ISO9001/ISO14001
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論評
             実務の視点  ISO マネジメントシステム規格  論評 
このセクションでは、 MS 実務の視点主宰者が、ISOマネジメントシステム規格と認証制度を取巻く種々の問題を取上げ、
実務の視点に立っての見方、考え方を披露します。
目  次
ISO9001/14001
2015年版
誤訳・空論・珍説
6 ISO9001/14001
権威主義と
無批判・盲従
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

組織の取組み
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

規格理解・規格解釈
ISOマネジメントシステム
取組みの疑問と正解

認証制度と運営
ISOマネジメントシステム
認証登録の疑問と正解

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マネジメントシステム
と 規格



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ISO9001/14001:2015  間違った解釈 ―   誤訳・空論・珍説
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規格の意図に沿わない条文誤訳、規定解釈、規格解説をとり上げ、実務の視点で正します。
   目 次

04. 「組織の知識」とは「固有技術」のことか           
03. 環境が組織に与える影響も管理しなければならないのか?           
02. 審査での トップマネジメント による マネジメントシステム の有効性の説明責任
01. ISO9001、14001解説書は、日本では“工学書”                         
ISO9001
ISO14001
ISO9001/14001
ISO9001/14001

(H29.10.28)
(H29.9.29)
(H28.12.13)
(H28.10.15)

 
 04. 「組織の知識」とは「固有技術」のことか  
  ISO9001国内委員長 山田 秀氏は、2015年版改訂説明会で、7.1.6項の「組織の知識」を製品サービスやその提供にかかわる「固有技術」のことであると説明している。これは、英文の“organizational knowledge”を「組織の知識」と誤訳したことからも明らかなように、規格の意図を誤解していることに起因する空虚な規定解釈である。
 
  JIS和訳「組織の知識」は正しくは「組織知」であり、要員が業務実行で蓄積した「暗黙知」を「形式知」化し、必要な外部知識情報も織り込んで、組織内で共有して、業務に使用している組織としての知識のことである。対局にある概念は「個人知」である。「固有技術」とは「管理技術」に対応する用語であり、7.1.6項の「組織知」とは「業務の実行、及び、製品サービスの適合性の達成のために必要な知識」であるから、この目的には当然ながら固有技術も管理技術も必要である。
 
  7.6.1項の規定は、管理しなければならない知識が「固有技術」に関わる知識か「管理技術」に関わる知識かという問題ではなく、特定の個人の頭にしかない知識つまり「個人知」か、多数の関係要員の共通認識となっている知識つまり「組織知」かということである。
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 03. 環境が組織に与える影響も管理しなければならないのか?
  2015年版の4.1項では「こうした課題には、①組織から影響を受ける又は②組織に影響を与える可能性がある環境状態を含めなければならない」との規定があり、04年版の①に加えて②も管理しなければならなくなったと説明されている。簡単には、気候変化で発生する大洪水による組織の被害防止も環境経営活動に含めなければならなくなったということである。
 
  これは、規定条文が「①又は②」で、英文では「或いは」「言い換えると」の意味なのに、「①及び②」と読まれていることに起因する誤った解釈である。組織が管理すべき環境影響ないし環境状態を、①は原因者の責任、②は組織の存続発展を図る環境経営活動の在り方の観点から述べているだけで、同じことを指している。
 
  ①と②の2種類の環境影響の管理が必要という解釈は、日本語の「又は」と「及び」を混同した結果である。そもそもISO14001は地球環境悪化防止に組織が責任を果すための環境経営活動の在り方を規定する規格であり、洪水や渇水などの自然災害からどのように組織を守るかということについての規定がある訳はない。
このページの先頭へ <sub65-01-03>

02. 審査でのトップマネジメントによるマネジメントシステムの有効性の説明責任
(1) トップマネジメントの説明責任
   JABは、認証機関に示した2015年版ISO9001の認証審査の指針*1の中で、トップマネジメントがQMSの有効性の説明責任(accountability)を負うという規定(5.1.1 a)項)を審査で注目すべき変化点のひとつに挙げ、審査ではQMSが有効かどうかをトップマネジメントが説明できるかどうかを確認しなければならないとしている。
 
  この日本語の「説明責任」とは、不祥事を疑われる政治家に対してその潔白性を事実の証拠を以て国民に説明するよう求める場合にメディアが近年好んで用いる言葉である。英語“accountability”の訳語としてのこのような「説明責任」の解釈が適切ではなく、与えられた権限を行使して役割を果すことが主意であり、失敗したり不正を働いた場合にはその責任の所在を明らかにすることであるとする議論も少なくない。しかしいずれにせよ、日本語の「説明責任」は、責任を果せなかった人が、その責任を付与した人々に問題を正直に説明するということを意味する。
 
  JIS規格書巻末の解説でも、規定の「説明責任」には「トップマネジメントがQMSの有効性に対して責任を負っていることの説明という意味と、有効性がこのようなった理由を納得されるように説明するという意味の両方が含まれる」と言っているから、結局は、QMSが有効でない場合にその理由を説明しなければならないということだ。
 
  従ってJAB指針による審査では、トップマネジメントは審査員に「QMSの意図した結果とは何ですか」「それは達成していますか」と聞かれ、達成していないなら、なぜ達成しなかったのかを審査員に釈明しなければならないことになる。
 
(2) 実務におけるQMSの有効性
  翻ってISO9001は、顧客のニーズと期待及び法規制を満たす製品サービスを一貫して提供し、顧客満足の向上を目指す組織に対する指針である。QMSが有効かどうかとは、「意図した結果を達成している」かどうかということであり、狙いの顧客満足の状態が実現しているかどうかということである。実務では、組織はその存続発展のためには一定の収益をあげることが必要であり、そのためには一定の売上をあげる必要があり、その売上を確保するためにはそれ相当に顧客には組織と製品サービスの品質に対する好感、満足感、安心感を抱いてもらわなければならない。「QMSの意図した結果」とはこのような狙いの顧客満足の状態のことであり、不良品を出さないことを基本に顧客のニーズと期待を斟酌し、こうなれば顧客にこれだけは買ってもらえる、取引をしてもらえるとして、品質方針に明らかにした狙いの顧客満足の状態のことである。
 
  この狙いの顧客満足の状態が実現していないということは、必要な売上が得られず、必要な収益があがっていないことを意味するから、実務では「意図した結果を達成していない」状態はあってはならないことである。審査員にQMSがなぜ有効でなかったのかをうまく説明して、「説明責任」を果たしたと認められても、組織の事業が成り行かなくなったのだから、トップマネジメントは株主から糾弾され、辞任に追い込まれることにもなる。
 
(3) 「説明責任」は誤訳
  規格の英語“accountability”は、“responsibility”が責任を引き受けるという意味の「責任」であるのに対して、責任を果すという意味の「責任」であり、“taking accountability”は「責任を全うする」という意味である。すなわち、規定の意図は、トップマネジメントはQMSの有効性に対する責任を全うしなければならないということであり、「説明責任」を求められるような状態をつくってはならないということである。
 
  もっとも、審査員の規格解釈では「意図した結果を達成している」かどうかは、現場の品質改善活動の目標としての品質目標が達成されたかどうかということとしての審査員とトップマネジメントの問答となると思われる。トップマネジメントは認証ゲームの一場面として楽しめばよい。
 
*1:JAB認定センター、ISO/FDIS9001認証審査における考え方、2015.7.14, 23

このページの先頭へ H28.12.13

01. ISO9001、14001解説書は、日本では“工学書”     
(1) 著者の認識
 世にある数多くのISO9001、14001解説書について、英米の著者は“経営書”と認識しているが、日本の大多数の著者は“工学書”と認識しているようである。これは、英米人が規格用語「management」を、その言葉(英語)の意味の通り、「経営管理」と理解しているのに、日本人はJISが “マネジメント”と和訳し、その定義の文字面解釈により、現場中心の品質、環境改善活動を頭に描いた「方針、目標を定め、その目標を達成する活動」と誤解しているという実態の反映であろう。
 
(2) アマゾンで販売の和書の分類
  例えば、ネット書店の大手であるアマゾンでは、出品者に書籍の「ジャンル分類」を義務づけており、27の大分類とそれぞれの中、小分類を定めている。日本で最も著名なISO9001,14001解説書は、規格の改訂版ごとに、当該の改訂版作成に係わった国内委員会の委員長等が執筆し、規格協会が発行する、標題「規格要求事項の解説」と「新旧規格の対照と解説」という書籍である。これら解説書は、著者が規格の真意を最も正しく伝えていると主張し、一般に最も権威があると見做されているが、アマゾンではいずれも大分類「科学・テクノロジー」-中分類「工学」-小分類「工業規格」に分類されている。すなわち、著者やその代表する国内委員会やその解釈に依存するJABは、両マネジメントシステム規格の解説書を品質、環境改善の手法に関する“工学書”と認識している。
  
  アマゾンでは、これらを含めてそれぞれ凡そ110件と55件のISO9001と14001の解説書が販売されているが、その85%と68%の著者はその著作を“工学書”としての「工学規格」に分類している。また、12%と28%の著者は、同じ中分類「工学」の中の小分類「経営工学」と大分類「ビジネス・経済」-中分類「ビジネス実用」に分類し、工学的管理手法に関する実用工学書と認識している。わずか3%と4%の著者だけが、大分類「ビジネス・経済」-中分類「マネジメント・人材管理」及び「経営戦略」に分類して、“経営書”と認識している。すなわち、アマゾンに出品の解説書の日本人著者の大多数が、上記の権威者に倣ってか、或いは、「工学規格」という見掛け上恰好の中分類が存在するためか、“工学書”と認識し、また、“実用工学書”と認識する著者もいるというのが実態である。
 
(3) アマゾンで販売の洋書の分類
  
しかし、同じアマゾンでは、「洋書」としてのISO9001とISO14001の解説書が、それぞれ、凡そ360件と65件が販売されている。「洋書」の「ジャンル分類」は上記の「和書」とは異なるが、ISO9001とISO14001の解説書のそれぞれ70%と95%が、大分類「専門書・技術書」と「ビジネス・投資」の両方にそれぞれ含まれる中分類「経営及びリーダーシップ」に分類されている。ISO9001解説書の残り28%は中分類「品質管理」を中心とする管理手法の“実用工学書”に分類されている。すなわち、英米人の著者の圧倒的多数がその著作の解説書を“経営書”と認識し、“実用工学書”と認識する著者もいるというのが実態であり、“工学書”か“経営書”かでは、日本人の認識と完全に逆である。
  
(4) 日本書籍総目録へ登録書籍の分類
  
さらに、日本書籍出版協会が運営するデータベース日本書籍総目録には日本で発行された書籍が出版社からの登録により記載されているが、各書籍の説明ページには国際標準図書番号(ISBN)と合わせて日本図書コードの図書分類がC-CODEとして表示されている。この総目録には、それぞれ94件、63件のISO9001、14001の解説書が登録されている。その60%と35%が、大分類「工学・工業」-小分類「工学工業総記」に分類されており、また、それぞれ20%と45%が、大分類「社会科学」-中分類「経営」に分類されている。さらに、その他が2%と12%であり、分類コードなしが18%と8%である。すなわち、日本書籍総目録でも、ISO9001解説書の日本人著者の大多数は“工学書”を書いたと認識しており、ISO14001解説書の著者の認識では“経営書”と“工学書”とが拮抗している。。なお、上記の権威者による各規格2種類の解説書は、いずれも「工学工業総記」に分類されている。
  
(5) 規格の"マネジメント"と実務の"経営管理"が別物とする誤解
  JIS和訳語「マネジメント」が規格原文「management」に基づくものである以上、その意味は英語で生活する英米人が受けとる通りの「経営管理」であるはずである。世上、例えば、マネジメントシステムの戦略的な実施とか事業プロセスとの統合などと、両規格とも2015年改訂版ではマネジメントシステムと経営との距離感が変化したと喧伝されているが、規格のJIS和訳「マネジメント」と「経営管理」が別物であるとする誤解を温存した新たな愚論である。
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