ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
04 ISO9001:2015 間違った解釈  ―  誤訳・空論・珍説
「組織の知識」とは「固有技術」のことか
           
<65-01-04>

0.1 要約  こちら
 
0.2  実務の視点和訳 ⇔ JIS規格用語 対応:  
   
職務能力 ⇔ 力量$67; 品質経営体制 ⇔ 品質マネジメントシステム$19-1-1;
 
 
(1) 「組織の知識」とは

  ISO9001国内委員長 山田 秀氏は、2015年版改訂説明会*で、7.1.6項の「組織の知識」を製品サービスやその提供にかかわる「固有技術」のことであると説明している。これは、英文の“organizational knowledge”を「組織の知識」と誤訳したことからも明らかなように、規格の意図を誤解していることに起因する空虚な規定解釈である。
 
 
(2) 固有技術と管理技術
  「固有技術」とは「管理技術」に対応する用語であり、「管理技術」が品質管理や統計学的手法など業務結果が狙いの通りとなるようにするための技術であるのに対して、「固有技術」とはそのような業務をどのように行い、どのような結果を出すかに関する技術であり、 例えば製造技術や加工技術である。
 
 
(3)「組織知」
  これに対して規格のJIS和訳「組織の知識」の英文は“organizational knowledge”であり、経営用語としては「組織内の他の個人の知識と組み合わされた個人の知識」等と定義され(125)、日本語では「組織知」である。そして「組織知」の対局にある概念は「個人知」である。
 
  「組織知」の実態は、要員が業務実行で蓄積した「暗黙知」を「形式知」化し、必要な外部知識情報も織り込んで、組織内で共有して、業務に使用している組織としての知識のことである。「個人知」が特定の要員の頭の中にあり、要員が組織から離れると組織には存在しなくなるのに対して、「組織知」は、要員の出入りにかかわらず継続して組織内に存続し、継承される。
 
  7.1.6項の「組織知」とは「業務の実行、及び、製品サービスの適合性の達成のために必要な知識」であるから、この目的には当然ながら固有技術も管理技術も必要である。7.6.1項の規定は、管理しなければならない知識が「固有技術」に関わる知識か「管理技術」に関わる知識かという問題ではなく、特定の個人の頭にしかない知識つまり「個人知」か、多数の関係要員の共通認識となっている知識つまり「組織知」かということである。
 
 
(4) 文書化
  「暗黙知」を「形式知」化する、また、「個人知」を「組織知」化する普遍的な方法は、文書化である。規格7.5項で「品質経営体制の有効性のために必要であると組織が決定した文書化した情報」として作成が必要とされ、また、組織で実際に使用されている文書、例えば、業務の規範を定める文書、各業務の方法、基準を定める手順書、業務実行の結果とその管理の記録、発生した問題の原因調査の記録や新技術の開発記録、各種の報告書は、「組織知」を表している。
 
  7.5項の「文書化」の規定は、業務に必要な知識を文書化し、使用できるよう維持し、必要な内容に改善するためのプロセスアプローチ/PDCAサイクルに則った管理の在り方を示しているのに対して、7.1.6項の「組織知」に関する規定は、文書化する知識の質が経営目標達成の観点で最新的で適切、十分なものに維持し、改善するためのプロセスアプローチ/PDCAサイクルに則った管理の在り方を示している。

 
* ISO9001:2015規格改訂説明会: 日本規格協会、2015年10月
H29.10.28
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サニーヒルズ コンサルタント事務所