ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
11 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
一連の品質不祥事に対して必要な認証機関の予防処置
<66-01-11>
(0) 概要  こちら
 
 
(1) 新たな同種の品質不祥事の報道

  出尽くしたかに思えたISO9001認証組織の品質不祥事が8/31にまたもや新聞記事になった。記事によると、電線大手のフジクラが電線や通信ケーブルで検査結果の数値を改竄し、また、顧客と取り決めた品質検査を行っておらず、その対象が73種類の製品にのぼり、不正が1987年から行われてきたとのことであり、一方で社長は品質つまり顧客の製品の安全上には問題ないと会見で述べている。内容詳細は不明だがこれまでの多くの品質不祥事と同様、不良製品の出荷ではなく検査活動に関する不正行為である。
 
 
(2) 通用しないISO9001審査での不適合見落としの言い訳
@ 製品の不適合の審査ではない
  本件品質不祥事が検査活動に関する不正行為であり出荷製品の品質には問題ないのであれば、登録証が製品品質の適合性ではなくシステムという仕組みの適合性を保証するものであるとしてJABや認証機関が用いて認証組織の品質不祥事に対する責任を否定してきた理屈は基本的に通らない。
 
  すなわち、規格では、8.1項(運用の計画及び管理)で顧客との取り決めを検査手順と合否判定基準に反映させなければならないと規定され、8.6項(製品サービスのリリース)で決められた検査が問題なく完了しなければ製品を出荷してはならないと規定されており、8.7項(不適合なアウトプットの管理)では検査不良品の処置が規定されているが、処置には検査データの改竄は含まれていない。認証審査では審査員は、顧客との取決めを満たす方法と基準で検査がきちんと行われているか、検査記録がきちっととられて、顧客向け検査帳票に反映されているかどうかを審査する。従って、本件不祥事は認証審査における規格不適合の見落としの結果である。
 
A 抜取り方式の審査
  また、抜取審査のため100%の不適合を検出できないというのもよく用いられる言い訳である。しかし、認証機関が不正開始の1987年以来30年間、60回も審査を行ってきていながら上記の不適合を一度も摘出できなかったという、は統計的確率論に立脚する抜取検査であり得るとして許容される程度の不適合の見落としの域を越えている。品質不祥事の原因の規格不適合に迫ることができなかったのは、審査対象の抜取りが不適切であったからであり、恐らくは30年間漫然と同じような審査が繰り返えされてきたのであろう。もっとも、審査員もこの著名な大手企業がこのような不正行為をするとは思わないだろうから、他の不適合の疑われる問題の方に審査に力を入れてきたと善意に考えられるかもしれない。
   
B 警官ではない
  組織が隠すのだから見つけようがないという言訳もよく用いられる。フジクラが審査で審査員に見つからないように文書や記録をすり替えたり、いつもと違う方法で検査をするというような工作を行ったことも考えられる。しかし、この言い訳は、今回と同種の品 質不祥事が昨年秋以降相次いで発生している状況では通じない。

  そもそも規格の内部監査でも「監査対象のプロセス及び領域の状態と重要性を考慮して監査プログラムを策定すること」と直接的表現(08年版8.2.2項)で規定されているように、不適合がありそうな領域を重点的に調査するというのが抜取方式の監査で不適合を確実に摘出するための監査活動の原則である。認証審査員は、マニュアルを読み、過去の監査結果の記録に目を通してどの点を重点的に調査するか決め、それに応じたチェックリストを用意して審査に臨むのである。果して、昨年秋以降のフジクラ審査のためのチェックリストには、隠された或いは見落としてきたかもしれない検査と不良品の処理に関する規格不適合があるなら、これを見落とさないという覚悟でもって審査を計画しチェッククリストを用意したのだろうか。
 
 
(3) 不適合見落としの防止のための予防処置
  認証機関は審査によって不適合がないことを確認して登録証を発行又は更新する。登録証は規格適合性を保証するものであり、認証機関が組織に対価をとって提供する製品である。従って、不適合があるのを見落として発行された登録証は、見落としの理由如何によらず不良製品であり、ISO9001の表現では不適合アウトプット、不適合製品である。
認証機関がISO9001認証取得組織であれば、当該審査員が不適合をなぜ見落としたかの原因を調査し、再発防止の「是正処置」をとらなければならない。また、一連の品質不詳事の報道を受け、それらに関係する規格不適合が認証審査で見落とされていたことを知った認証機関は、これに関連する自身の審査でも起きる可能性のある見落としという認証活動の不適合、を防止するために「予防処置」をとらなければならない。審査員がよく言う“横展開”である。一連の不祥事で他の認証機関により不適合が見落とされた原因を調査し、自らの審査では見落とすことのないよう、例えば監査体制或いは監査手順を変更しなければならない。
 
 
(4) 認証機関認定要件としての予防処置
   認証活動における不適合に対して「是正処置」「予防処置」の実行が必要なことは、認証機関として満たすべき要件を定めた認証機関認定要件規格((ISO/IEC17021-1*2)にも規定されている。JABなど認定機関に認定された認証機関は、一連の不祥事に鑑みて自らも同種の組織の規格不適合を見落とすという可能性を検討し、あるならその見落としという審査活動の潜在的不適合の原因を除去する予防処置をとらなければならない。
 
   本件当該の認証機関が上記の認定要件を満たすとして認定された認証機関であれば、昨秋以降の多くの品質不祥事がISO9001規格不適合に関連するとの認識に立って「予防処置」を行なうという当たり前のことをしておれば、本件品質不祥事を社会が期待するようにISO9001規格不適合として摘発でき、ISO9001認証制度の評価を大いに高めることができたはずである。
認証審査で審査員から「是正処置は行われているが予防処置が行われていない」とか「予防処置の方が大切」というようなお説教を審査員から聞かされた組織は少なくない。本件品質不祥事の報道が、認証機関が予防処置をとらなかったことを意味するなら、認証機関や審査員が「予防処置」の意義を知らず、自らは実行しないまま、審査で「予防処置は大切」とお題目を唱えているだけということになる。
 
 
*1先報: 09. 品質データ 改ざん不祥事は認証制度の不祥事    http://www.ms-jitsumu.com/sub66.html#09
*2規格: ISO ISO/IEC17021-1:2015 適合性評価―マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項
 
H29.9.8 
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