ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
04 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
品質保証か顧客満足か
           
<66-01-04>
(1) ふたつの品質保証概念
  去る3/7の第5回JABマネジメントシステムシンポジウムの予稿集を入手した。これには、JAB会長飯塚悦功氏の「ご挨拶」とされる講演原稿があり、この中で同氏は、「品質保証」の概念がISO9001規格と日本の品質経営の実務では基本的に違いがあるとして、両者の概念を並列に記している。しかし、認証制度の運用責任者たる地位にある同氏が、間違った事実認識を以てISO9001と認証の価値を貶めることにしかならない、このような主張をすることは驚きである。
 
 
(2) 不良品の防止と顧客満足
  草稿によると同氏は、「品質保証」活動について、
@ 日本では「お客様が安心して使っていただけるような製品・サービスを提供するためのすべての活動」を意味するが、A ISO9001規格では「合意した要求事項を満たす製品・サービスを提供できる能力の実証による信頼感の付与」を意味するとして、規格の規定が競争の厳しい日本市場の実務には不十分であることを暗に主張している。
 
  すなわち、@は、表現が稚拙で少々ずれているが、日本のみならず世界的に普遍的な今日のマーケティング論の顧客本位経営の基本を指しているものと考えられる。これは、規格では「顧客満足の向上」の追求が組織の永続的存続発展のために必要という文脈で表現されている。00年版以降の規格では、@のような製品は「顧客のニーズと期待を満たす製品・サービス」と表現され、顧客が製品・サービスを購入し使用して、自分のニーズと期待が満たされた、つまり、想った通りの製品・サービスであると感じた程度が「顧客満足」、正確には「顧客満足度」である*3。この概念の「品質保証」は、「顧客のニーズと期待を満たした製品を一貫して提供する活動」と表される*4。
 
  一方、Aは、顧客との約束と違う製品・サービス、つまり、不良製品・サービスを出さないという意味の古典的な「品質保証」を指している。Aのような製品・サービスは、規格では「不適合製品・サービス」であり、実務では「不良品」である。94年版以前の「品質保証」活動は、このような「不良品」が顧客に引き渡されないことを確実にする活動であり、規格では「規定条件に適合する製品を供給すること」と表現される*2。
 
 
(3) ISO9001の品質保証概念
  ところで規格の「品質保証」活動の概念は、初版以来変わっていない。その証拠に定義は、94年版以前でも00年版以降でも、もちろん15年版でも、詳細文面は異なるが、“品質に関するニーズと期待を満たすであろうという組織の製品・サービスに対する信頼感を顧客に持ってもらう活動”と同じである*1。この「品質に関するニーズと期待」が、94年版以前では1970〜80年代に不良品の少ないことで世界市場を席巻した日本製品に対抗するために「不良品でないこと」を意味したのに対して、世界的に不良品が無くなった時代の00年版では、市場競争における時代の変化に規格を順応させるために、不良品でないことを含み「顧客のニーズと期待を満たすこと」へと、「品質保証」活動の範囲が広くなったのである。
 
 
(4) 主張の背景の推測
  従って、94年版以前の規格であればともかくも、15年版に関連して飯塚氏が、ISO9001規格の「品質保証」活動がAであると主張することは誤りである。規格の「品質保証」の概念がAから@に変わったことは、00年版の「製品の品質保証に加えて顧客満足の向上をも目指そうとしている」との前書きを持ち出すまでもなく、認証関係者の常識である。飯塚氏も当時の国内委員長として多くの場で講演し寄稿し、解説書に名を連ねているから、15年版規格の「品質保証」がAであるとは本当は思っていないはずである。
 
  しかし、Aは、H22(2010)年前後に世界的に沸騰した認証制度が機能していないという社会や認証取得組織の不満に対する言訳として、当時同氏が持ち出してきたISO9001の限界論の中のひとつの主張であり、元をただせば日本にはTQCがあり、ISO9001もその認証制度も本来不要であるという同氏の持論の正当化のために創り出された主張である。実際、この講演原稿でも「かつて日本にMS認証制度はなかった」「それでも“品質立国日本”と称賛された」との標題の中で、この両「品質保証」概念の違いが持ち出されている。どうやら、この同氏の主張は規格解釈の観点で真面目に議論するような話ではなさそうである。それにしても思うままの規格解釈の披露である。
 
 
*1:1SO9000 3.5項(94年版)、3.2.11項(00年版)、3.3.6項(15年版)
*2:ISO9001:1994 4.2.1項
*3:ISO9000 3.1.4項(00年版)
*4:ISO9001:2000 1.1項
*5:ISO9001:2000 0.1項
 
JIS和訳 ⇔ 実務の視点和訳 : 規定条件 ⇔ 規定要求事項; 顧客のニーズと期待 ⇔ 顧客要求事項;
    品質に関するニーズと期待 ⇔品質要求事項

H29.6.30 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所