明確にすることである。例えば認証取得のために『環境方針』(4.2項)なるものの作成が必要なのではなく、事業の存続発展の前提としての環境優良組織であると関係者に認めてもらうためにどのような環境影響低減取組みが必要で十分とトップマネジメントが考えているのかを『環境方針』として明確にするということである。
 
(2) 規定は具体的な方法・手法ではなく、論理と方法論を意味する
  規格は論理の体系であり、論理とその実践のための方法論として『〜しなければならない』と言っているのであり、具体的な業務或いは活動、方法、手法を規定しているのではない。例えば『環境方針は…..すべての人に周知される』(4.2 f)項)は、環境方針が人々の行動指針として仕事に活かされるために必要ということであり、周知方法をどうするかの問題ではない。
 
(3)規定は規格独自の考え方ではなく、産業界で普遍的な論理と方法論に沿って書かれている
  規格の論理と方法論は基本的に独自のものではなく、規定条文は組織の仕事のそれぞれの分野で有効性が広く認められ活用されている論理と方法論に則って書かれている。すなわち、経営論のマネジメントサイクル、監査論、計測管理論、マーケティング論の顧客満足概念、品質管理のPDCAサイクルを基礎とする方法論と手法、購買管理論、人間重視の人事マネジメント論等である。従ってISOの内部監査(4.5.5項)は何々だというような解釈は基本的に正しくなく、環境優良組織の名を汚すような事態が起きないかどうかの判断を結論として組織内の業務実行の適合性をトップマネジメントに報告する普通の内部監査が規格の意図である。
 
(4) 規格では方法論は必要に応じてしか規定されていない
  規格には必要な論理は抜けなく規定されているが、方法論は当然の或いは広く定着したものを中心に必要に応じてしか規定されていない。例えば、『校正された監視及び測定機器が使用されることを確実にすること』(4.5.1項)は正確な環境測定値を得るための計測器の精度の管理の規定であり、そのための『校正』はISO9001 (7.6項)のような計測管理論に基づく校正の方法論を適用しなければならず、規定がないから勝手な方法で校正すればよいというものではない。
 
(5) 規定は規格独特の用語、文章表現で書かれている
  規定条文には規格独特の用語を用いた独特の文章表現が存在するが、特殊な必要条件を意味するものではない。表現が独特であるだけであるから、条文は文字面で読むのでなく、その意図を実務の観点から読みとらなければならない。例えば『目的・目標を設定しレビューするにあたって、……を考慮に入れること。また、……も考慮すること』(4.3.3項)は、考慮するかどうかどうかの問題ではなく、可能な最大限の環境影響低減を図るという規格の定義の環境優良組織としての経営管理の仕事のしかたの基本を明らかにしている。『目的・目標』は環境影響低減目標であり、それは関係者のニーズと期待を考慮し、組織の技術的、財務的能力も考慮してその均衡を図って決めなければならないということである。
 
(6) 規定は効率性、収益性との均衡を前提に書かれている
  規定は狙いの環境優良組織であるための効果的な仕事のありかたとしての必要条件であるが、効率或いは収益性との均衡を前提として書かれている。これは環境影響低減が組織の存続発展を目的とするものであるから当然のことであり、規格の環境優良組織そのものが必要と能力の均衡の原則に基づいて定義されている。顧客の期待に応えて大規模環境投資をした結果で収益性が低下し組織の存続を危うくなるというような事態は規格の意図ではない。
 
(7) 条文の文章と規格の意図の必要条件とは別物
  規定条文は仕事のしかたの必要条件を文章で表すものであるが、条文の文章それ自身が規格の意図の必要条件ではない。例えば、4.5.1項は294年版の『監視機器は、校正され維持されなければならない』は04年版で『校正された又は検証された監視及び測定機器が使用され、維持されていることを確実にしなければならない』と文言は変わったが、必要なら校正や検証を行って計測器の精度や精密度等を必要な水準に管理し、そのような計測器を使用しなければならないという計測器を用いる監視測定の必要条件としては変わっていない。
 
(8) 条文の意図は異なる条項の条文と合わせて汲み取れるように書かれている
  規定条文は個々にはプロセスアプローチ/PDCAサイクルの各段階の各業務の観点での必要条件を意味し、全体として環境優良組織であるための必要条件を表す。条項・条文のそれぞれが独立して何かの必要条件を規定していると言うことではなく、同じことでも様々な観点から必要条件が規定されている。例えば環境優良組織にふさわしい環境責任の果たし方について、環境影響低減目標を決める方法論の必要条件としては4.3.3項に、その目標としての必要条件は4.2 a)項にそれぞれ規定されている。
 
(9) 条項の段落構造には意味がある
  複数段落から成る条項では各節が独立して必要条件を規定しているのではなく、第一節が主文であり、第二節以下は第一節の特定の事項の詳細を表す。例えば、4.4.2項の第二節は、第一節の『….すべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にすること』の『訓練』がどのようなことを習得させるものか、その習得のための組織として処置のあり方を規定している。すべての人に第二節の『訓練』が必要で、特殊な階層の人々には第一節の『力量』が必要という解釈は適切ではない。
 
(10) JIS和訳文には問題が多い
  環境優良組織であるためになぜ必要かという観点で条文を読んで意味がわからない或いはちょっと変に感じる場合は大抵はJIS和訳の問題である。解釈には和訳規定より原文(英語)規定を優先させるのがISO規格の原則であるから、意味が納得できるまで辞書を引くことが必要である。JIS条文には意図を無視した硬直的な日本語が少なくなく、文法上の誤りを含む英文解釈の誤りもある。例えば、4.4.6項の『環境方針、目的、目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画すること』の原文の正しい和訳は「 (4.3.1項で)特定された著しい環境側面に関係する『運用』が環境方針、目的、目標と整合するように、(それら『運用』を)特定し、計画すること」である。『運用』も誤訳で「業務実行」のことである。4.4.6項を4.3.3項の改善の実施計画の手順であるとする解釈は、この誤訳から正当化されている。
 
 
3. 正しい規格解釈の証拠
 
このように条文を真剣に読むと、多くの『〜しなければならない』に対応する自らの考え方や手順や手法が環境管理とはいわなくとも品質保証の管理の仕事の中に存在することに気付く組織が多いはずだ。このように気付いたとすれば、正しい規格解釈をしていると思ってよい。なぜなら規格とは創作物ではなく、ISO14001の中核論理と方法論は、世界の組織が実践する品質優良組織であるためのISO9001の論理と方法論の優れたものを集約し整理したものであるからである。ISO9001の中心は1980年前後の製造業の大企業を中心とする日本流の仕事のしかたであるから、とりわけ製造業の組織には思い当たるところが多いと思われる。その同じ論理と方法論を必要で精一杯の環境影響低減努力に適用して、規格を読めばよい。
H26.4.18 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所