ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
19 ISO 認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従  (誤った認証制度運用)
ISO9001規格は役立つが、認証制度は役立たない
<66-01-19>
< 要旨 >
  2/14付け中日新聞は、昨秋のKYB社の免震・制振装置の検査データ改竄不祥事の社内調査の結論を、データ改竄は製造と技術部門で協議した結果であり、工場責任者らも認識しており、組織的だったが、役員は認識していなかったと報じている。責任は現場にあり、経営者には責任がないということだ。しかし、ISO9001に照らすと、だから不祥事が起きて顧客の信頼を失って会社の存続が揺らぐ事態を招いたということになる。
 
  簡単に言ってISO9001は組織が不良品を出さないことにより顧客の信頼を得て事業を発展させるための指針である。ISO9001の規定の根幹は、製品の品質保証は現場の品質管理部門に任せるのではなく、収益や投資の管理と同じように経営の課題として経営者が主導し、かつ、全力で取組まなければならないということである。規格では、特有の杓子定規の表現に加えてJIS誤訳があって難解な文章となっているが、このことを4.1, 5.1項に明確にしている。経営者が品質保証を現場任せにせず、ISO9001に従ってその職責を果しておれば、現場をこんな不正に走らせることはなかった。
 
  しかし、認証制度ではISO9001は現場主体の品質改善活動の指針であるから、審査では品質保証とは直接関係のないと思われる品質方針やマネジメントレビューなど定められたトップマネジメントの業務に関しては規定への適合性を外見で評価するだけであり、規格の意図の経営者の品質保証に関する経営責任という観点の審査はない。認証制度が現場の品質不正防止に役立つ規格の規定を活かす適合性評価をしていないことが、一連の品質不祥事に関連しての認証制度は役に立たないという社会の不満の根本原因である。
   
< 本文 >
1. KYB社の免震・制振装置の検査データ改竄不祥事の原因

  昨秋露顕した油圧機器大手のKYB社の免震・制振装置の検査データ改竄不祥事の同社社内調査結果が2/14付け中日新聞で報じられている。これによると、検査担当者による検査データの改竄は、工場責任者らも認識しており、すべてを再組立て再調整すると納期に間に合わないとして製造と技術部門で協議した結果であるので、「不正は組織的に行なわれたと評価せざるを得ない」が、KYB役員は改竄を認識していなかったというのが結論のようだ。すなわち、不祥事は現場の組織的不正活動であり、経営者はこれを知らず、不正を認めた訳ではないので責任はないということである。しかし、ISO9001では、だから不祥事が起きて顧客の信頼を失って会社の存続が揺らぐ事態を招いたということになる。
 
 
2. ISO9001における経営者の品質保証責任
  簡単に言ってISO9001は組織が不良品を出さない、品質不正や不祥事はもっての外で顧客の信頼を得て事業を発展させるための指針である。ISO9001の規定の根幹は、製品の品質保証は現場の品質管理部門に任せるのではなく、収益や投資の管理と同じように経営の課題として経営者が主導して取り組まなければならないということである。このことは、分かりやすい08年版の表現を引用すると次の3つの規定で表現されており、その趣旨は、「組織が不良品を出さず、品質不正や不祥事はもっての外の確実な品質保証を通じて顧客の信頼(顧客満足の状態)を強化し、以て組織の発展を目指すなら、トップマネジメントは規格の定める要件に従って効果的な品質保証のための手順を定め必要な資源を投入して業務実行の体制を整え、それに基づいて組織内の品質保証関連業務が行なわれるよう職を賭す覚悟の全力で主導的に取組まなければならないということである。
 
* 1.1項で 規格は、「顧客のニーズと期待を満たすことを保証するための組みを含む、品質経営体制の業務を効果的に実行することによって顧客満足の向上を目指す組織の品質経営体制に対する要件」を定めており、
* 4.1項では、 品質不良を出さないことで顧客に信頼される状態(顧客満足の状態)を実現するには、「組織は、この規格の定める要件に従って、品質経営体制を確立し、文書化し、履行し、かつ、維持し、その有効性を継続的に改善しなければならない」と規定し、
* 5.1項では、 トップマネジメントは4.1項の規定ことに対して「コミットメントしなければならない」、つまり、品質保証の管理に職を賭す覚悟の全力で取り組まなければならないと規定している。
 
  不良品を出して顧客の不興を買うことのないよう、品質保証関連業務の実行を指揮、管理しなければならず、そのことにトップマネジメントは職を賭す覚悟の全力で取組まなければならない。トップマネジメントの顧客満足追及においては品質不正や不祥事で顧客の信頼を裏切るなどということはもっての外であろうから、それが露顕して会社の存続が危ぶまれる状況となった時に、会社の存続、発展の責任を負うトップマネジメントが自分は現場の不正を知らなかったと涼しい顔のできるはずはないのである。
 
 
3. ISO9001における不祥事の防止の責任
  従って、ISO9001の意図とトップマネジメントの責任の規定に照らすと、トップマネジメントは何かしら問題が表に出た場合にそれが自分の意思ではないと言うのなら、現場が勝手にやった、そんなことは報告を受けていない、自分は知らなかったと言い訳することは許されない。
 
  事業発展のために品質保証への取組み通じて自らが必要と考える顧客満足の状態を実現させる責任はトップマネジメントにあり、トップマネジメントはその実現のために、不良品を出して顧客の不興を買うことのないよう、品質保証関連業務の実行を指揮、管理しなければならず、そのことにトップマネジメントは職を賭す覚悟の全力で取組まなければならない。トップマネジメントの顧客満足追及においては品質不正や不祥事で顧客の信頼を裏切るなどということはもっての外であろうから、それが露顕して会社の存続が危ぶまれる状況となった時に、会社の存続、発展の責任を負うトップマネジメントが自分は現場の不正を知らなかったと涼しい顔のできるはずはないのである。
 
  KYB社の経営者がISO9001に従って品質保証に主導的に取り組み、現場がこんな不正に走らないよう管理していれば、少なくとも、こんな不正に18年間も気付かなかったというような現場への無関心がなければ、今日のような苦境に陥ることはなかった。ISO9001は組織の健全な発展に役立つ経営活動の指針であると言える。
 
   
4. 認証制度における不祥事の防止の責任
しかし、日本の認証制度では、ISO9001は現場主体の品質改善活動の指針であり、JABは認証審査は不祥事防止のためでなく、不祥事発生時に速やかに再発防止策をとらせることが目的だとしている。従って、審査では品質保証とは直接関係のないと思われる品質方針やマネジメントレビューなど定められたトップマネジメントの業務に関しては規定への適合性を外見で評価するだけであり、規格の意図の経営者の品質保証に関する経営責任という観点の審査はない。認証制度が顧客不満足の典型たる現場の品質不正の防止に役立つ規格の規定を活かす適合性評価をしていないことが、一連の品質不祥事に関連しての認証制度は役に立たないという社会の不満の根本原因である。
 
   
<実務の視点和訳> ⇔ <JIS和訳>
   要件 ⇔ 要求事項;     品質経営体制 ⇔ 品質マネジメントシステム;     履行 ⇔ 実施;
 
<1.1b)項 (ISO9001:2008) :    実務の視点和訳 ⇔ JIS和訳>      
* この国際規格は、それ自体を継続的に改善する、及び、顧客のニーズと期待及び適用法規制を満たすことを保証するための組みを含む、品質経営体制の業務を効果的に実行することによって顧客満足の向上を目指す場合の品質経営体制に対する要件を規定している。
 
* この規格は、品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合の組織に対して、品質マネジメントシステムに関する要求事項について規定する。
H31.2.27 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所