ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

   
論評
  実務の視点  ISO マネジメントシステム コンサルタントの切り口
このセクションでは、 MS 実務の視点主宰者が、ISOマネジメントシステム規格を取巻く種々の問題を取上げ、
実務の視点に立つ  ISO マネジメントシステム コンサルタントとしての見方、考え方を披露します。
目  次
ISO9001/14001
2015年版
誤訳・空論・珍説
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

組織の取組み
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

規格理解・規格解釈
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

認証制度と運営
ISOマネジメントシステム
認証登録の疑問と正解

認証業界よもやま話
メールマガジン
マネジメントシステム
と 規格

日本のISO取組みの疑問と正解閑 話 枝葉末節
認証業界 よもやま話
62d
実務の視点で、ISO9001/ISO14001マネジメントシステムの認証と関連する事業の
実態について見解を述べます。
   目 次
<最新号>
105. 認証登録件数低減の歯止めになるか 経産省の規格活用モデル事業(H25.5.10)
104. 熟達の元審査員大量復帰の下地か −環境審査員資格基準の改訂 (H25.2.18)
103. お試し登録 ― 登録取得組織からの認証業界への明確なノー(H24.12.13)
102. ガイド83 (上位構造と共通テキスト) の認証制度に及ぼす影響(H24.6.6)
101. 認証審査で不合格の事例がないというのは本当か(H24.2.15)
  認証審査の現場   62d-a
104. 熟達の元審査員大量復帰の下地か −環境審査員資格基準の改訂 (H25.2.17)
101. 認証審査で不合格の事例がないというのは本当か(H24.2.15)
96. 萎縮する審査員−様変わりの審査風景(H23.8.12)
3.付加価値のある審査(H15.8.31)

  認証市場の動向 62d-b
105. 認証登録件数低減の歯止めになるか 経産省のマネジメントシステム規格活用モデル事業(H25.5.10)
103. お試し登録 ― 登録取得組織からの認証業界への明確なノー(H24.12.13)
102. ガイド83 (上位構造と共通テキスト) の認証制度に及ぼす影響(H24.6.6)
97. 認証業界、天気晴朗のようでも波高し−認証バブル崩壊真っ只中(H23.9.7)
87. 推測:有効性審査論議の裏側 (2) それぞれの思惑(H22.7.22)
86. 推測:有効性審査論議の裏側 (1) 気楽な稼業(H22.6.27)
77. 縮みゆくISO9001/14001認証バブル(H21.11.9)
58. 競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出(H19.12.5)
 
 関連事業
59. 泣く子と地頭とJRCA(H20.1.7)
48.ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言−業界広報誌への読者の反乱?(H18.12.15)
 
<便乗商法:コンサルタント登録事業>
50.ISOコンサルタント登録事業打切り−規格協会、やはり自分のためだった?(H19.4.12)
38. 制度に反対する本当の理由−(その5) ISOコンサルタント登録制度(H1712.10)
36. 必要理由が取替えられた訳は? −(その4) ISOコンサルタント登録制度(H17.10.31)
35. 何を公平に ”評価” するのか −(続々) ISOコンサルタント登録制度(H17.9.30)
33. 理屈の通らない必要理由の説明 −(続) ISOコンサルタント登録制度(H17.8.13)
32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか(H17.7.31)
 
(註)規格条文引用時の*印はJIS翻訳と異なる筆者のISO英文の翻訳であることを示す。


105. 認証登録件数低減の歯止めになるか、経産省のマネジメントシステム規格活用モデル
   経産省の「マネジメントシステム規格とその活用による事業競争力強化モデル事業」の公募が4/4~4/19の間行われた。これは昨12月発足した「事業競争力ワーキンググループ」の検討の中間とりまとめとしての施策である。同グループの設立趣意説明から低迷する認証登録に対する経産省による梃子入れの側面があることが伺われ、認証業界からは秘めやかでしかし熱い視線が送られている。ISOマネジメントシステム規格は社会が期待するようには役に立たないと言ってきたJABが今年3月のシンポジウムでは「組織力を強化するISO9001改定」をテーマにしたのも偶然ではないのだろう。役立つと期待する組織や社会が間違っているとしてきたJABが、いや役に立つのだ、役に立つものとしようというのだから正に路線の大転換である。
 
  しかし、モデル事業がその趣旨と認証業界の期待に沿って進むとは考えられない。なぜなら現に役立たないのにどのようにして役に立たせることができるのに関して、中間とりまとめでは「マネジメントシステムを活用した我が国企業等組織が事業競争力を強化するための方策を検討するに当たり、企業等組織本来の経営課題解決のための有力なツールとしてマネジメントシステムの活用がなされることが望ましいと位置付けた」とし、従来の「ISOそのものを活動目的として位置づける」ではなく「ISOを課題解決ツールのひとつとして位置づける」というモデル事業を行うとしている。
 
  これは想像するに、マネジメントシステム規格を「マネジメントシステム」という名前のISO独特の現場主体の改善活動の仕組みと受け止め、その活動を経営課題解決に活用することで事業競争力を図らんとするもののようである。しかしこれは、規格と制度を役に立たないものとしている根本原因の誤った規格解釈にどっぷり浸かった実体のない論理であり、これまでも規格が役立たない理由や、どうすればよいかの提案の中で何度も唱えられてきたことと同じである。経営者や管理者の業務実行の指針又は規範である規格の規定を現場主体の改善活動に適用しても、不必要な業務の形式が持ち込まれるだけで、改善目標の達成に寄与するところは何もない。改善テーマを経営に役立つものに変えるというのは、往年の日本製造業の卓越した品質競争力をQCサークル活動のお陰とする浅薄な認識を背景にしているのだろうが、事業競争力の強化が現場主体の改善活動で実現するなら誰でも経営者になれるというものである。
 
  組織が品質保証、環境保全など様々な観点から事業の維持発展に必要な事業競争力の強化を図らんとするならば、それぞれのISOマネジメントシステム規格の「~しなければならない」に従って経営管理を行うというのが道理である。どのISOマネジメントシステム規格の目的も事業の維持発展であり、取り組みが必要な経営課題を抽出し解決を図って事業競争力を涵養、強化する経営管理活動の指針である。規格には方法論は一切規定されていないが、経営課題への取り組みとは一般に、ヒト・カネ・モノの投入、或いは、設備投資、人材投資、技術開発や商品開発などの経営上の施策であることに違いない。この施策が真に効果的であるために一般従業員の参画意識が必要であるとする嘗ての日本的人間重視経営のひとつの手法が現場中心の改善活動である。
 
  間違った規格解釈、間違った論理で進められる事業競争力強化モデル事業がうまくいかないことは明白である。しかし、このモデル事業が所期の成果を達成することになるのも確実である。国家プロジェクトには失敗がないのが通例であるからである。特にこのモデル事業は期間が1年であり、競争力が向上したという実績は示すことはできないから、その道を付けたというところで終わる。その後がどうなるかはアベノミクスの行く末次第であろう。1年後も産業競争力強化の口実が健在なら取り組みの継続や拡大が期待できが、化けの皮がはがれておれば没になる。
 
  検討グループの設立、中間とりまとめに至る会議、公募期間の慌ただしを見ると、モデル事業がアベノミクスの産業競争力強化に名を借りて10兆円の補正予算のお裾分けにありつくお役人の口実と筋書きに従ったものと想像される。勧進元にはこれで何年食べていけるか、どのように権限を強めるが大切であって、モデル事業の成否自体はどうでもよい。モデル事業の成否をまじめに論評する方がおかしいのであり、成果に期待する認証業界もおかしい。
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104. 熟達の元審査員大量復帰の下地か −環境審査員資格基準の改訂
   環境審査員登録機関CEARは昨年12月に審査員資格基準を改訂した。新旧比較表によると、新規資格登録条件は不変だが、資格昇格の条件や毎年の資格維持手続き要件が緩和されたものとなっている。さらに、審査実績不足などで資格降格されたり、資格登録を辞めた人が資格回復できる特別な条件が設けられた。審査員への説明文書ではH20年の認証制度信頼性向上に関する経産省ガイダンス文書をも改訂理由に挙げているが、中味を見る限りは審査員資格保持者の引き続く減少を止めることが目的のCEARための改訂と揶揄されかねない、およそ審査員能力の向上とは無関係な内容である。
 
  一方、ISOは認証制度信頼性向上を睨んで、認証機関の認定基準ISO/IEC17021を2011年に改編した。さらに、審査員の能力要件を厳格化して規定した技術仕様書をマネジメントシステム規格別に策定する予定で、昨年10月にISO14001審査員用のISO/IEC(TS)17021-2を発行した。趣旨は、審査員に環境技術、環境管理、環境法規など審査対象組織の実務に関する「知識と専門性」を求めるものである。
 
  CEAR文書によると、これは審査員資格取得要件としては適用せず、JABが認証機関認定の基準に反映するとのことである。審査員が審査対象組織の業務を知らないという不満はこれまでもしばしば話題になってきたから、この技術仕様書を基にしてJABが認定審査で審査員の実務知識と専門性の管理に焦点を当てることが予想される。こうなると、これまで元の企業での形式的な職務経験や時には審査経験までも根拠にして各審査員が審査できる産業分野を決めていた認証機関の裁量が大きく制約されることになる可能性が高い。「知識と専門性」が厳密に求められるなら、審査員は事実上自身の出身元の産業分野しか審査できず、例えばISO9001とISO14001の両方が審査できるというような審査員もごく限られた存在になるかもしれない。
 
  この結果、ひとりの審査員が審査できる規格と組織の数が減り、この分だけ審査員が不足するという状況になる。認証機関にとっては社員審査員の稼働率低下と、多数の契約審査員を探し出す必要という経営上の問題に当面する。必要な数の契約審査員をどこに求めるかということになると、どの認証機関もやっている事実上の70才雇止めで引退し、資格登録をやめた元審査員に復帰を求めるのが手っとり早い。このような資格放棄がCEARの資格保持者減少の主因なのであり、この人々こそが企業で蓄積した「知識と専門性」を元にして認証業に参入してきた、正にISO/IEC技術仕様書の審査員能力要件を満たし易い人々である。
 
  このような状況になるとするならば、CEARのこの度の審査員資格基準改訂は、元審査員の復帰を促進して資格保持者の数を元に戻し、認証業界の必要を満たすと共にCEAR自身の経営の安定化が可能になるという理に適ったものである。認証制度が組織にも社会にも役立つ存在になるためには、規格の意図と認証制度の狙いに対する真剣な議論が不可欠である。しかし、認証業界の理屈で育った二刀流三刀流で広い産業分野を審査できると認証機関に重宝がられる審査員の審査と、知識と専門性が豊かで職業的頑固さを持った審査員の審査とでは、認証組織に役に立つ度合いが異なることは間違いない。
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103. お試し登録― 登録取得組織からの認証業界への明確なノー
  JABの発表する適合組織四半期推移グラフでは、ISO9001、14001の認証登録件数は2006年と2009年をそれぞれ境にして減少が続き、近年ではそれぞれの減少は年率で3.5%、1.4%程度である。減少の主因は、よく知られた建設業界の大量登録放棄のように、認証制度への深い理解もないままに、誤った情報に踊らされ虚構にあおられて、本質的に不必要な組織までが我も我もと飛びついた認証バブルの崩壊である*1。減少率が緩やかなのは、なお旺盛な新規登録があるからである。ISO9001、14001それぞれで新規登録は年率7%、6.5%もあり、これが年率11%、8%にも昇る登録放棄の実態を隠していると判断された*2。
 
  ところが最近、JAB統計の解析によって、この新規登録組織の半数以上がその後の3年間で登録を放棄しているという驚愕の事実を発見した。すなわち、2011年8月と本2012年8月との間の登録減少率を初回登録年毎に調べた結果、初回登録取得組織の凡そ5%が翌年、つまり、1年目に、残りの組織の10%が翌々年、つまり、2年目にそれぞれ登録を放棄し、残った組織の50%が3年目の更新審査を受けないで登録を放棄していると推定される。テレビ広告の健康食品のお試しセットのように、ちょっと飲んでみたが飲むのが大変だとか、思うような効用がないのでやめたということがISO9001の新規登録で起きているのである。これを乗り越えた組織も4年目以降の毎年平均7%ずつ登録放棄していくという数字になっているが、この主体がバブル崩壊なのだろう。
 
  先の解析*2では初回登録後3年間は登録放棄はないという仮定に立ち、登録件数の減少はすべてバブル崩壊と見做していたが、この1年の状況をきわめて大雑把な数字で表すと、ISO9001の登録総件数の減少は年率で2%、新規登録は8%、登録放棄はバブル崩壊による5%と早期脱落による5%の合計10%となる。バブル崩壊だけなら旺盛な新規登録で登録総件数は年率で3%ずつ増えるのだが、その直後脱落のあまりの多さのために登録総件数増に結びついていないのである。
 
  実際には組織がちょっと試しにという形で新規登録を取得するという制度は存在しないから、お試し登録に終わってしまうのは、“構築”し“運用”した“品質マネジメントシステムという仕組み”が組織にとっては無益であるだけでなく、“運用”と審査による指摘対応の負荷という点で組織にそれほどまでに有害であると受けとめられているからに違いない。お試し登録現象たる新規登録組織の早期脱落は、登録取得組織の不満足の表明である。さるコンサルティング機関のアンケート調査*3で登録取得組織の25%が取引先の要求がなければやめたいと答えたが、お試し登録現象はこれと軌を一にした新規登録取得組織の行動である。
 
   お試し登録現象は登録取得組織が現状の認証制度に対して明確にノーを突きつけていることを意味する。その上に、組織が登録放棄と同時に“構築したシステム”をも捨て去っても組織の日常業務の結果や業績に何の不都合も生じないというような“システム”をコンサルタントが”構築”し、審査員がその“運用”を強制しているという事実を伴う。登録件数が増えず事業を成り立ち難くするのはどちらも同じだが、バブル崩壊による登録総件数減少は、認証の新たな必要性を創造してこなかった認証業界の怠慢の結果に過ぎないが、お試し登録現象は認証機関の矜持に係わる深刻な問題であるはずだ。
 
  JABは9月からウェブサイトの適合組織統計を一新し、登録総件数の推移グラフをやめた他、大幅に簡略化し、数字はあてにならないとの断わり付きの統計となった。統計に現れる"不都合な真実"の隠蔽が意図なら、登録取得組織からのノーは聞きませんという意思表示である。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-103>

102. Guide83 (上位構造と共通テキスト) の認証制度に及ぼす影響 
   ISOマネジメント システム規格作成者用の指針 Guide83が決定した。これは、同じ要求事項が規格によって表現が異なるとの組織の不満を背景にしてISOの技術管理評議会の主導で定められたと説明されている。このことにより、改定作業中のISO9001、14001を含む、いわゆるマネジメントシステム規格のすべてが、同じ条項構成(上位構造)となり、条文(テキスト)が同じとなる。規格特有の条項や要求事項の追加が認められているが、指針作成の趣旨からは8章(業務実行)以外は条項や条文の追加は限定的なものとならなければならない。ただし、各規格作成専門委員会のエゴがどこまで抑えられるかはわからない。単なる表現の変更であるから規格理解と認証審査には本質的な影響はないはずであるが、認証制度の実体に鑑みると、文章の統一度の如何によるが組織と認証業界に重大々な影響を及ぼすことが考えられる。
 
  まず規格理解に関してであるが、どの規格も条項、条文がほとんど同じになることから、各規格の“マネジメントシステム”が組織の同じ経営管理の枠組みの一側面或いは一分野であるとの認識がされ易くなる。このことと管理の狙いを明確化する必要の規定(4章)が加わったことと合わせて、規格が審査合格の要求ではなく効果的な経営管理の要件を規定するものであるとの正しい理解に行き着く可能性がある。 しかし規格の構造を表面的に捉え、どの規格のマニュアルも同じような体裁となることと合わせて、統合マネジメントシステムという虚構が幅をきかせるようになる危険性も高い。
 
  また、条文が個別規格より汎用的で抽象的であるから、その意味や意図の解釈に混乱を生じる危険がある。各規格に統一した解釈が必要であるが、これを各規格作成国内委員会間で調整できるのかどうかで混乱の拡がりが決まる。議論が規格の論理と要求事項の意図に基づくなら正しい規格解釈に繋がるが、文面で“規格の要求”を解釈するという議論なら全規格共通化を理由として実務と益々離れた文書や業務の形式が生み出されることになるかもしれない。
 
  規格理解や解釈がどのようになるにせよ、業界各機関の事業が深刻な打撃を受ける可能性がある。各規格作成専門委員会は8章を中心とする規格のそれぞれの一部分を担当するだけだから、従来の条文をわかりやすくするためというような規格改定が出来なくなる。それぞれの担当する部分は各マネジメント分野の論理に則って書かれているから、その論理の進歩がない限りは規格改定の口実が見出されない。実際、TC207の改定作業では2020年代半ばまでは通用するような規格とするというようなことが言われているから、今度のISO14001は10年以上は改定されない。
 
  改正があるから、規格作成関係者には仕事が無限で、改定版解説の権威と機会を得ることができ、審査機関は移行審査で審査に勿体をつけることができる。研修機関は改定版解説の研修需要を得、雑誌は特集記事で発行部数を上げ、様々な解説書が売れる。改定が大幅ならコンサルタントも恩恵にあずかる。また、改定は、関係者に規格要求事項を学ぶ機会を、社会には規格や認証制度を知るきっかけをそれぞれ与えるなど、認証制度の活性化に重要な役割を果たしてきた。新たな活性化手段を見出さない限り、業界の業容の縮小は避けられない。
 
  Guide83が日本の認証制度の発展、衰退のどちらに繋がるのかは、Guide83の意図を正しく汲み取ることができるかどうかによる。Guide83を基に規格の真の意図に気付き、正しい規格実践と正しい制度運営に向かうことになれば、認証制度が組織の発展と経済成長に不可欠なものとしての状況と認識が社会に確立する。
 
  Guide83を表面的に捉えて統合マネジメントシステムなる虚構の形式を、二刀流、三刀流の該当マネジメント分野の専門性に乏しい審査員による統合審査という方向に向かうことになれば、規格の改定がなく永年同じ要求事項のままのため不適合指摘が無くなり、認証審査は組織の実務と無関係で退屈な定期的な儀式と化し、社会的存在感の薄い認証制度となっていく。統合審査が増えるとすると、審査工数が減少するので認証機関は減収となり、審査員需要も減り、審査員数が減るから要員認証機関や資格取得研修を行う研修機関の需要減退という形で業界の業容の縮小を加速する。
 
  社会や組織に期待されるのは前者であるが、実現するのは後者である可能性が強い。
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101. 認証審査で不合格の事例がないというのは本当か  
   ほとんどどの組織も認証審査となると緊張する。不合格という判定への恐れが原因である。一方、審査員の間では過去に不合格となった事例はないと自嘲気味に語られる。これには審査の実態を見透かした世間の噂に抗することのできない不本意な状況に置かれた審査員の無力感が背景にある。しかし、ISOマネジメントシステム認証制度の枠組みに照らすと、不合格事例がないというのは当たり前である。
 
  なぜなら認証機関は規格適合性を検査して合否を判定する「検査機関」ではない。その役割は適合組織に登録証を発行することである。実際、米国では「登録機関」と呼んでおり、日本でも以前は「審査登録機関」であった。認証機関は、組織の経営管理の枠組みがISOマネジメントシステム規格の定める要件を満たしているという、いわゆる、組織のマネジメントシステムの規格適合性を認証するためにある。審査員が適合性を評価し、その適合しているとの判断を根拠にして、認証機関がその組織を適合組織と認める。この事実は認証機関の適合組織名簿への記載と登録証の発行により組織と第三者に明らかされる。認証審査はこのために行われるのであるから、目的は適合の実証であり、適合性の評価、判断はその手段である。
 
  これについては、ISO/IEC17021規格*1の中の認証機関の登録証発行の基準において明確にされている。すなわち、認証機関は、審査員が検出した不適合に対する組織の修正及び是正処置の計画、又は、結果の有効性を証拠で確認するか又は容認してからでないと認証の決定はしてはならないと定められている。これは、審査員が不適合を検出しても、組織が適切に是正すれば認証機関は登録証を発行するということを意味している。適切な是正処置であるかどうかは審査員の判断であるが、その評価が1回限りとか、是正処置にもたつくと審査を打ち切り、不合格とするというような規定はない。すなわち、認証制度の枠組みでは、初回審査で規格不適合があるとか、効果的に是正されないというような理由で組織を不合格にするということは想定されていない。
 
  さらに突っこんで解釈するなら、この規定は、認証を求める組織に対しては登録証を発行するのが認証機関の責任であることを示唆するものである。ISO/IEC17021規格の序文にあるように認証制度が経済取引の発展を図るものであるからには、制度の諸機関の活動は基本的に適合組織を増やすことに資するものでなければならない。組織の是正処置が有効であることの審査員の判断が規定されているのは、有効と判断できるまで組織に是正処置をやり直させることを意図している。審査員がどのようにすれば不適合が解消するかを伝えることはコンサルティング業務として禁止されているが、個々の是正処置への有効性判断を提示し、やり直させるという行為は上記規格が規定している。これは、審査員が不適合を無くすることを指導していることに他ならない。
 
  つまり、認証審査は、組織のマネジメントシステムの合否を判定する活動ではなく、問題を見つけて解消させ、登録証を発行できる条件を整える活動である。実際に認証機関や審査員が認証制度のこの枠組みを意識して認証審査を行っているかどうかは別として、認証機関がISO/IEC17021規格を満たしているからとして認定されているからには、認証審査で組織を不合格にすることはないし、時期が遅れるかもしれないが申請したすべての組織に登録証が発行される。認証審査で不合格になった組織が過去に無いというのは黒い噂ではなく、真実でなければならない。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-101>

97認証業界、天気晴朗のようでも波高し−バブル崩壊真っ只中                 
   2006年10-12月期と2009年1-3月期をそれぞれピークにしてISO9001、14001の認証登録件数は今日もなお減り続けている。39に分類される産業分野別で見てもISO14001の建設業を除くすべての分野で総登録件数は減少に転じている。それでも減少率はそれぞれが年率で3.5%、1.4%程度であり、JABの四半期グラフでも右下がりの勾配は緩やかで、先に予測した認証バブルの崩壊*の気配はない。しかし、この統計は認証業界に生じている異変を反映していない。
 
  JAB統計から期間別の新規登録件数を推定し、2009年4‐6月期を基準に本年4‐6月期までの2年間の変化を解析すると、ISO9001の総登録件数の減少は1年で1,700件(4%)であるが、これは登録放棄 4,200件(11%)が新規登録 2,500件(7%)で補われた結果である。ISO14001も同様に、総登録件数の減少が600件(1.5%)で、登録放棄が1700件(8%)、新規登録が 1,400件(6.5%)ある。この状況は産業別で見ても、ISO14001の建設業が新規登録の異様な多さのため総件数を増している他は、どの主要産業分野でも変わらない。すなわち、認証制度は10年で総登録件数がゼロになる程の、1年で10%もの組織が登録証を放棄するという異常な状態にある。
 
  この登録放棄の異常な多さは、認証制度への深い理解もないままに、誤った情報に踊らされ虚構にあおられて、本質的に不必要な組織までが我も我もと飛びついたことによる認証バブルが今、正に崩壊中であることを物語る。この中でも、なお新規に登録を求める組織が少なくないが、これにも将来はじける気泡の素が過去と同じく含まれている。これは、ほぼ例年のJABアンケート調査で、認証取得目的に顧客の維持や拡大より、品質/環境の改善、管理体制の確立など内的効用を挙げる回答が圧倒的に多い状況が昔と変わっていないことから推測できる。最近の新規登録の相当部分は現在はじけているバブルと同様、2回目の更新時期から放棄が加速する運命にある。旺盛にみえる新規登録も既に上り坂の時代の1/2〜1/3に減っており、この傾向は続くから、やがて四半期グラフの勾配も急落するかもしれない。
 
  JABの認証取得組織に対するアンケート調査報告書には、ISO9001が役立っているかどうかの質問があった。回答は、大いに、ある程度、を合わせて、約50%(03年)、50%(04年)、55%(05年)、75%(07年)で、登録放棄が増加して総登録件数が頭打ちからピークに達した07年調査でも「ISO9001は組織のQMSに対して有効に機能しているとする回答の割合が増えた」と分析し、しかしこれを最後にこの質問をやめてしまった。登録放棄激増を知るJABとしてはさすがに質問し、回答を評価することが憚れるからに違いない。JABは問題を隠し、制度の崩壊を座して待つつもりのようだ。
 
  ところで、登録放棄した組織でISO規格適合のマネジメントシステムがどうなっているかの情報はない。ほとんどの登録放棄組織が、ISO事務局もろとも、それまでの審査の対象だった業務や文書をなくしてしまうというのが、業界関係者の大方の見方である。組織の業務の中心は、所定の期間収益を挙げるために、受注し、製品実現し、顧客に引渡し、代金を回収し、また、所定の結果を出すように管理する日常業務である。組織が審査対象だったすべてを捨て又はお蔵入りさせることができるのは、そうしても組織の日常業務の実行やその結果の業績が全く影響を受けないというからに違いない。これは、ISOマネジメントシステムと称して、組織の日常業務とは別建ての、認証取得にだけ必要な一連の業務とその形や書類を作り上げ、それに関して認証機関が審査して、それに登録証を発行しているという日本の実態をそのまま写している。
 
  日本の認証業界では、ISO9001,14001の認証バブルの崩壊真っ只中にある。特にJAB系認証機関は、小さくなる市場から苦労して新規顧客を獲得してもそれ以上の既存顧客が去っていくという、賽の河原で石を積むかの状況にあり、さらに、非JAB系認証機関に顧客を着実に奪われている。組織の不祥事の報道がISO認証との関係に触れることがなくなり、認証業界の頭上から信頼性危機の雨雲が去り、様々な信頼性回復施策で彩られた青空が拡がっているようにみえる。しかし、足元は大荒れで波高しである。認証機関が生き残りを図るには、組織があっさり捨て去っても何も困らないことに対して、適合とか不適合とかの評価をし、組織に注文をつけることで生計を立てているという現実を認識することから始めなければならない。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-97>

96.萎縮する審査員−様変わりの審査風景  
近頃のISO9001/14001認証審査では一昔に比べて指摘が少ないと言われている。特に是正処置が必要という類の不適合指摘は極端に減っており、定期審査では不適合指摘がゼロというようなことも珍しくなく、被審査側の審査への畏怖や緊張が失われつつあるという。発見される不適合が減ったのなら、認証取得が10年を超える組織が大半となっているという状況ではむしろ正常なことである。規格への適合性を評価する認証審査であり、発見された不適合はその都度修正され、再発防止対策もとられているから、認証取得10年も経ってなお新たな不適合が見つかるとすれば、それこそ異常なのである。しかし、審査の度毎に新たな不適合が見つかるという現実は続いているはずだから、それでも不適合指摘が減っているのは審査員が指摘を控える傾向を強めているからと見るのがよい。
  
この原因は?
このままどうなるか?
  
 かくして、もの言わぬ、ものわかりのよい審査員ばかりとなる。審査は、被審査側は何を聞かれるかが予想でき、審査員は答えを予想して質問する、緊張感を欠いた質疑応答の場となり、被審査組織が望み、納得する不適合の指摘が結論となるという将来が予想される。これは悪いことではない。何を保証するでもない登録証であるなら、その発行手続きのための審査が、関係者の負荷軽く、和やかに、円滑に進められることが合理的であるからである。但し、虚飾の権威がはげ落ち、思う通りの結果が得られる審査に高い料金を払う認証取得組織はいないから、認証機関は値下げ競争に向かわざるを得なくなるのであろう。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-96>

87. 推測:有効性審査論議の裏側 (2) それぞれの思惑
  日本振興銀行の金融庁検査忌避事件で前会長や現社長を初め経営幹部5人が逮捕された。容疑は立入検査に対して業務内容隠蔽のため電子メールを削除し、虚偽の説明をしたこととされる。ISO9001/14001の認証審査でも、組織による虚偽説明や事実の隠蔽があれば不祥事の発生を予見できないから、銀行検査の場合と同様に重罪である。JABはこれに対する対応の指針を「推奨事項」として昨年定めた。これによると、虚偽説明が後に判明した場合には、認証機関はこの組織を登録の一時停止、又は、取消し処分に付し、更に、一年程度の期間の再申請を受付けないようにすることがあってもよい。このJABの「推奨事項」は銀行検査と比べて如何にも甘い。
 
  しかしこれは認証機関にとってはありがたい。審査を厳しくすると顧客が逃げるのが現実である。審査では不適合は数多く見つかるが、ほとんどを観察事項とか改善事項という形にして不適合指摘の数を絞り、更に、是正処置をとりやすい不適合を選ぶというような操作が審査員の智恵となっている。審査を厳しくし、是正処置要求を増やしても認証組織は対応できず、多くの企業が認証制度から脱落し、新たな認証取得に二の足を踏むことになるのは必定である。これでは認証機関は生きていけない。不祥事や虚偽説明に対する制裁を強化することが、登録件数の増加か減少のどちらに繋がるかと言えば、後者であることに間違いない。金融庁はお役所だからよいが、認証機関としては顧客に厳しくなれない。
 
  JABのこの甘い処置の真の狙いは認証組織、つまり、企業の保護にある。日本にはTQCがあり、その結果で世界に冠たる品質競争力を持ったのであり、ISO9001のような西洋文明は不要である。ISO9001と認証制度は日本企業を欧州市場から締め出そうとする西欧の陰謀である。ISO14001も同じ意図を潜めている。下手をすると、西欧流を強制され、輸出可否を西欧の認証機関によって判断され、日本企業の競争力をずたずたにされてしまう。これは大変と、35の産業団体が資金を出して設立したのがJABである。JABの母体は他ならぬ認証組織である。
 
  JABとしては、不祥事で既に打撃を受けた組織に認証制度上の制裁で追い打ちをかけるようなことはできない。以前は、安易に登録一時停止処置を課すなとさえ認証機関に警告していた。最近でも、問題を調査して必要なら一時停止等の処置をするのが認証制度のルールであるという以上のことは言っていない。虚偽説明組織への甘い処置基準も、この一環である。登録証を一時停止されたら、その間の企業は取引に支障を来す。まして、登録を取消されたり、虚偽説明だから永久追放などという処置をとられたら、その企業はおしまいになり兼ねない。これでは西欧の思うつぼである。JABには認証制度の信頼性の低下より、審査で不合格になる組織が出たり、登録を取消される組織が出ることの方が問題なのである。突き詰めるとJABには認証制度の発展には関心がない。社会からの不信で認証制度が世界的に瓦解するならそれほど結構なことはない。JABは日本経済を外敵から守った英雄として晴れて役割を終える。
 
  西欧の陰謀から日本経済を守るという愛国主義は、ISO規格作成に参画する国内委員会メンバーなど業界権威層の認識と行動規範でもある。これは多分にTQCや省エネルギー・公害防止技術の実績を無視されたとの想いとそれへの照れ隠しと関連する。ISO9001/14001規格も認証制度も基本的に日本では不要であり、役立つものではない。業界権威層が、認証制度が不祥事防止と無関係と率先して主張する背景はここにある。本当に不祥事がなくなり登録証の信頼性が回復してしまったのでは、規格や認証制度の有効性が明らかになるから困るのである。しかし、その役割と権威は認証制度あってこそであるから、規格と認証制度の瓦解を望むものではない。こちらになると認証機関と利害が一致する。実際、権威層は規格の意図を無視した形式的な甘い規格解釈によって、登録件数増大を手助けしている。
 
業界権威層、JAB、認証機関のいずれもがそれぞれの思惑から、不祥事の効果的な防止による登録証の信頼性回復を望んでいない。深いところでは異なるが、いわゆる不祥事と認証制度の信頼性回復の問題についてはすべての当事者の思惑が一致している。認証機関としてはひとまず安心だ。
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86. 推測:有効性審査論議の裏側 (1) 気楽な稼業  
   繰り広げられてきた有効性審査論議にもかかわらず、認証業界には組織の不祥事を防止する意思は全くない。認証機関は、組織のマネジメントシステムの品質を審査するのであり、製品の品質や環境影響の大きさを審査するのではない。登録証を不祥事の発生の可能性のない保証だと社会が見るのは間違っている。恐れ多くて言えないがJAB(日本適合性認定協会)はもっとこれを社会にわからせるようにしてもらわなければ困る。
   
 そもそも不祥事防止が認証制度の目的でないというのは、JABの考えである。不祥事を起こした組織にその不適合の再発防止処置をとらせることに認証制度の意義があるのである。この認証制度は製品の検査や財務諸表の監査とは違うのだ。社会から追及されるとついつい、捜査権がないので組織が隠した場合は見つけることはできないとか、抜き取り調査なので全部の不適合は見つけることはできないというような言い訳をしてしまう。こんな軽薄な言い訳を口走ってしまうのは、今の認証審査でよいのかプロとして心にひっかりがあるからかもしれない。
 
  しかも考えてみるとこの言い訳では、認証審査の目的が不祥事の防止だと認めていることにもなる。JABもはっきりと言わないが、規格不適合があれば不祥事が起きる可能性があるという考えである。つまり、規格に適合なら組織は不祥事を起こすことはなく、不適合があるから不祥事を起こすのである。ここまでは認めなければならないのかもしれない。それでもJABは、不祥事防止は認証制度の目的でないと言っている。つまり、認証審査は不祥事発生に結びつく可能性のある不適合を見つけるために行なうとしても、すべてのそのような不適合を見つけるまでの必要はないということである。見落とした不適合によって不祥事が発生したら、認証機関は臨時審査を行い、不祥事発生の原因となった不適合を見つけて、その再発防止処置を組織に要求すればよい。それが認証機関の仕事なのである。
 
  これでははっきり言って、認証審査では不適合を見つければよし、見つけなくてもよしである。どんな審査でも、事後に良悪が判明するというような事態は生じない。審査さえすればお金が入ってくる。マスコミが事あるごとに騒ぎ、審査員への批判の声も聞くが、実際の認証業務においては、どの組織も認証機関の要求に従順だ。認証審査でも審査員は丁重に応対され、その判断や所見はありがたく拝聴され、受け入れられている。当事者は今の認証審査で満足している。それなのに肝心のJABが世間に押されて、不祥事防止に関連して有効性審査をしなければならないと言い出した。3年かかったが最後にJABが「マネジメントシステムが規格の要求事項に適合しているということは、有効に機能していることでもある。だから審査では有効性を確認しなければならない」と結論を出してくれた。何のことかわからないと審査員から不満の声を聞くが、少なくとも不祥事という言葉はどこにもない。もうこれからは不祥事のことは考えなくてもよいと言うことである。
 
  これを気楽な稼業だと言われるなら、JABのお蔭だ。JABには認定審査であれこれ細かいことを要求されるが、そんなことは大したことではない。JAB結論の「適合性審査では有効性を確認しなければならない」に沿うように何らかの形をつけて、JABの社会に対する顔をつぶすことのないようがんばっていこう。
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77縮みゆくISO9001/14001認証バブル  
   日本では頭打ち傾向が続いていたISO14001の登録件数が6〜9月期で2期連続の減少となり、どうやらこの1〜3月期をピークに減少に転じたらしい。ISO9001の登録件数は既に2006年の10〜12月期をピークに減少を続けている。 JAB認定を受けていない認証機関の登録件数は、両規格共になお増加し続けているが、両者を合わせた総登録件数で見ても、前回調査の07年6月末の時点より両規格とも減少している。 ISO9001は英国では04年末がピークで、07年末で既にピーク時の70%にまで減少している。このピーク時の登録件数が50,884件にものぼったのが、サッチャー政権の政策の単純な延長としての意味のない多数の登録の結果であるとするなら、登録件数の激減はこのバブルの崩壊と見做すことができる。
 
  日本のISO9001登録件数の消長は建設業界の登録の急増と急減の影響を強く受けている。 入札での優遇処置という幻の登録利益に踊らされた結果のピーク時の15,000件もの登録件数は、入札優遇幻想バブルの崩壊で今日までにJAB統計の減少総件数に匹敵する3,600件も縮んでいる。 ISO9001認証制度の狙いは日本の品質競争力だったのに日本が先進国ダントツの登録件数であるのは、欧州輸出に必要という恐怖幻想に踊らされたバブルの要素が濃厚である。 ISO14001の登録件数も日本では世界的に異常な多さである。 地球環境に微々たる影響しか持たない多くの組織が、今日では改善が種切れになり登録維持に四苦八苦しているが、これもエコ自称バブルである。登録の価値のないことに気づいた地方自治体が続々と登録を返上しているが、こちらの税金無駄遣いバブルは急速に消滅に向かうだろう。
 
  審査員の登録制度では、審査員登録者がISO9001はピーク時の86%に、ISO14001は76%にまでそれぞれ落ち込んでいる。この登録者でもなお、審査業務に従事している者は1/3程度であり、一般企業の社員やコンサルタントなど資格をもつ意味のない者が登録者の過半数である。現役社員以外の多くは00年前後に現役定年と共に参入してきた人々であるから、今後は需要の減少と高齢化で引退し資格を放棄する人が増える。また、企業が社員の資格維持に必要な費用の無駄に気づいて資格更新をとりやめることが益々増すことも間違いない。
 
  研修や出版物が、苦戦していることは間違いない。ウェブサイトの閲覧も激減している。著者の分析では、ISOはどんなものかとの関心やコンサルタント探しのためのウェブサイト検索は激減し、規格解釈や審査での指摘への疑問に関する情報を求めるサイト検索はそんなに減っていない。研修や出版物もウェブサイトも組織の初めての登録取得に付随する知識需要というバブルに依存してきた訳であり、登録が行き渡った今日で本当に規格を勉強しようとする少数の人々を相手にするしかなくなった。
 
  日本のISO9001/14001認証関連業界のこれまでの盛況は多分に バブル のなせるところであった。登録件数の頭打ちや減少傾向を不祥事頻発による認証制度の信頼低下を原因と懸念する声もあるが、そうではなさそうである。認証関連業界は、登録証で受ける利益に見合って組織が支払う費用によって成り立つ事業として生き残りを追求しなければならない時代に入りつつある。認証産業はどこに行くのだろうか。
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 59. 泣く子と地頭とJRCA
    「泣く子と政府には勝てない」とは、福田首相に呼びつけられ法人事業税3,000億円の召し上げを承諾させられた顛末を説明する石原都知事の記者会見での発言である。威勢のよい日頃の政府への対抗姿勢をあっさり覆すはめになった照れ隠しのために諺「泣く子と地頭には勝てない」がちゃっかり拝借された。ところで、ISO審査員にも、泣く子と地頭以上にどうすることもできない存在がある。日本でISO9001審査員に資格証を発行する権限を独占するマネジメントシステム審査員評価登録センター(JRCA)である。
 
   JRCAの形式主義と官僚的判断と対応に対する不満や不信は、審査員の世界では先達のJRCA創立時期の体験を始め数々の逸話が語り継がれているが、今や1万人を越えるに至った審査員資格保持者の多くにとって自身の体験となりつつある。JRCAは要員認証機関に関するIEC/ISO規格の制定を理由として審査員資格基準を変更し、審査員資格の毎年の維持と3年毎の更新の手続きにこれを適用することを図っている。この移行手続きでさらに多くの審査員が泣かされている。
 
  JRCA NEWS December 2007号によると、新制度での資格維持、更新の申請に対して、2007年7月を例にして申請245件に対してその51%に申請書類の不備があり、追加資料を要求したということである。この数値を見て世間の人々が、JRCAが審査員を厳格に審査していると安心するのか、はたまた、申請書類もまともに書けない頼りない審査員だと不安になるのか、興味のあるところである。しかし、審査員にとっては、蔓延する苦労話の数値による裏付けであり、これほどの異常な事態になお自らを顧みず、理不尽を押し通すという怪物の正体見たりである。
 
   例えば、申請受理拒否の68%がCPD(継続的専門能力開発)の書類の不備だそうであるが、能力開発が不十分というのでなく書き方がまずいということである。記事は記入に関する注意事項を掲載しているが、具体例として例えば、能力開発の目的の記述として「審査員捕である。第三者審査経験はない。自組織のQMSの効率化を高める」では不合格であり、事務局メンバーとして無駄な仕事が増えたという声がある等の前置きの下に、「私自身も…自社のQMSの効率を高める必要性…を感じていたが、実践に移すだけの知識・技術がなかった。そこで今回、効率化のポイントを知ると共に、それを実践する方法を取得する」と書けば合格だそうだ。また、能力開発で習得した事項の書き方として、「食品関連企業の審査に当たっての、…、…、関連法規制」ではだめで、「講師の説明により、…。また、関連する法令について知識を増やすことができた。特に重要な法令は規格項番に合わせて理解することができたので、今後の審査に活用できる」ならよいのだそうだ。
 
  審査員が資格取得後も継続的に能力開発努力を続けなければならないというのがCPD書類の提出を必要とする理由なのだが、能力開発実績が十分でないという理由で資格維持、更新に失敗した話は聞かない。要するに審査員には、「私は….に欠けるところがあり、これを克服するためには…を勉強する必要があり、…の方法で勉強した結果、…がわかりました。これからもがんばります。」とJRCAにご報告する従順さが必要なのである。審査員を高校生程度とみなし駄々をこねて泣く子に目くじらを立てても大人気無いが、それが地頭以上の権力で強制されるのではかなわない。
このページの先頭へ H20.1.7

 58競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出
<登録件数推移と認証機関数>
   ISO9001,14001の登録件数が伸び悩みの様相を示して数年になる。JAB統計でISO9001の新規登録は遂に今年1/4期からマイナスとなり、総登録件数が減少し出した。ISO14001も直近の3/4期の総登録件数の増加率は0.7%にまで下がった。審査登録機関(今後は“認証機関”と呼ぶ)の業績も影響を受け、淘汰が始まっている。例えば、JAB認定の認証機関は今月初めでISO9001が52機関、ISO14001が44機関であるが、認定番号にはそれぞれ11件、6件の欠落があるから、この分だけ廃業や合併でなくなったと想像される。しかしこの情勢の中で、海外の認定機関の認定を受けただけでJAB認定を受けずに活動する認証機関が増加している。筆者の調査では、ISO9001で21機関、ISO14001でも21機関もある。登録件数も概算推定で6,500件、1,500件もあり、JAB統計の43,000件、21,000件のそれぞれ15%と7%に相当する。これら認証機関の多くの活動開始が近年であることも踏まえると、日本の登録件数がJAB統計ほどには衰えていないこと、また、それでも飽和しつつある市場にJAB統計の1.5倍もの多数の認証機関がしのぎを削って既存登録を含めて登録組織を奪い合う状況であることが推察できる。
   
<適合性評価事業の特質>
  適合性評価という事業は元々競争の余地が小さい。製品たる登録証は規格適合の証明であるから、どの認証機関が発行する登録証も価値は同じである。その上に認証機関の活動に関する国際的基準があり、通常各国にある認定機関、日本ではJAB(日本適合性認定協会)、が認証機関の登録証発行活動と登録証の価値を一定のものとする枠組みが確立している。更に、各国の認定機関はIAFなる団体を結成し、その下での多国間相互承認協定により登録証の価値の世界的整合が図られている。製品の価値に差をつけようがないのである。
 
<非JAB系認証機関の活動の特徴>
   非JABの認証機関はほとんどが外資系で母国の認定機関の認定を受けている。ほぼ一様にその国際的活動と実績を強調し、日本企業の輸出先で認定を受けていることを強調するものもある。しかしこれは国内だけの企業に対しては逆に弱みとなる。一方、日本独特の規格解釈や認証制度理解に関しては、筆者の経験で判断する限りはJAB傘下の認証機関と変わることはない。審査がJAB枠組みの下の日本人審査員によって行われるから当然であり、従って登録証の信頼性という点でも非JAB認証機関に格別の競争力がある訳ではない。競争力があるとすれば、受審組織を顧客とみなす政策にあるようで、例えばJABが事実上禁じている予備審査も行っている。この線上かどうか、低価格を堂々と掲げる認証機関も少なくない。実際に筆者も驚く価格水準を一度ばかりか体験させられた。
   
<価格競争>
   差別化が困難な認証事業界では、市場が狭まり顧客の奪い合いになると価格勝負が一番手っとり早い。米国では既に価格競争に陥り、IAF枠組みの認定を受けない認証機関や、認定機関の認定を偽装する認証機関まで出ており、格安料金を売物とする認証機関による安易な登録証発行など、混乱する状況が各種情報に垣間見られる。登録証の取得と維持が組織の唯一の関心事であることが大半である日本の状況では、安価で手間を要せずに発行される登録証は殊更、魅力的である。非JAB認証機関の筆頭のM社は「審査費用の低廉化、顧客の納得の審査料金」を掲げる一方で、2009年末での業界一のシェア獲得を宣言している。この目論見通りだと全登録の20%強の登録証を発行する認証機関となるから、その価格政策が認証市場全体に強い影響を及ぼすことは必至である。
 
<まとめ>
   登録証の信頼性の議論は、引き続く品質、環境の事故や不祥事に加えて、激化する低料金審査競争の中に埋没し、忘れられることになるかもしれない。一方で、認証機関の激しい競争で登録取得のハードルが下がって、登録取得が小規模組織に拡がり、やがて認証制度は登録証で社長室の壁を飾ることを目的とするものになっていくのかもしれない。登録証への信頼が失墜している今こそ、顧客や利害関係者を裏切らない保証としての登録証を発行できる能力が認証機関の競争力となり得るし、それなら、安売り競争で身を削ることにもならないと思うのだが、どうであろうか。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-58>

 50. ISOコンサルタント登録事業打切り  −規格協会、やはり自分のためだった?
   日本規格協会は、公益を謳い“標準化団体の責務”だとして始めたISOコンサルタント登録事業をわずか1年半しか経たない3月末に打切った。筆者は、ISO9001規格登録制度の機能不全の現状への対応を理由にしたこの事業の開始に反対した。それは、機能不全の原因が一握りの指導層がすべてを決めて関係者をこれに従属させる権威主義とこれを実践する統制の仕組みにあり、この事業はコンサルタントに管理の網を被せ、同時に管理機関が事業益を得るというお決まりの統制構図に合致するもので、機能不全の更なる進行に繋がると考えたからである。
 
   規格協会は打切りの直接理由として、コンサルタントの登録も組織の利用も少なくて、「事業継続に必要な資源が社会への貢献度に見合わない」と判断したことを挙げている。つまり、儲からないからやめるとのことである。同協会の“公益を担う責務”を考えると無責任な、あり得ない所行であるから、やはり、機関益が目的で、公益や責務は口実に過ぎなかったと考えざるを得ない。
 
   さて同協会は、登録コンサルタントを集めて合計4回の研修会を開催した。これは、能力あるコンサルタントの提供という事業目的の推進のために、既に組織に紹介するに足る能力があると認定した登録コンサルタントにも更なる能力向上を求める機会であるのであろう。しかし、研修会のテーマは、「役に立つ内部監査」とか「組織の違法行為防止」という通俗的話題と幾つかの規格条項の解釈である。これは業界指導層の思惑に沿うテーマであっても、コンサルティング能力とは全く関係がない。しかも、いずれの研修会もグループ討議と発表という形式であるが、業界著名人が“メンター”として討議と結果を指導し講評し結論をまとめている。自立して職業を営むコンサルタントの更なる能力開発は、拠って立つ専門知識について先生のお説を拝聴し、導かれて、学習することなのである。業界指導層の認識では、“一定の基準を満たすコンサルタント”とはこの程度の人間であり、業界ではこのように従属的な何事にも無批判な人間が期待されているということである。
 
   因みに審査員についても例えば、毎年の資格維持手続きにおいて“専門能力の継続的開発”の実績報告を求められるが、これには自身の強みと弱みを明確にし、何を目的に何を習得したかを500〜1000字にまとめた文書を提出しなければならない。まるで高校生の夏休みの自習のレポートであり、審査員も子供扱いである。日本のISOマネジメントシステムの適合性評価制度では、この程度のコンサルタントが組織を指導し、この程度の審査員が審査しているのである。
 
   事業打切りの発表で、「社会的要請は強くないと判断せざるを得ない」と言い訳けしているが、もともと社会が要請したものではなく、自身が社会のために必要と理屈をつけて始めた事業である。理由の説明が変転するなど作られた必要性に立ち、紹介するコンサルタントの業務能力の何を保証するのかも説明できない事業がうまくいかなかったのは不思議でない。しかし、事業の失敗がこのような正当な理由ではなく、管理されることに慣れて強制されないことへの関心を持てない多数の個人のコンサルタントによる無意識の無視が主因であるとすれば、業界の問題の風土の改善の端緒にもならない。ともあれ、この騒動は、業界の権威的風土とその中でプロの個人が制度の枠組みで子供扱いされているという事実を社会に垣間見せるという思わぬ“社会的貢献”を演出した。
このページの先頭へ H19.4.12(修 4.13)

 48.  ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言 −業界広報誌への読者の反乱?
<“アイソムズ”休刊宣言>
   ISOマネジメントシステム規格専門の月刊雑誌“アイソムズ”がこの12月号をもって休刊することが明らかになった。理由の説明はないが、情報伝達手段としてのインターネットの発展に触れたウェブサイトの休刊の弁から、読者数の減少が主因であることがうかがわれる。筆者は、この雑誌の発行元であるISO研修機関の研修を受けて審査員資格を得て以来、同誌の読者であり、2002年には投稿論文がその5,6月号を飾ったこともある。筆者の目には、日本の主要ISO専門誌3誌の中では質、格調の観点で最も優れたものに写っていた。しかしながら、実は今年の3月で6年間続けた定期購読を打ち切った。理由は同誌の記事に読むべきものがなくなって久しくなったからである。打切りの通知に永年の読者としてのお礼の言葉を添えたが、なしのつぶてであったことが気になっていた。その1年も経たない休刊宣言だから、既に当時読者離れが深刻化していたものと推定される。筆者は随分我慢強い読者であったということである。
   
<ISO専門誌の実態>
  “アイソムズ”に限らず、"ISOマネジメント"や"月間アイソス"など日本のISO専門誌には、ジャーナリズムとしての主張が希薄である。内容は一般に、規格解釈や規格の適用或いは規格作成動向など関連する事項に関するインタビューか解説や説明の記事と組織の規格適用体験の発表記事の2種類が中心である。前者で採り上げられるのは決まって、業界指導層かそれにつながる著名層及び審査機関の責任者や”ベテラン”審査員の見解であり、内容はどれも業界権威につながる金太郎飴の切り口を思わせる同一かつ同質振りである。記事は普通、これをひたすらありがたく拝聴する形でまとめられている。後者は例外なく、首尾よく実行したことを指導教官に褒めて貰うための生徒の発表の如くの文面で、組織のシステム構築や運用に関する成功体験の報告という業界権威に忠実な内容である。
   
   記事には問題提起や現状批判の視点は存在せず、今や常識となったISO取組みの問題ある実態に切込むこともなく、国外に目を転じることもない。特集や連載記事となる時代を反映した時々の話題やテーマ も業界指導層の受け売りであり、業界利益を代表する人々の見解を無批判に伝えるだけである。日本のISO取組みには、ISOへの日本代表を務める層を頂点として、それにつながる指導層とJABやその支配下の審査登録機関、研修機関、審査員が登録組織の上に君臨するという業界秩序が確立しているが、ジャーナリズムもこの中に身も心もどっぷりと浸かって、業界広報機関誌に成り下がっているかの状況である。
   
<読者の関心の変化>
   日本でISO取組みが始まって15年も経って、ISOマネジメントシステムとはどんなものかという初歩的な興味から、規格適用の効用への深まる疑問や登録組織の相次ぐ不祥事或いはこれらへのJABや審査機関の対応など自らのISO取組みに資し、疑問に応える情報へと読者の関心は大きく変化している。読者が体験し見聞きする現実に目を塞ぎ、相変わらず業界権威の意向と業界利益を擁護する情報しか報じないISO専門誌から読者が離れていくのは当然である。
 
<空疎なISO9001取組み>
   顧客に依存する組織は、顧客のニーズと期待を満たすことではじめて、その事業を継続させ発展させることが可能となる(ISO9000 2.1)。組織は製品に関する顧客満足度を監視、測定し(ISO9001 8.2.1)、分析して(同 8.4 a) )、変化する顧客のニーズと期待を把握し、これに対応するよう製品を改善しなければならない(5.6.3 b))。 これを、ISO9001の啓蒙を事業とする“アイソムズ”発行組織が知らず、また、実行を怠ったとは考えられない。しかし日本では、JIS規格付属解説のように、顧客要求を辛うじて達成すれば顧客満足となる(3.2 e)とし、製品の改善は必ずしも必要でない(4 p))とされている。このような解釈に沿う見解を記事にしてきた雑誌の発行元が、そのような品質マネジメントを行い、その結末が雑誌の休刊宣言だとすると、日本の問題あるISO取組みを身をもって証明したことになる。
このページの先頭へ H18.12.15(修: H19.1.11)

 38.ISO機能不全の構造要因:
     
(副題) 制度に反対する本当の理由
            (その5)規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
   日本でISO9001/14001が機能していないことは今や業界の常識である。日本規格協会の創設した コンサルタント登録制度はこの原因がシステム構築支援に当たる コンサルタントの能力不足にあるとする考え方に基づいている。しかしこれは、現実に目をそらした、ISO機能不全の実態を強化するだけの的はずれの対応である。
 
   マネジメントシステム規格の規定は、世界の企業の成功体験を基礎とした効果的な マネジメントの規範である。例えばISO9001は、変化する顧客のニーズと期待を適切に掌握し、それを満たすように製品・サービスを絶え間なく改善、提供し続けることによる事業の繁栄が狙いであり、このための組織の マネジメント業務に対する必要条件を規定している。規格に則って業務を効果的に行えば、品質不良や苦情を減らし顧客の心をとらえて競合する他組織に伍して市場競争に勝ち残り繁栄できる。
 
   ところが日本では、規格は審査登録のための組織に対する要求を規定しており、ISO9001は顧客の「売り手はこうあってほしい」という要求を、顧客に代わって要求しているものとされている。然るに規格解釈においては、規格は製品の改善は要求しておらず、顧客要求をかろうじて達成する程度の顧客満足が狙いであり、継続的改善と言っても改善と呼べる活動をやめなければよいということになっている。つまり、顧客は不良の減少やニーズに合致する製品を望んでおらず、改善の振りだけを求めていると見做なしている。さらに、規格の要求は「最低限」であるから、規格要求事項に合わせて構築した品質マネジメントシステム はそれだけでは役に立たず効果がないと説明される。
 
   登録審査は、組織が規格の要件を満たして業務を行っており、顧客のニーズを満たす製品・サービスを提供する能力を有するという安心感を顧客に与える手段である。 このお墨付きの登録証が、輸出など未知の相手との取引や サプライチェーンの企業間取引において組織の製品・サービスに対する安心感を与える。
 
   しかし日本の審査は業務の"仕組み"が対象であり、システムの品質と製品の品質とは別物である。登録証は製品の品質保証でないとの表面的規格解釈が殊更に強調され、規格の通りの業務では効果が出ないという規格解釈の下で規格への適合性が審査され登録証が発行される実状への疑問も生まれない。登録証は顧客にとって安心のお墨付きではなく信頼してもらえるように仕組みを整えた証明に過ぎないとも説明される。審査登録機関は審査は受審組織の顧客や社会のための監視機能であると言う。しかし、組織の不祥事には顧客や社会に責任をとらない。
 
   このように、日本の規格解釈と審査登録制度理解は、規格や登録制度が機能することを否定する考えの上に立っている。 この考えに立って、規格に従った業務を、組織が実行し、 コンサルタントが指導し、審査員が審査し、審査登録機関が登録証を発行している。日本でISOマネジメントシステム が機能しない真の原因はここにある。
 
   問題はこれら解釈が規格作成関係者を中心とする業界指導層の専決事項であることである。その解釈は企業で発達した内部監査や是正処置、既存学問体系である監査、更に、マネジメントとは異分野の適合性評価にまで及び、その見解は批判や問題提起、議論の対象にならず、ISO専門誌もこれにひれ伏す。異なる見解の表明は「首をひねるような、もっともらしい内容の解説をする自称専門家」とか「商売拡大のみを目指しているとしか思えないコンサルタント」として切って捨てられる。この権威主義と関係者をこれに従属させるように機能する登録制度管理機構が日本のISOを機能させない構造要因である。
 
   日本のISOの現状を安価に登録証の入手を望む組織の増加により登録制度の信頼低下が進む「負のスパイラル」と断定した「管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」(H15.4.25)の中心メンバーも業界の指導層と管理機構の人々である。報告書の アンケート調査結果では、顧客の評価向上、製品・サービスの質の向上、品質システムの基盤構築といったISO9001の登録取得目的を達成したと判断する組織は55%に過ぎない。しかし、これを遺憾とすることも、背景や原因を分析した形跡もないまま「負のスパイラル」を持出し、原因を審査機関の倫理性、審査員とコンサルタントの能力不足に帰している。その後にこの報告書の提唱の実施で少しでも状況が改善したという話は聞かないが、制度管理諸機関の権限と事業の拡大の事実は明らである。
 
   規格協会のコンサルタント登録制度は日本のISOを機能不全にしている構造要因の申し子である。発想はコンサルタントの管理を図る権威主義であり、中身は書類が整えば能力を認めるという形式主義であり、無能な登録コンサルタントによる組織の被害には責任をとらないという無責任主義であり、結果として機関益がもたらされる。この制度は日本のISOの機能不全の現実を一層強固なものとし状況を悪化させ、さらにその対応として管理諸機関の権限と権益の生むという過去の”スパイラル”の反復である。日本経済の発展のためにISOの健全な発展を願う者として、日本規格協会が強行する「QMSコンサルタント登録制度」には反対しなければならない。
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 36. 制度創設の理由が取替えられた訳は?
 
    −(その4) 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
   日本規格協会はISOコンサルタント登録制度を、ISO10019の普及啓発、広報活動のためと説明していたが最近、日本工業標準調査会による「コンサルタント評価・登録制度の創設の提唱」を受けたものと説明を変えた。啓発、広報のためとは苦しい説明だったが、公式な提唱を受けての制度だというなら大義名分がつく。
 
   それならこの説得力のある説明をなぜ最初からしなかったのであろうか。そもそも初めの説明も新しい説明も同じ「管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」の記述を根拠としており、初めの説明は報告書の第2章、新しい説明は第3章にそれぞれ書かれた提唱の引用である。規格協会が本当に後者の提唱をきっかけとして検討し制度を創設したのなら、目的意識は明確であるから間違っても前者を制度創設の根拠に挙げることはないはずである。新しい理由には後知恵の感が免れない。
 
   一方、協会が一般募集意見を集約し7月28日付けでウェブサイトに公表した「パブリックコメントのまとめ」が今日、同じURLで標題、形式も同じで日付のみ8月29日に変えられ、内容では制度創設の理由の説明が元の「啓発、広報活動」から新しい「公式の提唱を受けて」に差替えられている。一旦公表した内容の核心部分を変更しながら、何事もなかったかの如く装うという行為には不信感が増す。
 
   ところで新しい理由の正当性であるが、確かに前記報告書(3.3.1項)に「コンサルタント評価・公表制度の創設」の提唱がある。ただし各提唱の実施と追跡についても巻末の図表にまとめており、コンサルタント評価・公表制度については「審査登録機関、研修機関、審査員評価登録機関、認定機関、業界団体など」を当事者として「審査員評価登録実績のある機関を中心」に作業を「H16年度着阮狽ヘ実施」するべきと明記され、日本工業標準調査会による「取組みの実施状況やその効果などの検証」が求められている。
 
   規格協会が制度創設の根拠をこの報告書の提唱(3.3.1項)に求めるのなら、制度は巻末図表の手順を踏み、承認されたものでなければならない。然るに、各機関、団体から成る制度作成の取組みがあったことは知らないし、規格協会の説明もこれに何も触れていない。規格協会が独自に検討し創設したなら、報告書の提唱を都合よく利用しているだけである。
 
   制度に対して形通りに意見を募ったところ思いがけない強い反対意見があり、制度創設の正当性の適当な理由を前記報告書に見つけて引用したが、これへの異論に当面して改めて報告書を繰ったところもっと都合のよい部分を見つけたが、続きの巻末図表に気づかなかったというような筋書きも想像できる。規格協会が「一定の水準のコンサルタント」を選別する制度を急ぐ背景には、ISOコンサルタントとはこのような少し調べればわかるような都合よい説明ででも納得させられる程度の知性と判断力の持ち主であるとする偏見があるのかもしれない。
   
   当の組織とコンサルタントにとって何の利益も認められない登録制度だが、規格協会の必要性、公益性の説明はいまだ正当なものになっていない。一方で登録を無視する者は条件を満たしていないとみなされ、仕事の機会を失うはめになると関係者に公言させ、反対意見を抹殺して制度を押し進めようとしている。
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 35. 何を公平に評価するのか
         −(続々) 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
   新設のコンサルタント登録制度に関して規格協会は、登録の「公平性」の確保のため「申請書類の評価」を「公益団体を中心に広く利害関係者」から成る登録委員会に委ねると説明している。このことで、登録の価値を権威づけ、高額な登録料金の正当性を主張したいのであろう。
 
   この制度の「一定基準を満たす」コンサルタントになるには、登録基準が定める条件を満たさなければならない。登録基準は、@学歴、A3種類の職歴(判断を行える地位・管理的地位、品質実務、専門分野実務の各経験)、B6種類の知識(品質管理基礎知識及び5種類の規格の知識)、C個人的特質、D倫理的行動、Eコンサルタント業務の実績、及び、F関連規格等の知識、に関して14の条件を定めている。そして次の書類がそれぞれの登録条件を満たすとみなされる。つまり、@には卒業証明書、Aには職歴書、Bには研修修了書(計6通)、Cには業務上関係者の推薦書(計2通)、Dには誓約書、Eには顧客の推薦書(計3通)、Fには受講したセミナー名などを記した記録書である。登録委員会は本人を試験も面接もせず、これら書類を評価することで条件を満たすか否かを決定する。
 
   @B以外の書類は書式が定めているから内容の適否という問題はない。登録委員が評価することがあるとすれば記入漏れの他は書類の真贋又は記述の真偽である。CEの書式には「推薦者に問合わせするかもしれない」と偽や嘘を戒める記述が含まれているが、問合わせに嘘を告白する推薦者がいるとは考えられない。本人が書くAの職歴書、Dの誓約書、Fの記録書の虚偽記述も、身元調査や面接もしないで見破ることは不可能だ。@の卒業証明書の偽造の摘発も難しい。Bは規格協会認定の研修講座の修了書かどうかの確認である。評価の実態は単なる事務的確認作業の域を出ない。登録委員は、事務局が適切であるとして提出する15通の書類を眺めて「ああそうですか」というしかない。このような評価なら誰でも出来るから有識者を登録委員に招請するまでもない。
   
   Bの知識に関しては、研修会の修了証がなくても講師経験、著作、論文発表があればよい。それらが必要な知識の保有の証明になるか否かを登録委員会が評価する。JABやJRCAの講演会や研修機関の講座の講師を務め、専門誌に解説文を発表する著名な人々がコンサルタント登録することは、登録制度の権威づけには必須である。著名人に今更研修会の受講を要求できないから、この登録条件が適用されることになる。しかし登録委員が講演や研修会を傍聴せず論文も読まずに何によって知識水準を「公平に」評価するのだろうか。その人の著名さや講演会や雑誌の格の高さで評価されるのなら、有識者の出番はない。
 
   実際に書類審査で何を「評価」するのか、記入漏れや表現の不整合の指摘の他に登録委員が見識と能力を発揮して「評価」する余地があるのか、規格協会の説明はない。一方で「公平な評価」を持ち出して、登録の意義深さを訴えている。これは公的機関に期待される公正さ説明とは言えない。
 
   ところで、雑誌記事で制度を普及させる方法を尋ねられて規格協会は、登録委員を出している中小企業関係団体の勉強会、講演会を活用すると述べている。これは語るに落ちるということであろうか。「評価」のためなら必要性はわからないが、登録制度の普及が目的だというなら各界からの代表者から成る登録委員会設置の理由がよくわかる。委員会には審査登録機関協議会からの参加も求めるというから、システム構築を支援したのが登録コンサルタントか否かで登録審査工数を変えるというような制度普及策も規格協会は期待しているのかもしれない。
 
   規格協会の説明は筋が通らず、事実に率直でないという意味で公正さが欠如している。登録制度の意義を主張するのなら、評価が「公平」かどうかではなく、まず説明が「公正」でなければならない。
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 33. 理屈の通らない必要理由の説明
         −(続)規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか
   日本規格協会はそのISOコンサルタント登録事業に関するパブリックコメントを締切った。結果は22件の意見と回答にまとめられて発表されているが、登録制度、登録条件についての質問が各々3件、15件で、制度創設に対する批判や疑問の意見はわずかに4件である。世の中は大賛成と言いたいのかもしれないが、お手盛りの意見集約の感じもする。
 
   ともあれ、ここで規格協会は登録制度の開始理由について回答している。これによると制度創設の根拠は「管理システム規格適合性評価専門委員会報告書(H15.4.2)」にあるとのことである。因みにこの委員会は、ISOマネジメントシステム規格の認証制度への社会の不信を背景に設立されたものであり、現状を「コンサルタントと審査の迎合を原因とする負の”スパイラル”」が回っている状態と断じ、審査とコンサルティング行為の分離、審査の質の向上、「コンサルテーションの質の向上」の必要を提起している。
 
   規格協会は、報告書がコンサルタント選考の考え方、注意点の組織への普及啓発、広報の必要性に言及していることを取り上げ、「ISO10019の普及啓発、広報活動」が「標準化団体」としての責任であり、この普及、広報活動を行うためにコンサルタント登録制度が必要であると、制度創設を理由づけている。
 
   これは筋道の通らない論理である。登録制度とはコンサルタント選考の指針を組織に教えるのでなく、規格協会自らが組織に代わって指針を実行することに他ならない。登録制度は目的と効果において啓発や広報とは正反対のものである。規格協会は、普及啓発、広報活動が世の声であり、それを行うのが責任だと言いながら、それを実行しないで、それに反することをしようとしているのである。
 
   普及啓発、広報活動のために登録制度が必要というのも訳のわからない論理である。「ISO10019の普及啓発、広報」のためなら、組織にお得意の研修セミナーを提供するのが効果的である。然るに規格協会は登録条件としてのISO10019研修セミナーを傘下の研修機関に開設させながら、組織への普及啓発、広報活動としてはセミナーも何もやっていない。普及啓発、広報活動をやらないまま、「普及啓発、広報活動に伴い、"どこでQMSコンサルタントを探したら良いか" が問題となる」と先読みして登録制度の必要を主張しているのだ。それなら、実際に要望が出てから手をつければよいことである。今なくとも、普及啓発、広報活動を進められない訳ではない。
   
   ISO10019によるコンサルタント登録制度に反対してきた日本では、登録制度の社会的不利益が広く認識されている。この中で日本規格協会は「ISO10019の普及啓発、広報」を名目に登録制度を強行せんとしている。然るに、「普及啓発、広報」に登録制度がなぜ必要かについては筋道の通らない、訳のわからない理屈を展開しかいる。一方で肝心の「普及啓発、広報」活動を行っている形跡はない。大義名分が明確でない以上、登録制度に伴う規格協会自身の利益の方に世間の関心が寄せられるのは自然の成り行きである。
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32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか  
    コンサルタント選定の指針を規定するISO10019が今年1月に制定された。規格は、組織が適切なコンサルタントを選ぶことができるよう、コンサルタントに必要な能力と倫理的側面を詳しく規定している。
 
   ところが、日本規格協会はこの規格を利用して「一定基準を満たすコンサルタント」を登録する制度を近く発足させる。説明では、規格を参考にコンサルタントの具備すべき能力や資質について同協会が基準を定め、これを満たすコンサルタントを登録し、その情報をウェブサイトで公表するという制度である。目的は組織が「コンサルタントの力量を見極めて的確なシステムを経済的、効果的に構築」することとしか説明されていないが、「一定基準を満たす」とうたう以上は「一定の業務能力を持ち、従って、一定の業務品質が期待できる」優良コンサルタントを峻別し不良コンサルタントを排除することと理解される。
 
   登録のために同協会はコンサルタントが定められた種々の知識、力量、資質、実績を習得、保持しているか否かを評価する。この内の各種の知識、技術の習得は審査員資格証又は研修セミナー受講証があれば基準を満たしたと判定され、個人的資質とコンサルタントとしての力や実績に関しても業務上の関係者の推薦書や証明書があればよい。「一定基準を満たす」とは実質的には、コンサルタントが経歴証明書に加えて約15通の受講証、証明書、推薦書、誓約書を提出したという意味である。
 
   「一定基準を満たす」は制度の意図の「一定の能力或いは業務品質」の保証ではなく、登録で不良/優良コンサルタントの峻別ができるとも思えない。実際同協会は、登録がコンサルタントの能力或いはその提供する業務と結果の品質を保証するものとは明言せず、「組織がコンサルタント候補と出逢い、その能力に関する予測や絞込みができ、複数のコンサルタントを比較検討できること」を効用として挙げているだけである。
 
   さりながら、著名で且つ権限を有する公益法人の日本規格協会が「一定基準を満たして登録した」と聞けば、世間は登録コンサルタントに優れた人間性、能力と業務品質を期待する可能性は高い。同協会は制度の実体を認識してか、そうだとは明言しないが、「能力、力量、経験を自負しているコンサルタントの活動の機会を増やす」と優良コンサルタントの登録であるとの誤解を生む説明もしている。制度がコンサルタントを探す組織に有益であるとも思えないのに、世間の誤った好意的理解に適うものかに装っているならまやかしの誹りを免れない。
 
   コンサルタントには登録制度は迷惑である。登録は任意とされているが、制度は不良コンサルタント以外の全員の登録がないと機能しない。同協会は「組織からのコンタクトが増え、実力を発揮できる機会が増える」と登録の利益を挙げ、登録しないコンサルタントは仕事にありつけないと警告している。他方で登録しないと公的機関の認定する「優良コンサルタント」でないとの世間の不信の目に晒される。しかし登録には受講証、証明書等々の書類を集める面倒な作業と登録用諸料金の納付と、更には、毎年の維持手続きが必要となる。書類は同協会の意に沿う内容でなければならない。この制度がコンサルタントの質の向上に繋がるとの同協会の主張は、コンサルタントがみんな従順になるという意味なのかもしれない。
 
   両当事者には利益が実感できない制度だが、規格協会には利益が明確である。第一にコンサルタントからの料金収入で登録、紹介の新事業を行うことが出来、第二にコンサルタントに提出させる知識、技術の証明書の多くに研修機関の研修セミナーの受講証を指定して、傘下の研修機関に利益をもたらす。
 
   そもそも、この規格の作成作業を通じて日本は「規格がコンサルタント評価登録に使われ、社会的コストを増すことにつながる」として反対してきた (阿久津 進(日本規格協会):ISOMS-2003.1,P.50-53) 。国として、ISO9001に係わる各界関係者の総意としてコンサルタント登録制度に反対であったということである。とすれば、規格協会が登録制度を関係者の総意に反して創設するのは自らの利益の追求のためと勘繰られてもしかたない。
   
   コンサルタントの能力ないし期待できる業務品質を誰かが一定の尺度で測定し評価することができるとは思えない。規格協会の登録制度も「一定基準を満たす」と唱えながらも、コンサルタントの一定の能力や期待できる業務品質の水準を保証するものでない。それでもISO行政機関でもある公的機関がこれを開設すると実体と無関係な権威が付随し、必要ない者まで参加が強制される環境が作り出される恐れがある。実際、同協会は当事者に何の相談もなく制度発足を既定路線化した上でパブリックコメントを募集するという権威主義を実践している。この登録制度が機能しないまま規格協会の支配権の拡大に使用されて、日本のISO取組みの発展が阻害されることを強く憂うものである。
 
   日本規格協会は、登録制度の効用に関して世間に誤解を生まないのに十分な程度に正確に明確にかつ論理的に説明すべきであり、何よりもコンサルタント登録制度無用という関係各界の総意に反する行動に関して完全な説明責任を果たさなければならない。
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