ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
06        ISO9001/14001 誤った規格解釈と認証制度運用 / 権威主義と無批判・盲従
<66-01-06>
  ISO9001 2015年版でも品質マニュアルは必要
(  その2. 審査指摘のさじ加減 )   
(1) JACBの「品質マニュアル」新解釈
  前報(その1. 規格解釈変更の無責任)のように、認証機関の集まりである日本マネジメントシステム認証機関協議会(JACB)の技術委員会は、そのウェブサイトに「品質マニュアルの行方」と題する論文(H29.3.3付)を発表し、ISO9001の15年版で品質マニュアル作成の規定が無くなったことに関連して、これまでの「品質マニュアル」の内容を「品質方針文書」として文書化することが規格の意図であるとする新解釈を発表した。
 
  同時に、このような規格の意図は08年版でもそうであったとし、その4.2.2項の規定も「品質マニュアル」いう標題の文書の作成を求めていたのではなかったと、規定解釈の常識を覆す判断を示している。そして、08年版で作成されていた「品質マニュアル」は規格の意図と異なって、「審査に通ることだけを考え、顧客の信頼を得るという目的を十分に果さず、実際の業務に役にも立たない、維持管理がしにくい、負担感が多い」ものだったと断じている。
 
(2) 15年版の「品質マニュアル」審査
  論文では、15年版の「品質方針文書」は、1章(適用範囲)のa)項の「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する能力を持つことを実証する」ような内容でなければならないとする認証審査の基準を明らかにしている。しかし、当面の審査では08年版と同種の「品質マニュアル」や「品質方針文書」を見せられても「不適合」とはせず、15年版改訂で規格の意図が「はっきりみえてきたので対応して下さい」として「改善の機会」に留めるようにするよう審査員に求めている。
 
  論文によると、このような審査基準を決めたのは、審査を上記の新解釈の通りの基準に急に変えると「組織に反感と不信をもたれる」かもしれないとの認証機関の心配に基づくものである。すなわち、08年版で本来不適切な「品質マニュアル」が作成されてきたのは規定に対する組織の理解不足が原因であるが、審査員もそれを認めてきたから、15年版審査で急に審査基準を変えると組織の反発に会い兼ねない。そのような事態を避け、認証機関と組織とにwin‐winの関係が築かれることを期待するには、本来は「不適合」だが「改善の機会」という穏便な指摘に留めるのが得策だということである。
 
(3) 認証審査の効用
  認証制度の効用や審査の在り方については何年もの間、JABや認証機関で様々な抽象的な主張がなされているが、「認証審査は組織のために行うのではなく、組織の顧客のために行う」というのが、審査が役に立っていないとか組織に必要のないことを要求されるというような組織の不満に対する認証業界からの一貫した反論である。ISO9001規格の認証審査の場合これは、組織が不良品など顧客の望まない或いはニーズや期待に反する製品サービスは決して提供することはないという状態をつくるために必要な「不適合」指摘を、組織の想いに反しても行っているのだという審査員の信念と責任を表しているとすれが正しい言い分である。
 
  しかし、審査員が本当にこのような信念と責任感で審査を行っているというなら、これまで審査員が規格の意図と異なるとJACBの断じる「品質マニュアル」の記述に関してこまごまとした様々な指摘をしてきたことが、どのように「顧客のため」であったのかに答えなければならない。また、15年版の規定表現で本来の規格の意図の「品質マニュアル」や「品質方針書」がどのようなものであるかが組織にも理解できるようになったはずと、自らの過ちを組織のせいにすることはないはずだ。本来の規格の意図の「品質マニュアル」か「品質方針書」を作る必要があるが、永年それでよいと思っていたものを急に「不適合」と言われてもお困りだろうから、今回は指摘を「改善の機会」にまけておきます、というようなお為ごかしの15年版審査が、本当に「顧客のため」と考えているのかも問いたい。
 
(4) 認証制度の権威主義
  そもそも認証制度の枠組みにおいて審査基準を決めるのは審査員の権限ではなく、とりわけ、認証制度の目的、或いは、「組織の顧客のため」という認証機関の主張に照らしても不当な、このような恣意的でお為ごかしの審査基準に組織が従わせられる所以はない。それにしても、この論文に認証審査と問題対応の内実が赤裸々に述べられているのはJACB内部の話としてはよいが、何の反省も是正処置もなく姑息で無責任な15年版審査基準を打ち出した策略までもがインターネットで堂々披瀝されていることは信じられない。認証審査の枠組みの中で自らを不可侵の存在として組織や社会に対している審査員の腹の中がよく見えるだけでなく、見られても平気というJACBの無神経ぶりには背後に潜む権威主義の頑強さまでを晒しているからである。
H29.9.25 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所