ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
09 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
品質データ 改ざん不祥事は認証機関の不祥事
           
<66-01-09>
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(1) “特採”ルール 悪用の品質データ 改ざん

  昨年11月28日の日経新聞ウエブ版では夏以来の一連の大手製造業の品質不祥事の内の東レ子会社における品質データ改竄問題に関して「東レもはまった“特採”のワナ」として、問題がいわゆる“特採”、通常は“特別採用”という製造業の商習慣の悪用であると報じていた。すなわち、東レハイブリッドコード(株)では契約条件ははずれだが不良品とまでは言えない製品の出荷について顧客から特別採用の許可を得るべきところを、品質データを改竄して合格に見せかけたということである。
  
  
(2) ISO9001規定としての特別採用
 同記事にあるように“特別採用”とは、製品の例えばある試験値が契約で規定された値を外れていても、差がごくわずかであり製造履歴が決められた通りであって試験値の統計的変動の範囲内とみなすことができる場合に顧客の製品の性能に及ぼす悪影響が確率的な見地から許容される範囲内であると顧客が判断し許可した場合は、納期や数量という実務上の必要との勘案の中で製品を出荷するという、統計的品質管理理論に基づく品質保証の正当な論理としての不良品処置の方法である。この処置はISO9001の08年版でも契約条件を満たさない製品がそのまま出荷されることのないようにする処理として、手直し・再処理、降格・廃棄と合わせて特別採用を挙げており、特別作用の条件として8.3項(不適合製品の管理)に3つの要件(手順書の確立、処置の実行、処置の記録)を規定している。
  
 ISO9001は、契約条件に反する不良製品の出荷を防止するための経営管理の在り方を定めているから、認証審査では試験や検査の実施、及び、その結果の不良製品が誤って出荷されないようにする特別採用などの処置に関する規格の要件が満たされているかどうかの評価が重要な観点のひとつである。実際には特別採用が商習慣となっているのが、多品種少量生産、長生産工期、高価格製品を中心に代替品からの振替えや作り直しが工期や費用上で困難な特定の製品分野か、緊急事態など特殊な状況に限られている。従って、認証審査では審査員は、不良品の処置として特別採用が行われる可能性のある組織であるかどうかを判断し、その場合に処置の手順が決められており、実行され、記録のあることを調べなければならない。
  
  
(3) 品質デーダ改ざんは特別採用手順不履行と表裏一体
 上記のように、本件不祥事は特別採用の許可を顧客に求める代わりに、品質データの方を偽って合格としていたものであるから、本件データ改竄はISO9001認証の上では規定された特別採用という処置の不履行という08年版の8.3項に明示の規定に対する不適合の問題である。社会的にはデータを改竄して契約条件はずれの製品を出荷したという品質不祥事ではあるが、当該組織がISO9001認証組織であるから規格に規定される特別採用を履行していない不適合組織に登録証が与えられたという認証制度の不祥事なのである。
  
 上記記事によると、顧客の許可をとる代わりに例えば試験値を契約条件内に改竄したのが2008〜2016年の8年間にも及び、149件のデータ 改竄つまり特別採用処置の不履行があったということである。この組織には特別採用の手順が決められていなかったか、決められた手順が実行されなかったか、或いは、両方かということであり、あるいは、多数の特別採用があり、その内の149件の特別採用だけが手順不履行だったということである。審査で見出すべき不適合は特別採用手順の不履行であるから、ひとつひとつの品質データが改竄されても見つけることはできないというような言訳はこの場合通じない。認証業界では審査が抜き取りである以上はすべての不適合を提出できないと無責任な言訳をするのであるが、この場合は認証機関は8年間にわたる8回の審査で8.3項(不適合製品の管理)の特別採用に関する3つの規定(手順書の確立、処置の実行、処置の記録)をどのように審査したのか、なぜこのような不適合を摘発できなかったかを説明する責任がある。
 
 
(4) これまでの品質不祥事に対する認証機関の対応
 JAB(日本適合性認定協会)の決まりでは品質不祥事の発生に対して認証機関は臨時監査を行ない、原因となった不適合を見出して認証組織に是正処置をとらせることになっており、認証機関は一般にこの経過と下した処分をそれぞれのウェブサイトに公表する。ただし、どのような不適合があり、どのような是正処置をとらせたので品質不詳事の再発はないと考えるのか、そして、その不適合がなぜ審査で検出できなかったのかの説明など一切ない。このような認証機関の問題処理はJABの認めるところであり、一般に不祥事の報道では問題と原因の詳細が明らかにされず、問題が規格の特定の規定に対する不適合に関係しているということが推察できない状況を利用した不祥事に対する認証制度の責任を糊塗する策略である。
 
 
(5) 本件品質デーダ改ざん不祥事に対する認証機関の対応
 しかし、本件データ改竄は、ISO9001 8.3項規定への不適合が認証審査で8年間も見落とされてきたことと表裏一体であり、審査員が普通に審査をしておれば、特別採用不履行を見つけ、データ改竄も見つけられていたはずである。従って、不祥事の原因が認証組織にあるという前提で行う臨時審査では8.3項不適合を認証機関が見落としてきたことに対して、認証組織の責任としてのどのような不適合を見出して認証組織に是正処置を求めるのかが注目されてきた。例えば、審査員の質問に対して手順書を示し、決められた特別採用の記録を捏造して示した、或いは、特別採用の商慣行はないと嘘をついたというなら、これからは嘘を言いませんというような是正処置を要求するのであろう。例えば、単純に審査員が質問しなかった、手順書を見ただけで記録は確認しなかったというなら、組織の当該要員が適切な回答をせず、適切な証拠を提示しなかったという特別採用手順の知識不足に対する是正処置を求めるのだろう。或いは、認証機関の責任を認め、申し開きをし、対応処置をとると発表するのであろうか。
 
 JABの6/1付けのウェブサイトによると当該認証機関はJQA(日本品質保証機構)であり、当該組織である東レハイブリッドコード(株)の品質マネジメントシステムの認証を2/8付けで一時停止処分に付されていることがわかる。JQAのウェブサイトを調べたが、他の組織の不祥事に対する2/2付けの処分を2/5付けで記載されているが、2/8付けの本件処分については今日まで明らかな記載がない。記載がないのはJABが求める不祥事に対する認証機関の対応の不履行であるが、JQAには一時停止処分に処したという事実さえウェブサイトに発表できない理由があるのかもしれない。経営者が規格と認証制度の意義を少しでも理解しているなら、認証機関に対して「お金を払って審査してもらっているのに、どうして現場のデータ 改竄行為を8.3項の特別採用手順不履行として見つけてくれなかったのか」の恨み節を漏らすのも当然の状況であるから、或いは、JQAが本件の一時停止処分に対して強い抵抗を受けているのかもしれない。
 
H30.6.20 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所