ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
03 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
驚愕の「顧客満足」新見解
           
<66-01-03>
(1) 品質改善の規格という誤解
  日本では、ISO9001は日本のTQCの欧米版としての不良をなくするための品質改善の規格であり、JIS和訳「品質マネジメント」とは、そのためのISO規格特有の「方針及び目標を定め、その目標を達成する」という方法論であり、「品質マネジメントシステム」はその実行の仕組みと受けとめられてきた。このため、00年版以降も品質目標は製品品質改善活動の目標とみなされ、品質改善への取組みが認証審査の重要なポイントであり、一方で、顧客満足については、顧客の要求を満たすことだとされ、顧客要求をかろうじて達成した状態でよいとされ、認証審査ではほとんど重視されず、「顧客満足調査をしているか」という程度で済まされている。
 
 
(2) 「顧客満足」に関連する新見解
  このような情勢において、最近入手した資料*1によるとJAB理事長飯塚悦功氏は、講演の中で、組織の存続発展に必要な顧客満足を追求するというISO9001規格の趣旨に合致するが、同氏のこれまでとは全く異なる概念と規格の趣旨に係わる見解が表明された模様である。資料に、例えば次のような記述或いは表現が見られるからである。
 
イ) マネジメント = 経営。 品質マネジメント = 品質経営。
ロ) QMSの目的 = 顧客満足の追求。事業目的としての持続的顧客価値の提供。
ハ) QMSの意図した成果 = 顧客満足の実現、その結果としての売上増、利益向上。
ニ) QMSにおける品質 = 製品を通じて顧客に提供した価値に対する顧客の評価。 顧客満足。
ホ) 製品品質の追求(品質改善) = 製品の競争力の向上。
 
 
(3) 過去の見解
@ マネジメント、品質マネジメント
  例えば、同氏の00年版解説書では、規格の英文の“management”は「マネジメント」と和訳し、「マネジメント」の意味を日本語では「運営管理」「運用管理」であるとし、「人」を指す場合には「経営者、管理者を指す」と言いながら、“management”が「経営」「経営管理」の活動であり、事業組織のどこでも普通に経営者と管理者が行なっている業務として活動であることを明確に言っていない。
 
  代わりに、規格の定義の表現をそのまま用いて、「マネジメント」を「方針及び目標を定め、その目標を達成するための活動」とか、「品質マネジメント」を「品質に関して組織を指揮し、管理するための調整された活動」と説明してきた。このような英文和訳と規格理解からは、同氏の認識においては「品質マネジメント」は同氏らの主導のTQCという一義的には全社的な品質改善活動の西洋版であるとする誤解があり、それが同氏の規格解釈の基礎になっていることが想像される。
 
  このような“management”の誤訳とその意味の誤解の結果として、ISO9001が不良をなくするための品質改善の規格であり、「マネジメントシステム」がISO規格特有の「方針及び目標を定め、その目標を達成する」ための方法論の実行の仕組みと受けとめられてきた。このため、00年版以降も「品質目標」が製品品質の改善活動の目標であり、その確実な達成を図ることが「品質マネジメント」の目的とみなすという認証審査が行なわれてきた。この誤解は15年版にも引きずられており、改善活動のない場合は重大不適合、活動はあっても効果のない場合は不適合と判定すべきとの認証機関研究グループの提言も発表されている*3。
 
A 顧客満足
  「製品の品質保証に加えて顧客満足の向上をも目指そうとしている」と前書きされて00年版に登場した「顧客満足」について飯塚氏は、規格書巻末の解説*において「日本では顧客満足と言えば、相当高いレベルで満足した状態を示すことが多いが、規格では、優・良・可・不可の“可”程度に相当する」と、「持続的顧客価値の提供」というような近代マーケティング論の「顧客満足」とは似ても似つかない解釈を述べている。同氏は近年、ISO9001規格がひとつの“QMSモデル”を規定しているのだという表現を始めたが、その中でも「品質保証」活動を「仕様適合製品提供に係わる信頼感の付与」のための活動として位置づけた上で、00年版QMSモデルが「品質保証」に+αとしての顧客満足と継続的改善という「2枚の薄皮を被せたもの」とし、この「顧客満足とはぎりぎりの“可”でいい」と主張している*5。他の機会でのQMSモデルの「品質保証」+αの説明において「顧客満足」の意味を明確に記されたものを知らない。
 
 
(4) トップリーダーの説明責任
  上記(2)の新見解は、失礼ながら規格の意図の通りであって正しい。しかし、これまでの同氏の見解は(3)の通りであり、わずか5年前の同氏最後のJAB討論会基調講演*2でさえ、例えば、イ) の「マネジメント」の「経営」は「目的達成のための固有技術を使う方法論」、ロ) の「QMSの目的」の「顧客の要求に適合する製品の提供」と述べていたから、上記(1)の「顧客満足」の規格における意味と意義に関する同氏の新見解は、同氏の規格解釈を根本から変えた驚愕の心変わりであり、同氏がリードしてきた日本の規格取組みを根底から揺さぶるものである。
 
  同氏が誤った規格解釈を正すことは悪いことではないが、講演会資料にこれまでの一連の見解や規格解釈をなぜ変えたのかの説明がない。そればかりか、15年版のQMSの性格(目的、適用範囲)は変わっていないという前置きに続けてこの新見解が説明されている。合点のいかないのは、このような新見解が営利目的の一研修機関の有料講演会の少数の参加者にだけ説明されたことである。また、認証審査の在り方を決めるJAB理事長でありながら、15年版改訂の“こころ”として披瀝した新見解を、認証審査にどのように反映させていくのかの説明も資料にはない。
 
  同氏がこれまで規格解釈と認証制度を権威主義的にリードしてきて、なおその頂点に君臨し、その言動が何万もの認証組織や関係者の規格取組みに大きな影響を及ぼす立場にあるとすれば、この大変心には“説明責任”が不可欠である。
 
 
*1: 講演「15年版改訂の“こころ”に応える」、第23回テクノファ年次フォーラム、2016.12.19
*2: 第18回JAB/ISO9001公開討論会、2012.3.13
*3: 第5回JABマネジメントシステム シンポジウム、WG1報告、2017.3.7
*4: JIS9001:2000規格書 巻末解説、解11
*5: 講演「ISOを越える」、テクノファ年次フォーラム 2006.11.9、 
H29.3.9  全面書直し(H29.6.30) 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所