ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
10 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
JABが不正審査で認証授与した認証機関を認定停止処分に
(新聞報道)

<66-01-10>
(0) 要約  こちら
 
 
(1) 新聞報道と事実
  7/23付け朝日新聞は、近年の大手メーカー等の相次ぐ品質不祥事と関連するかの表現で、ISOマネジメントシステム認証機関であるLRQA社が不正な審査で企業に認証(登録証)を授与してきたことをJAB(日本適合性認定協会)が把握して、7/12に認証機関としての認定を取り消す処分を行ったと報じた。同記事に対してJABは反応していないが、LRQA社は同日ウェブサイトに事情説明の発表を行ない、JABの処分が記事のように意図的な不正審査がJABに見つかったからではなく、通常の定期的な認定審査における認定条件に対する不適合指摘に基づくものであることを明らかにした。
  
  すなわち、昨年のJISQ9100(航空宇宙及び防衛分野に対する品質マネジメントシステム)の定期の認証審査で指摘された不適合に関連して10/27付けで関係するISO9001、14001と合わせて認定の一時停止処分を受けたのが、実施した是正処置が認められて今年3/20及び4/25に全規格について処分解除となったのであるが、6/8の是正処置実施状況の確認のための審査で不適合が指摘されたことから、7/12にJABの認定が取消された。
    
(2) 認定審査による認定の一時停止、停止処分
  JABのウェブサイトによるとこのように認定停止処分に至ったのは初めてではあるが、認定審査での不適合指摘、認定一時停止処分、是正処置の報告、処分解除というような事例は珍しくない。組織のマネジメントシステムの規格適合性の評価判定のためのほとんどすべての認証審査でみられる、不適合指摘、是正処置、認証継続の判断又は認証一時停止と解除というお決まりの手続きと同じことが、認証機関の認定審査でも行われているのである。因みに認定審査は、認証機関が有効な認証(登録証)を組織に授与する能力があり、そのように認証業務が行われていることを確実にするために、認定機関たるJABがISO 17021-1(マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項)に基づくJAB認定基準への適合正を評価判定するために認定機関が認証機関に対して定期的に行うものである。
    
(3) 認証組織の品質不祥事に対する認証機関の責任
  認証組織が品質不祥事を発生させた場合に、そのような組織に認証(登録証)を授与したかということに関して認証機関の責任は一般論として問われないというのが、国際的常識である。これは、欧米諸国での認証組織に相次ぐ品質不祥事にISO9001認証制度の信頼性低下を危惧したIAFの対応取組みにおいて2007年(H19)に提案された認証機関の制裁を含む対応処置が認証業界の強い抵抗で葬り去られて、認証機関の認定基準の変更でお茶を濁し、以降一切この問題を話題にしなくなったからである。
  
  JABはさらに極端で、例えば品質マネジメントシステムの認証制度の目的は組織が品質不祥事を出すことを防止することではなく、不祥事発生時に組織に速やかに再発防止対策をとらせることだと主張している。従ってJABが認証組織が品質不祥事を発生させたことを認証機関の認証審査の責任として追及することはあり得ない。記事が用いている「不正な審査」とは認証業界の用語では、組織が品質不祥事を発生させるような仕事をしているのに認証機関がちゃらんぽらんな審査でそれを見落としたというのではなく、認証組織の業務実行管理体制がJABの認定基準を満たしていないということを意味するに過ぎない。記事は記者のISOマネジメントシステムの認証制度の枠組に係わる知識不足が原因の誤報の類である。
  
(4) 抜くことの出来ない伝家の宝刀
  ところでLRQA社は本件に関連する一連のウェブサイト発表において、JABによる認定停止及び一時停止でその効力が影響を受ける認証(登録証)が、LRQA社が発行する登録証の中のJABマークが表示されているものだけであり、もうひとつのUKAS(英国適合性認定協会)の認定の下でLRQA社が発行するUKASマークが表示された登録証の効力には変わりはないと繰返し説明している。これはUKAS認定マークの登録証を持つ顧客たる認証組織に心配を掛けないための配慮ではあるが、JABに対してLRQA社がJABによる認定停止は怖くないとLRQA社の意に沿わないJABの認定審査を牽制していることにも見える。
  
  IAFの枠組の下での認定認証制度では、組織が認証機関を自由に選択できるように、認証機関も認定機関を自由に選択できる。ひとつの認証機関が、複数の認定機関の認定を得ることもできる。しかし制度の建前上、認証機関が認定審査不適合で認定停止になったからといって直ぐに他の認定機関から認定を取得するというようなことは御法度であるし、複数の認定を取得している場合は他の認定機関が知らぬ顔でその認定を続けることはできない。
 
  よって認定機関選択の自由があるといっても、認証機関は認定審査でJABに逆らって認定停止処分を喰らうことを恐れる。認定取消処分はJABにとっては、認定審査で意のままに不適合を指摘し意に沿った是正処置を認証機関にとらせるために振りかざす伝家の宝刀である。しかし認定停止処分はJABにとって収入源の顧客或いは認定業務を失うことであるから、この伝家の宝刀は実際には抜けない。
 
(5) 認定停止処分の真相
  7/23のLRQA社の発表では、同社は6/8の審査よりも前にJISQ9100の認証事業からの撤退を申し入れていたのに、JABが予定通り認定審査を行なってその結論として認定停止処分を決めたとのことである。同社は是正処置をJABの意に沿うように行うことより事業撤退をした方が経済的に有利と判断したのであろうが、事業撤退によりJABに伝家の宝刀を引き抜く機会を与えず、自主的な認定辞退の形をとることにより他の認定機関による認定に影響を及ぼさないようにしたかったからでもあろう。一方でJABには、気に入らないLRQA社が撤退するというのだから今更認定停止処分をしてもしかたはないのだが、どうせ収入を失うなら、抜いたことのない伝家の宝刀を抜いてて見せて、実際に抜くものであるということを傘下の認証機関に示す絶好の機会を逃すことはない。
 
  この度の報じられたJABの認定停止処分は、品質不祥事に関連するものではないことはもちろん、認証(登録証)の有効性を確保するための認定機関としての権限行使でもなく、収入源の顧客であり従順な認証機関の確保を目的とする認証業界全体を俯瞰した認定事業上の駆け引きであるとみることができる。
H30.8.15 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所