ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
12 韓国の福島産水産物の禁輸措置を認めるWTO決定
と ISO9001の顧客満足
<91-01-12>
< 要旨 >
  韓国による東北地方産水産物の輸入禁止措置を不当とする日本の訴えを退けた4/11のWTOの判断に納得がいかない安倍首相は、6月のG20ではWTO改革を提案するそうである。しかし、市場経済、自由貿易では、売手が放射能測定しているから安全だと言っても、買手が心配だから買わないと言えばそれまでである。
 
  禁輸措置が消費者に支持されている状況なら韓国政府が禁止措置を解除しても、消費者は買わないだろう。1980年頃の米国では政府が強める日本車輸入抑止圧力に呼応して自動車労組が日本車をハンマーで壊して気勢を挙げる場面がテレビで放映される一方で、同様に排斥対象だった鉄鋼材料を製造する工場の巨大な駐車場には日本車がずらりと並んでいたという事実がある。
 
  現代マーケティング論では、自分の意向や想いに応えられていると顧客が判断する商品しか売れない。「顧客満足」とは顧客の判断であり、組織が決めるものではない。ISO9001では、組織を永続的に発展させるには「顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たした製品サービスを一貫して提供すること」が必要とし(1.a)項)、「トップマネジメントがこのことに職を賭す覚悟で統率力を発揮しなければならない」と規定している(5.1.2項)。
 
  慰安婦、徴用工問題への意趣返しとの見方も、現代マーケティング論に照らすとあり得ることであり、動機不純と非難するに当たらない。今日では、顧客が商品を買うかどうか判断する時は、商品の機能や品質だけでなく、苦情対応など付随するサービス、更には経営の安定性をはじめ、例えば汚水排出、火災、粉飾決算、過労死など商品と無関係な出来事に対しても顧客が自分自身の基準を設けて評価するというのが常識だからである。輸出したければ韓国政府に圧力を掛けるのではなく、政治問題も含み韓国の消費者の意向や想いに働きかけなければならない。
   
 
< 本文 >

  韓韓国による東北地方産水産物の輸入禁止措置を不当とする日本の訴えを退けた4/11のWTO上級委員会の判断に納得がいかない安倍首相であるが、4/29の報道ではWTO決定への異議申立について米加の首脳が支持してくれたことに感謝の意を表し、6月のG20ではWTOの紛争処理のあり方の改革を提議するそうである。
 
  しかし、そもそも首相の信奉する市場経済、自由貿易では、売手が個々の商品の放射能を測定しているから安全だと言っても、買手が心配だから買わないと言えばそれまでである。テレビのインタビューへの韓国消費者の反応を見る限り、韓国政府の輸入禁止処置は韓国消費者の不安を反映したもののようなので、韓国政府が圧力に負けて禁止措置を解除しても、消費者が買わないのは確実である。つまり、輸出できるようになっても売れない。政府の意向や施策にかかわらず消費者の必要や想いに合致すると考えられる商品は売れるし、合致しないと考えられるなら売れないというのが現実なのである。
 
  これには1980年頃の米国政府が強める日本車輸入抑止圧力に呼応した全米自動車労組が日本車をハンマーで壊して気勢を挙げる場面がテレビで放映される一方で、同様に排斥対象だった鉄鋼製品を製造する工場の巨大な駐車場には、日本車がずらりと並んでいたという話が思い出される。日本車の輸入増加で米国経済の主力の自動車産業が不振に喘ぎ、貿易収支の赤字の拡大という国民的問題に加えて、鉄鋼労働者には自身の製品の売上げ減少に繋がるという問題を認識しながらも、消費者としては自動車購入にあたっては、小さくて窮屈だが、安くて欠陥がなく燃費が良くて故障しないという自身の評価を優先させたということである。
 
  ドラッカー氏を祖とする現代マーケティング論では、自分の意向や想いに応えられていると顧客が判断する商品しか売れないということであり、商品がどの程度自分の意向や想いを満たしているかと顧客が評価した結果が「顧客満足度」である。 ISO9001では、これはJIS和訳で「顧客満足」であり、「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」と定義されている*1。 顧客が次も同じ商品、或いは、同じ企業の商品を買おうと思うような商品が「高い顧客満足の商品」である。そして、この「顧客満足の程度」は顧客の判断であり、組織が決めることではない。
 
  ISO9001は、どのような組織も有形であれ無形であれ商品を買ってもらうことで成り立っているという立場から、組織が永続的に発展するためには「顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たした製品サービスを一貫して提供すること」(1.a)項)が必要であるとし、そのために「トップマネジメントがこのことに職を賭す覚悟で統率力を発揮しなければならない」としている(5.1.2項)。
 
  慰安婦、徴用工問題への日本側対応への政治的意趣返しとして韓国の禁輸政策を不純、不当と非難する向きもあるが、消費者の購入判断の基準にこれら問題への日本の対応への評価が入り込むということは、現代マーケティング論の「顧客満足」概念に照らしてあり得ることである。けしからんと思う企業と良い企業だと思う企業の商品が並んでいた場合に、どちらが売れるかという現実に照らせばわかることである。今日では、顧客が商品を買うかどうか判断する時は、商品の機能や品質だけでなく、苦情対応など付随するサービス、更には経営の安定性をはじめ、例えば汚水排出、火災、過労死等の事故、法令違反、粉飾決算など商品と無関係な出来事に対しても顧客が自分自身の基準を設けて評価するというのが現実であるからである。
 
  安倍首相は、禁輸措置を不正と決めつけ、難癖と非難して、大国の意向を背景にして韓国政府に圧力を掛けて、禁輸措置を解かせようとする高圧的な姿勢それ自体が、禁輸措置解除後の韓国消費者の東北地方産水産物という商品の購入判断に対して、慰安婦、徴用工問題への対応と同様というよりむしろより強いマイナス要素となる可能性のあることを知らなければならない。買ってほしいなら消費者の意向や想いに働きかけなければならないというのが市場経済、自由貿易であり、組織がISO9001の規定に則って最初に学ぶべき品質経営の原則である。
  
*1: ISO9000:2015 3.9.2

R1.5.1   修5.2 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所