ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
03 ISO14001:2015 間違った解釈  ―  誤訳・空論・珍説
環境が組織に与える影響も管理しなければならないのか?
<65-01-03>
0.1 要約  こちら
 
0.2  実務の視点和訳 ⇔ JIS規格用語 対応:  
   
環境経営(活動) ⇔ 環境マネジメント$19-0-1
 
  
 
(1) 2種類の環境影響、環境状態
  2015年版の4.1項には、下記の規定があり、ISO/TC207日本代表委員の吉田、奥野両氏はその著書で、これがISO14001の狙いの大きな変更という趣旨の解釈を述べている。
  
● こうした課題には、組織から影響を受ける(以下@)又は組織に影響を与える可能性がある(以下A)環境状態を含めなければならない
 
  すなわち、他の条項や巻末付属書Aの記述でも「環境が組織に与える影響」というような表現があることを合わせて、04年版では@の組織が環境に与える影響の管理だけであったが、15年版ではこれに加えてAの環境が組織に与える影響をも管理しなければならなくなったという説明である。
 
  これは簡単には、04年版では燃焼ガス排出による大気汚染や温暖化ガス濃度上昇というような組織起因の環境の変化たる環境影響の管理が規定されていたのが、15年版では気候変化で発生する大洪水による組織の被害のような環境起因の組織への影響の管理も環境経営活動に含めなければならなくなったということである。
 
 
(2) 解釈の問題点
  結論から言うとこの解釈は、ISO14001規格の意図や狙いの序文の記述の趣旨が全く変わっていないことを持ち出すまでもなく、規定条文の単純な読み違いに起因する間違った規格解釈であることが明白である。すなわち、4.1項の件の条文は「@又はA」であるから基本的には「@かA」の意味であって、「@及びA」のように解釈することはできない。規格のこの場合の英文“or””は、その前後の意味するものが同じであることから同じことを異なった表現で言い換える意味の「或いは」「言い換えると」という意味である$93。つまり、@とAは同じことが別の言い方で表現されているのであり、規格の意図は「@組織が環境に与える影響、或いは、A環境が組織に与える影響を管理しなければならない」である。
 
  @は04年版と同じ表現であり、「組織に起因するが故に組織の責任として防止又は減少に努めなければならない環境の変化つまり環境影響」を管理しなければならないというISO14001の趣旨をそのまま表した言い方である。一方、ISO14001では組織に起因する環境影響の中で組織の事業の永続的な存続発展のために防止又は減少の管理が必要となる環境影響すなわち著しい環境影響を特定し必要で可能な程度の防止又は減少の活動を行う。規定条文の「A組織に影響を与える可能性がある環境状態」とは、事業の永続的な存続発展を図る環境経営活動の在り方に影響を及ぼす環境の状態或いはその変化の状況」という意味である。ふたつの環境状態は同じであり、これを「組織起因の環境影響の結果」と見るか、「組織の環境責任として取組むべき環境影響の結果」と見るかの違いだけである。
 
 
(3) 結論
  @とAの2種類の環境影響の管理が必要という解釈には、誤訳条文の「又は」を「及び」と同じ意味に受け止めるという初歩的な日本語理解の誤りがある。それに、そもそもISO14001は地球環境悪化防止に組織が責任を果すための環境経営活動の在り方を規定する規格であり、洪水や渇水などの自然災害からどのように組織を守るかということについての規定がある訳はない。
 
H29.9.29 修H29.12.16 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所