ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
19 黒川人事迷走に係わる任命責任を取らない安倍首相
−ISO9001規定で考える(2種類の責任)−
時事問題を事例とする規格解釈
<91-01-19>
  5/23付け中日新聞は社説で、余人に代えがたいはずの黒川氏の不祥事露見での辞職をあっさり承認し、検察庁法の改正を見送りにしたことに対して、安倍首相が「最終的には首相として当然責任がある」と述べたことに対して、責任は「ある」だけではなく「取る」ものであると論じ、「これまでも自らの責任を認めつつも具体的な形で取ったことはなかった」とその政治姿勢を非難している。
 
  ISO9001では、その品質経営活動における最高責任者のトップマネジメントには、組織に必要な顧客満足の実現に向けて人々を動機づけ、導き、統率する主導性(JISQ9001では、リーダーシップ)と、自身の職務遂行に職を賭すまでの覚悟と責任感(同、コミットメント)が必要とされ(5.1リーダーシップ及びコミットメント)、それぞれに係わるふたつの「責任」が規定されている(同5.1.1)。
 
   ひとつは主導性を発揮するために担うべき業務の範囲を明確にし、その実行の責任を負うことである。 この「責任」は、ISO9001の原文では“responsibility”であり、これは「責任と権限」「職責」という場合の「責任」であり、中日新聞社説の「責任がある」の「責任」である。もうひとつは、“accountability”であり、経営用語では「責任を理解し引き受けることであり、当事者意識を持ち、必要な成果を達成するために主体的に責任を持って行動すること」を指し、「職責を全うする責任」であり、同社説の「責任を取る」の「責任」である。
 
  つまり、トップマネジメントたるものがその任に就くということは、組織を統括するという職責を引き受けただけではなく、その職責たる組織に必要な成果を必ず出すという、職責を全うする責任をも引き受けたことを意味する。トップマネジメントは職責を全うしなければならず、全うできなければ辞職を含む責任を取らなければならない。これが、ISO9001と中日新聞社説に共通する論理である。
 
  首相が「責任がある」と言うだけで、「責任をとらず」に平然としているのは、野党の追及が的外れであるにも関係している。内閣に任命権があることがわかっているのに「自分に責任がある」と答えられて鬼の首をとったつもりでいる。「任命責任を全うしなかった責任をどのように取るのか」と質すのが筋であろう。
 
  責任を全うしたかどうかを問われずに安穏としているのは、ISO9001登録取得組織の経営者も同じである。JISQ9001では「責任を全うする」の“accountability”は「説明責任」と和訳され、認証審査で組織の経営者が品質経営の現状を審査員に説明することだと解釈されている。昨年までの一連の品質不祥事を引き起こした登録組織の経営者でも、審査員との面談で「責任を全うできなかった責任はどう取りましたか」と聞かれる心配がないからである。
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サニーヒルズ コンサルタント事務所